運動により脳内を綺麗にすることで、アルツハイマー型認知症の改善が期待できると、ハーバード大学医学大学院で准教授を務めるSe Hoon Choi博士の研究チームが研究結果を報告した。
アルツハイマー型の認知症は、脳内にタンパク質の一種であるアミロイドβペプチドが蓄積し、神経細胞の伝達を妨げてしまうことで、認知機能や記憶力の低下が発生してしまうとされている。
以前から、運動がアルツハイマー型認知症の改善に有効という説が示されているが、どのような治療的効果を持つのか明確では無かった。そこで今回、アルツハイマーを持ったマウスを運動させるグループと多くの時間を座ったままにさせるグループの2群に分け、症状の経過を追った。その結果、運動させたマウスに大幅な記憶の改善がみられ、海馬における神経発生の改善や脳由来神経栄養因子(BDNF)という神経やシナプスの改善に関わるタンパク質の増加が確認された。
さらに、筑波大学体育系教授の征矢英昭氏らの研究で、軽い運動を短時間行うだけで記憶力が向上することが人間で示されている。
健康な成人36人を対象に、超低強度の運動を10分間行った後と安静に10分間過ごした後に、MRIの中で記憶のテストを実施。その結果、超低強度の運動後の記憶のテストは成績が向上し、MRIでも海馬の活性がみられたという。
この研究は、ハーバード大学の研究をさらに裏づけるものとなるが、症例数が36人である事も考慮すると、今後はビックデータなどを用いて、精密な解析を行った研究も必要とされてくるだろう。
認知機能と運動に関する研究は、肯定的な結果が多いが、効果が無いとした否定的な結果も報告されている。今後も多種多様な研究が続けられると考えられるが、最終的に画一した結果が報告されることに期待したい。