第八回:理学療法士ライセンスの希少性【半田一登先生】

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前回からの続き

言葉へのチャレンジ

ー 例えば、日本理学療法士協会が、東南アジアでまだ理学療法が発展していない国と、今から良い関係を作って行こうという考えはありますか?

半田会長:モンゴルに以前行きまして、モンゴルの理学療法士の底上げをしてあげたいな、ということは思いました。ただ、協会としてというよりは、個人的にそのような方がいればいいなと考えている状況です。

 

協会としても、そういったことに積極的に乗り出すことができないかを検討しているところです。

 

11万人理学療法士の会員がいて、モンゴル語を喋れる理学療法士はそういないと思います。今から5年計画で、一つの言葉を覚えてチャレンジしてく、というのも面白いのではないかなと思います。

 

みんなと一緒のことをやっても希少価値は生まれないにも関わらず、周りと同じことをやりたがる人は多いですね。

 

ー 半田会長とは動機が違うかも知れませんが、本当の意味での希少価値を求めている人たちの方が活躍していることが多いかもしれないですね。

半田会長:希少価値をもたないと、単純な労働者になってしまいますよ。それはいつの時代でもそうです。昔は理学療法士というライセンスそのものが希少価値でしたが、今はそのライセンスを基礎として、そこにどういう希少価値を加えますか?という時代になってきています。

 

「昔の人は良かったね」と、若い人たちが思う気持ちもわかりますが、それをいっても仕方ないですからね。自分が“今”どうしますか?ということを考えるべきでしょう。

 

自分で希少性を見出せない人へ

ー でも、希少価値を見出せない人たちもいると思いますので、そういう人たちはとりあえず、大学院等へ行っておくべきですよね?

半田会長:それはそうだと思います。世界中を見渡すと、ほとんどが学歴社会ですからね。ある意味では学歴が世界共通の基準なのでしょう。今年の総会で、「4年制大学を目指します」と決意させていただきましたが、それは来年再来年に4年制大学化をしようという話ではありません。

 

全体の方向性として、4年制大学という方向に向かいましょうということです。それとは反対に、なぜ日本のコメディカル教育が専門学校になっているのかと、よくよく考えてみると、社会保障ということがキーポイントになります。

 

日本の国民皆保険制度は、世界のどこをみても達成することができなかった日本独自の素晴らしいシステムで、皆が平等に医療が受けられる制度です。

 

それを達成する一方で、 “誰でも平等に”医療を受けられるようにするためには、保険料を高くすることはできません。保険料を安くする上では、単価の安い医療を作る必要があります。

 

単価の安い医療とは、人件費を抑える必要があります。専門学校教育がはじまった根底にはそのような流れがあるのも事実です。

 

例えば今、コメディカルが全員大卒になって、それに見合った診療報酬を支払うとなれば、日本の国民皆保険はもちません。国民皆保険制度はとてもいい制度なのですが、医療職に負担がかかっている制度なんだということを、我々は国民にアピールする必要があります。

 

賃金を上げれば人材は確保できるのか?

半田会長:今、話題としても介護士不足、そしてその原因を“賃金”が低いために集まらないという話が、よく持ち上がります。そうではなく、医療全体の賃金を考えてみれば、介護だけが飛び抜けて安いわけではなく、全体的に安いのです。

 

そういった事実がある中で、一つの職種だけ賃金をあげるというのは、他に歪みが出るはずです。

 

賃金を上げたところで、全体の人材の数は変わらないわけです。つまり働く場所が変わるということです。今よりも、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の定員がずっと少なかった時代、介護職の学校の定員は埋まっていました

 

これが減少した原因の一つは、理学療法、作業療法、言語聴覚学科の定員が増えたことであり、それに伴って介護福祉学科が定員割れを起こしはじめました。つまり、今まで介護士になっていた人材が、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士になっているのかもしれない。ということです。

 

さらに人口が減っているので、介護士が少ないのはあたりまえの話です。これからは医療職不足という問題が発生すると思います。

 

海外と比べて、日本の医療費は極端に安く、脳卒中の1単位を診ても250点くらいだと思います。一方海外では、1単位が30分だとしても、1000点を超える国が少なくない。それはなぜかといえば、日本と海外では保険制度がまるで違うからなのです。

 

それに対して、理学療法士養成を大学化するだけでは直接的な改革にはならないのです。問題は、保険制度なのですから。物事はいつも立体的にとらえなければなりません。

 

ー そうなりますと、結局は自分たちを守るために“政治力”が必要になると思います。その点に関して、半田会長のお話をお聞かせください。

半田会長:今、私に必要なことは…。

続くー。

 

【目次】

第一回:PT養成校に入学するに至った不純な動機

第二回:聖域なき構造改革

第三回:理学療法士になって良かったとつくづく思う

第四回:世界の中心で理学療法と叫ぶ

第五回:開業権の話をしよう

第六回:PTが介護士になれば介護士不足は解消する?

第七回:競争社会を作る

第八回:理学療法士ライセンスの希少性

第九回:会員を守るために“戦える集団”をつくる

最終回:リハビリテーションの概念改革

 

半田一登会長のプロフィール

1971年、九州リハビリテーション大学校卒業 後、労働福祉事業団(現・独立行政法人労働者健康福祉機構)九州労災病院に入職。

1987年、社団法人日本理学療法士協会理事に就任し、2007 年より同協会会長を務める。  

日本健康会議 実行委員、チーム医療推進協議会 代表、一般財団法人訪問リハビリテーション振興財団 理事長 等 

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第八回:理学療法士ライセンスの希少性【半田一登先生】
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