【5/5:眞田先生講演】競技における外傷後から競技復帰までのリハビリとその後のサポート」
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リアル
眞田崇先生 私自身も、学生時代「スポーツ理学療法をやりたい」と先生たちに相談しても、まず厳しいと否定されました。自分が、尊敬する理学療法士の先生にも相談しましたが「無理だよ」と、正直何をもって無理かということがわかりませんでした。
ただその頃は、まだ学生で「やってみないとわからない」という思いが強く2年生の頃から活動を始めました。理学療法士の養成校に入学する前は、アスレチックトレーナー(以下AT)の勉強を2年していました。
私自身、バスケットをやっていたということもあり「バスケットのトレーナー」と漠然と考えていました。たまたま車椅子バスケの日本選手権を観る機会があり、優勝したチームの千葉ホークスにアポイントをとりました。
最初は、ネットで練習場所と時間を調べて、練習に見学へ行き自分で「勉強したい」と交渉しました。「いいよ!」と快く受け入れてくれる人もいれば「う〜ん」という様々なリアクションがありました。あと、影響されたのは「リアル」という漫画ですね。
最初は練習見学から始まって、飲料水の作り方や雑用業務からのスタートでした。そのチームにはトレーナーとして柔道整復師の方がいましたが「あんた誰?なに?」というような扱いでした。
とにかく最初は選手の身体がどうとかでなく選手・スタッフに名前を覚えてもらうところからでした。トレーナーとして契約して入ったわけではないので、まず練習へ行くことが自分にとって何より重要でした。
学生だったためボランティアでしたが、資格取得後、トレーナーとして役職をいただきました。
そこで数年、クラブチームでの帯同を積み重ねて国体にも帯同して徐々に車椅子バスケの日本代表トレーナーとして声がかかるようになりました。
ロンドンパラリンピック
ATの学校には通っていましたが、資格自体はまだ取得していません。時々「オリンピックに行くにはATを持っていないと帯同できないのか?」と聞かれることがありますが、そんなことはないと思います。
実際、2012年のロンドンパラリンピックに車椅子バスケ日本代表トレーナーとして参加させていただきました。もちろん、それに応じた知識は必要なので全く入らないというわけではありません。栄養のことなど含め、理学療法の養成校ではあまり習わないようなこともあるので、必要に応じて勉強する必要があります。
クラブチームに帯同する中で、最も苦労したのが選手、監督、コーチ、その他のトレーナーの方々の信頼を勝ち取ることでした。今でも不十分なことはあると思いますが…。
練習に参加して1日でチームが受け入れてくれるわけもなく、毎回の練習に参加して、少しずつコミュニケーションをとることが自分にとっては何より重要でした。一番の苦労は、同職者とのコミュニケーションでしたね。
最初は、すでにいた柔道整復師のトレーナーの方から、あまり相手にされない。そんな扱いでしたが「行かなかったら負ける」と自分の中で勝手に思って食らいついていきました。
地道にトレーナーさんとも話をしていく中で、心を開いてくれたのか少しずついろいろ任してくれるようになりました。
障害者スポーツのトレーナーは理学療法士
理学療法士は、定義にもあるように障害を持った方々をもともと対応する職種なので、障害者スポーツのトレーナーとして重宝されている印象があります。選手も、障害を負って一度は、リハビリを経験している方々なので、理学療法士に対する認識が健常者のスポーツより非常に高いです。
なので、選手からのコンディション等の相談は理学療法士が多く受けていると実感しています。
理学療法士としてのチームの役割は、練習や試合前のアップ・ダウン、怪我の予防など、持っている障害に応じた個々のコンディションチェックに関わることが多いです。トレーニングに関して、車椅子バスケでは選手個人でパーソナルをつけてやっておる方が多いです。
パーソナルトレーナーとはたまに連絡のやり取り程度はしますが、クラブチームでは選手に何をやっているのか聞いたりしています。
これが日本代表の選手になると、選手個々がほぼ毎月どのようなスケジュールでどのようなトレーニングをしているのか、また現在のコンディションはどうなのかトレーナーに資料で提出するシステムになっています。
日本代表での理学療法士の役割
実は、クラブチームでの役割と日本代表での理学療法士としての役割は、全く異なります。日本代表の場合、ほとんどが合宿と遠征のため24時間で管理します。
練習中だけでなく、練習以外の1日の水分量から食欲・栄養状態、睡眠時間など全てを管理します。基本、クラブチームでは練習が2時間と決まっているので練習中とその前後の中だけでの仕事になります。
日本代表は多数のクラブチームから選出されるのでコンディションの状態などは、直接本人やチームスタッフと連絡を取り合って状態を把握します。例えば、怪我から復帰して合宿等に入ってくる選手がいた場合、本人のプレーの感覚とコーチングスタッフがみた感覚に差がないかとかコーチに確認し把握します。
練習における理学療法士の関わり方は、チームアップ前に個人をみて(個々に応じたアップ、テーピング等)、全体アップの時に行なうストレッチやエクササイズに入って、その後はコーチに返します。ダウンのときにまた入って、練習後はまた個人をみるといった流れです。
試合では、試合前にテーピングやチームアップの前の個人アップに関わることが主な仕事です。試合中で重要視しているのは、救急時に直に対応しなければならないため、試合全体が見渡せるところにいます。
受傷機転をしっかり自分の目で確認しているということが、その後の対応する際にかなり重要となってきます。タイムアウトやハーフタイムの休憩中は、各個人の水分の減り具合、汗の量をチェックしています。
24時間管理という視点からみると理学療法士が普通やらないような仕事もやらなければなりません。その点、海外のチームはスタッフ数も多く、対応範囲も広いため充実しています。
今日本は世界で8、9位のあたりにいます。今後、さらに上位を目指すためにも、このような細かい管理が重要になり、勝敗を分ける最後の1点2点に響いてくると思います。
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眞田崇先生経歴
理学療法士
【職歴・活動実績】
なかやま整形外科 リハビリテーション科 理学療法士
車椅子バスケットボール男子日本代表 トレーナー
千葉ホークス トレーナー
フィギュア・フォー・クラブ(レスリング)トレーナー
コナミスポーツ&ライフ 非常勤 理学療法士
PT養成校 非常勤講師
【出身校】
専門学校東都リハビリテーション学院 AT科→PT科
【車椅子バスケットボール男子日本代表の主な帯同歴】
2011年 ロンドンパラリンピック アジア・オセアニア予選
2012年 ロンドンパラリンピック
2013年 世界選手権 アジア・オセアニア予選
2014年 世界選手権
アジア大会
その他
【執筆】
月刊トレーニング・ジャーナル2013年6月号[雑誌]