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高木綾一先生 -ワークシフトを体現する理学療法士(PT)- 第2回

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 セラピストの活躍の場は確実に広がる

インタビュアー細川:

キャリアアップデザインに関しても、職場によってかなり差があります。
先ほどのお話にもあったように、高木先生が勤務されていた病院はマネージメントのレベルが高い水準を保っていたから、他のところでもトップレベルで通用したと思うのですが、その質の担保というのが地域の中でいくつかあればいいのか、全病院での底上げ・ベースアップを図っていったほうがいいのか。
その辺りについては、どのようにお考えですか?

高木先生:

全国の津々浦々の病院がキャリアデザインに関してレベルの高い状況になるのは、困難です。
また、キャリアデザインに関しては看護師も医者も多くの問題を持っております。
しかし、現実的には地域医療や介護がうまくいかない地域も出現している。
そのため国は、地域連携、地域ケア会議を導入、推進しています。
ようするにアライアンス(同盟)を組むということを前提とした地域限定のビジネスモデルを構築しようとしている。
表現を変えると、「地域利益という概念をしっかりと共有し、地域でビジネスモデルを作り、各法人が潤うようにしなさい」という展開になってきています。
そのような状況になっているため、今まで単独型でどことも連携をしてこなかった医療法人や介護事業所も、地域連携をせざるえない状況になってきた。
例えば、高度急性期病院なんかは、18日以内に患者を退院させて地域に返さなければいけない。
そうなれば、回復期リハビリ病棟や在宅支援診療所や訪問看護ステーション、通所介護が退院後の患者を受け入れなければなりません。
こういった地域連携のコーディネートの能力は地域格差がかなりあります。
成功している地域というのは優秀で有力な医師会や医療法人が行っている場合が多いですが、まだ、多くの地域ではコーディネートを行う事業者や人材が不足しています。
今後、生活期の患者が激増することを考えると、コーディネート役としてセラピストに焦点が当てられることでしょう。
リハビリテーションは人が生まれてから死ぬまで関わることができるものですし、生活そのものを支援する包括的なものなので、セラピストが地域連携の中心になることは適切であると考えています。
2015年度介護報酬改定は、地域包括ケアシステム構築に向けたその前哨戦で、”地域ケア会議”が実践的な運用が今後開始されることが決まりました。
ケアマネージャーが一人で悩んでケアプランを組むのではなくて、医者やセラピストと協業してケアプランを立案する流れを国は作ろうとしています。
私はケアマネとう職業にセラピストが入っていかないといけない時代が来たと考えています。
介護保険の理念は自立支援です。
まさに、リハビリテーションマインドを持つセラピストがケアマネを担う意義が高い時代になったと考えています。
当然、介護職出身のケアマネはさらに自己研鑽をして、認定介護福祉士等の資格を取得し自立支援のスキルを高めなければなりません。
そういった点からみて、各職種のプライドをかけた戦いです。
セラピストが急増して将来的にセラピストが余る試算がでています。
しかし、一方でセラピストが活躍できる機会も増えている。
地域連携のコーディネーター役としての仕事、ケアマネージャーとしての仕事、そして、自立支援に資するビジネスなんかはまだまだ、チャンスがあります。
むしろ、こういった時代だからこそ、セラピストは自分の専門性を活用して、新たな分野にチャレンジできるようになったと思います。
しかし、セラピストは医療保険、介護保険の規制ビジネスの中で仕事をしているので、自ら新しいビジネスを創出することや、行政や企業と商談・交渉することが苦手です。
今どき、牛乳屋や新聞配達の仕事をしている人でも市役所に直接行って、「こんなことしていいですか?」って相談している。
シニアをビジネスに取り込むために、安否確認や健康増進のサービスを牛乳屋や新聞配達の人たちが行っている。
リハビリテーションの専門家はもっと、アグレッシブに動くべきなのですが、そんなことをしたら、周りから「何をやっていのか?」と批判される先入観が強すぎる。
現実社会では、ビジネスモデルを作り出し、先行的に動き出した者が、競争優位を保ちます。
だから、セラピストはいち早く今、動き出すべきです。

インタビュアー細川:

なるほど。モデルを示した方が早いというわけですね。

高木先生:

国や制度の責任にせず自分たちも動かないとあかんと思いますね。
高木2

 「ヘッドハンティングされて辞めろ」

インタビュアー細川:

これからはコーディネート的な部分が必要になってくると思いますが、その辺のことは養成校では習わないです。

学術的に確立されておらず、教科書レベルで追いついていないから、カリキュラムに入っていないというのはあると思います。

そういった点に対する教育については、どこでやっていったらいいと思いますか?

高木先生:

結局1つのことを追求するということは、それなりのリスクを背負っていることを啓蒙しないといけない。
特定の分野で働き続けるのであれば、圧倒的な実力の専門スキルを獲得しなければ、勝ち残れない。
地域で働いて行くのであれば、「地域のエキスパートになってこの分野で誰にも負けない」と腹をくくらなければならない。
将来的な働き方のイメージを描いて、人生の戦略を考えて行かねば、業界での勝ち残りは極めて難しいでしょう。
戦略的な転職も今後は必要となってきます。
キャリアデザインに基づく転職です。
一番あかんのは、世間の8割を占める”ネガティブ転職”ですね。
〇〇がしんどいから、転職します、○○病院の方が少し給料がいいので転職しますという、転職の決断軸が自分以外の部分にある転職はキャリアデザインには寄与しない「ネガティブな転職」です。
僕が前の法人で常日頃、部下に言っていたのは、「ヘッドハンティングされて辞めろ」でした。
「目標が決まったのなら辞めてもかまわないが、目標が決まらないのに辞めるなら一言相談しろ」というスタンスでした。だから「やりたいことが見つかりました。」と言われるのが一番嬉しかったですね。
勉強しろとか研究しろとかは最初の3〜4年でいいと思います。
それだけの期間、本当にがんばれば、自分の興味に気がつくと思う。
これが好きなことだったと。
好きなことっていうのは嫌いなことを経験した人間しかわからない。
嫌いなことをして、これが嫌いだとたくさん経験して、嫌いじゃなかったことも肌で感じないと好きなことに気づかない。
だから、嫌いなことしまくればいい。
そこの経験が少なすぎる。

【バックナンバーはこちら】

第1回:これからの働き方を考える上で知っておきたい「3世代ジェネレーション分類」

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  高木綾一先生の経歴

【主な略歴】

1999:帝塚山大学 教養学部 卒業

2002:関西医療学園 理学療法学科 卒業

2008:大阪教育大学大学院 教育学研究科 修了

2002-2007:医療法人寿山会 喜馬病院 リハビリテーション部(2006年よりリハビリテーション部部長)

2008-2014:医療法人寿山会 法人本部(2008年より法人本部長)

2014-現在:株式会社WorkShift代表取締役

2015-現在:関西医療大学 保健医療学部 理学療法学科 助教

【資格等】

理学療法士・認定理学療法士(管理・運営)・3学会合同呼吸療法認定士・修士(学術)

【株式会社Work Shift】

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高木綾一先生 -ワークシフトを体現する理学療法士(PT)- 第2回

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