最終回:経験年数10年以下はまだまだ若手だ【藤縄 光留先生】 

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勤続20年療法士がゴロゴロいて目指す理学療法士像があった

 

ー 藤縄先生が理学療法士になろうと思ったきっかけを教えてください。

 

藤縄先生 もともと、情報工学系の大学を目指して、そっちの方向性で進もうと思っていました。

 

高校生の時に人生経験だと思って、水産業の店員や家庭教師など、いろんなバイトしてみたんですよ。その時に、機械工場で働いたこともあったのですが、音楽も流れていない、本当に機械の音しかしないところでガシャコンガシャコン、8時間くらい機械の一部になり作業するわけですよ。本当辛いなと思いました。

 

いろいろ経験した中で人を相手にする職業で、人に貢献したいんだなと思ったんですよね。ちょうどその頃に、作業療法士の養成校に通っていた姉から、色々話を聞いて理学療法士になろうと思いました。

 

ー 先生が在籍されている神奈川リハビリテーション病院(以下,神奈リハ)は冨田先生が在籍しており、兼ねてより名門リハ病院というイメージがあります。今も、経験年数二十年を超える先生が多く在籍されていて、今の時代、非常に珍しいですよね。

 

藤縄先生 私が神奈リハにいったのは、田舎の新潟から離れたかったからです。小中高、どれもずっと近場にいて世間知らずだし、PTの道を歩むものとして武者修行がしたいと思ったわけです。当時、神奈リハといえば、先端を行っているイメージがあったし、5,6年の間だけ少し修行しようというつもりでした。

 

ただね、正直行って5,6年じゃ浅すぎるんですよね。学びきれない。理学療法は非常に奥が深いんですよ。神奈リハは「総合的なリハビリテーション」というのを特徴にしていて、PT・OT・STだけでなく、心理科、体育科、職能科、リハビリテーション工学科があり、多職種で患者さんの生活をサポートします。担当する疾患も多岐にわたり、その一つだけをマスターするのにだって5年じゃまだまだです。

 

うちは症例検討会というのを研鑽目的で実施しています。その場に患者さんに来ていただいて、担当者が実際の動作を誘導しながら問題点を提示し、評価から治療までを行うようにしています。先輩セラピストもアドバイスに実際に介入してお手本を示さなくてはなりません。その場で結果を示せるには、やっぱり10年くらいはかかると思います。5,6年目では見た感じで治療できていても、患者さんの本髄にはたどり着けていないし、治療効果もベテランセラピストに比べるとまだまだです。

 

ー 先輩セラピストが後輩より良くしてしまったら、患者さんから「担当を変えてくれ」とクレームが入りそうな気もします。

 

藤縄先生 確かに「ベテランの先生に見て欲しい」という要望も多いことは事実です。神奈リハのいいところは、通常の臨床場面の中にも先輩セラピストが後輩と一緒に介入し、フォローアップがしっかりしているところです。新人も、新人なりに全力を見せると患者さんも納得してくれるんですよね。未熟なところはあっても、人間性というか、一生懸命やってくれているというところで信頼関係が生まれるんです。

 

知識の深さだけでなく、広さも大事

 

ー 他の病院だと、5年目以上になるとあまり勉強しなくなるといった現状もあります。スペシャリストが多い神奈リハにいて、スキルアップには何が必要だと思いますか?

 

藤縄先生 まず自分の目標(目指すセラピスト像)をどこに置くかだと思います。神奈リハはベテランの先生たちが皆ものすごいから、当然そのレベルに追いつくまで時間がかかるんですよね。知識と技術の差を見せつけられるわけです。

 

逆に症例検討会のような場面があるので、先輩もうかうかしていられません。新人達の目の前で、患者さんを良くできないといけませんし、10年目程度ではまだまだで、さらにその上がいます。

 

意見を戦わせる場があるといいと思いますが、今は単位の取得が優先となり、そういった機会も取りづらくなっているんでしょうね。そういう意味では、非常に危惧しています。病院単位で研鑽できるシステムもあるといいですね。うちは外部向けの講習会をやることや脊損研究会を通して、いろいろと情報をもらい研鑽を積み重ねています。

 

あとは、今の若手セラピストの興味が臨床的なところではなく学術的なところに入ってしまうというのも問題です。研究は大事なことではあるんですけど、知識ばっかり増えてね。実際、患者さんを触れて治していけるセラピストがどれくらいいるのかなと思います。あくまでも臨床を通して、疑問を解決する研究であって欲しいものです。研究のための研究にならないようにして欲しいですね。目指すべきベテランセラピストが職場にいないのも問題なのかもしれません。

 

臨床家は患者さんを多角的に見ていかなければいけないので、ある一方向から取ったデータを見て、いい臨床が展開できるのかなと疑問に思います。知識・見識が広がることによってアプローチが深くなるとは思うんですけど、広さが狭くならないかなと危惧しています。

 

「臨床力」が、私達が患者さんに直接提供できる最良のサービスです。学術的なものは還元されるのには時間がかかります。直接いいサービスを提供するという、その醍醐味を深めていって欲しいなと思います。

 

ー 最後に藤縄先生にとってのプロフェッショナルとは。

 

藤縄先生 こだわりのある方ですね。知識とか技術があるのはもちろんですが、「なんのために(何が必要なのか)=情熱」がないといけません。それを突き詰めて行ける人がプロフェッショナルだと思います。僕の場合は患者さんの笑顔を求めているんですね。

 

 

【目次】

第一回:臨床力を鍛えるにはこれしかない

第二回:介助技術がセラピストに必要なワケ

第三回:常にバランスボールの上で生活できますか?

最終回:経験年数10年以下はまだまだ若手だ

 

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藤縄 光留先生プロフィール

専門理学療法士(神経系)/ 認定理学療法士(脊髄障害)

1990年 3月 国立療養所犀潟病院附属犀潟リハビリテーション学院 卒業

1990年 4月 神奈川県総合リハビリテーションセンター 入職

脊髄損傷理学療法研究会」会長 2015~ 

北里大学医療衛生学部 非常勤教員 2016~

【講師・講演・学会発表歴】

  • 日本理学療法士協会主催 認定理学療法士(脊髄障害)必須研修会講師
  • 日本理学療法士協会主催 理学療法士講習会「脊髄障害に対する理学療法の実際」

学会・研究会発表、座長、講義多数 

【共著】 

  • 「脊髄損傷理学療法マニュアル第2版」文光堂2014
  • 「訪問理学療法技術ガイド」文光堂2014 
  • 「今日の理学療法指針」医学書院2015
  • 「OT・PTビジュアルテキスト ADL」羊土社2015
  • 「OT・PTビジュアルテキスト リハビリテーション医学」羊土社2018 など
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