第一回:バイオメカニクスと神経科学を融合【BiNI Approach センター 代表|舟波真一先生】

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【4/7】舟波先生による講演臨床実践!臨床家のための運動理論と治療の実際は以下

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最初はボバースインストラクターを目指した

ー なぜ理学療法士を目指したのですか?

 

舟波先生 最初は医者になりたかったんです。私は新潟県上越市の生まれなのですが、高校生活を送っているうちに、正直私の能力では医者は無理かなと自分でわかってきました。

 

でも医療系に進みたい気持ちは変わらずありました。実家から5〜10分のところに国立のリハビリテーション養成校があって、親や学校の先生にも「これからリハビリという分野は脚光を浴びるんじゃないか」と言われていました。

 

内容は全然知らなかったので、リハビリへの強い信念があったわけではないですが、養成校へ入学しました。

 

ー 卒業されてからの経緯をお聞かせください。

 

舟波先生 まず一番大きな転換期になったのは、3年生の時の実習先が諏訪にある病院で、そこはボバースコンセプトを主にやられていました。インストラクターのかたがいらっしゃったので、ボバースコンセプトをやってみたいという強烈な印象を持ちました。しかし今ひとつ自分に勇気がなく、とりあえず新潟県の県立病院に就職しました。

 

県立病院で4年間仕事をしたのですが、県立病院なので採算性をほぼ考えない、のんびりした雰囲気だったのを覚えています。そんな中で仕事をしていると「このままでいいのかな」という思いにかられました。

 

 実習の時にボバースも体験したので、ボバースコンセプトを盛んにやられている病院で4年間仕事をしている人と自分を比べた時に、とても差が出ているのではないか、という焦燥感がありましたね。

 

このままではダメだと思い、手段はなんでも良いと思いましたが、ボバースはとても素晴らしいものなので「その世界に行くならばインストラクターを目指してやらなければいけない」と意気込んでいました。

 

そしたら生半可なところではなく、ボバースをしっかりとやっている病院に行かなければいけないと思い、諏訪の赤十字病院が募集していて転職したんです。

 

ー ボバースの魅力とは、どのようなところですか?

 

舟波先生 やはりまずは、諸先輩方やインストラクターの方が治療をすると目の前で変化していましたし、今まで既存でやっていた治療よりもはるかに結果を出すところが魅力的でした。

 

臨床家としては結果がすごく大事だと思いまして、その中でボバースは魅力だと感じました。

 

あとは実際の手技はもちろんですが、神経科学など最新のものを取り入れ、アグレッシブに勉強している集団でした。
 
もちろんインストラクターを目指して、アシスタントなどをやらせてもらいながら頑張っていましたね。インストラクターにはなれませんでしたが(笑)
 
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BiNI approach とは

ー 何か研究などはされていたのですか?

 

舟波先生 ボバースをやっていく中で、日本で神経科学の第一人者と言っていい先生で、愛知県にある元京都大学霊長類研究所の所長をされていた(今は御退官されている)久保田競先生が、退官されて日本福祉大学の大学院を立ち上げていました。

 

私の上司がそこの大学院に行かれていて「私もぜひ行きたい」と志願し入学(臨床11年目の時)し、修士を取ったという形ですね。
その後、神経系の専門理学療法士の中で、大学院の単位も認められるため該当しました。

 

 そして1年くらい前に独立をされましたが、そのきっかけはなんだったのですか?

 

舟波先生 色々ありましたが、元々自分でやってみたいという気持ちはありました。病院でやっている中で「私の治療を良い」と言ってくれる患者さんは沢山いました。

 

しかし、その患者さんは最終的に”諏訪赤十字病院”の名の下に来ているだけであって、”舟波真一のリハビリ”を受けに来ているわけではない、たまたま私に当たっただけということを理解するようになりました。

 

そう考えると実際自分は世の中にでたときに、自分の名前だけでやっていけるのか、自分の能力を試したいという思いがありました。あとは、ボバースコンセプトで、インストラクターの道が閉ざされたというか、諏訪日赤でやっていた講習会がなくなってしまったんです。

 

当時インストラクターになるには「講習会を開く」という前提があって、開けない病院にいても、結局インストラクターにはなれなかったんですね。ということは、私がインストラクターになるには他の病院に移るという選択肢しかありませんでした。

 

もちろん子供もいたというのもありますし、自分が抱えていた疑問もあった中で、BiNI approach(統合的運動生成概念に基づく治療:以下BiNI)を一緒に立ち上げた山岸茂則氏と出会ったのをきっかけに、自分で独立しようと思いました。

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ー ではBiNIは、山岸先生と一緒に作られたという感じなんですか?

 

舟波先生 そうです。2人で話し合いながら。立ち上げてから、ちょうど丸3年になりますね。そのベースがなければ独立はしていなかったかもしれませんね。端的に説明しますと、BiNIはコベルニクス的展開という風に考えています。

 

昔は地球が動いているのではなく、天(宇宙)が動いてるとされていましたが、コペルニクスが地上のほうが動いているんだと提唱しました。BiNIはまさに”発想の転換”から生まれたと言っても過言ではないんですね。

 

我々は「運動制御、モーターコントロール」とよく言うと思いますが、「コントロール・制御」という言葉には、「制御する側とされる側」が裏に潜んでいる。では、人から「コントロール・制御される」という言葉を聞いて気持ちいいかということですよね。

 

実は「運動制御」というのは、脳が制御する側、身体が制御される側というような考え方を包含しているんです。

 

我々が動いている時に本当にそうなっているのかな?というところで、勉強している中で、東京大学、多賀 厳太郎先生の「脳と身体の動的デザイン」という本の”自己組織化”という理論に出会いました。
 
基本的には自分たちが思っていなくてもそうなってしまうという、運動の理論があるんです。それは制御という言葉の相反する側(反義語)であって、制御理論と自己組織化理論というのは反義語にある。

 

今まで運動制御や運動学習でリハビリテーション業界はずっと進んでいます。例えばピアノや自転車を意識的に頑張って習得すると最後はオートマティックになるよ、というような”教師あり学習”がベースなんです。ですが、よく考えていると、我々人間は1歳になったら勝手に歩き出すんですね。

 

それは親が、歩行指導して意識させてやってきたことではなくて、赤ちゃんが勝手に起き上がって、立ち歩いて、勝手に運動し始める。人として根源的な運動は教えられていないんです、「教師なし学習」です。

 

もちろんそれには、”環境”と”DNA”という2つの要素が必ずいるのですが、そういったものを持ち合わせていることが根源的な部分においては自己組織化され、運動って成り立ちます。この理論を”グローバルエントレインメント”という引き込み現象の中で言われていることなんです。

 

あまりにも難しすぎて、治療に汎化できなかった部分があって、2002年の本なのですが、私も最初は読み解けませんでした。

 

しかし山岸氏と、バイオメカニクスと神経科学を融合させながらBiNIを作る中で、「我々がやっていることって自己組織化なんじゃないか?」と思いつき、それを具現化するための治療法としてBiNI approachを立ち上げました。

 

概念と方法論は基本的にはきっちり分けて考えないといけない。混同していることが多いですが、概念は哲学なのです。

 

我々は「運動の成り立ちとは何か?(統合的運動生成概念)」という概念があって、それを実際に患者さんに汎化するためにアプローチ方法を作り上げました。

 

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舟波真一先生の経歴

【主な略歴】

平成2年4月 国立療養所犀潟病院附属リハビリテーション学院 入学

平成5年3月 同専門学校 卒業

平成5年4月 新潟県立小出病院 入職

平成9年3月 同病院 退職

平成9年4月 諏訪赤十字病院 入職

平成15年3月 日本福祉大学大学院 博士前期課程(久保田競教室) 入学

平成16年3月 同大学院 博士前期課程 修了

平成25年9月 諏訪赤十字病院 退職

平成25年10月 バイニーアプローチセンター設立,代表就任

現在に至る

【資格等】

理学療法士・専門理学療法士ー神経系領域

人間環境情報修士

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