作業療法士を目指すきっかけ
インタビュアー:作業療法士になったきっかけを教えてください。
大郷先生:最初のきっかけは、阪神淡路大震災が中学2年生の頃にあって、僕は直接関係なかったんですが、その時にクラスで募金活動をしようと僕が呼びかけをしたんです。元々そういう風に人の役に立ちたいと中学校時代から考えていました。
また、その同時期に中学校で老人ホームに訪問して交流を深めるという企画があって、そこに参加したらとても面白かったんです。
そこで働いている方を見て、こんな仕事につけたらいいなと思ったのがきっかけです。
その後、「大学できちんと福祉を学んだほうがいいよ。」と言われて、大学へ進もうと思ったんですが、高校で遊んでしまっていたので。仕事しながら介護福祉士を目指そうと思っていました。
インタビュアー:介護士の仕事をしていたんですか?
大郷先生:まったく関係ない仕事をしていました。日産車体という車を作る会社で働いていました。それでちょうど知り合いから「リハビリという仕事があるよ。」と勧められ、そこで初めてPTやOTを知りました。インターネットを見ると、PTって物療とか運動療法がメインで、あまりピンと来なかったんです。それでOTをみたら「手工芸などで人の心と体を良くする。」と書いてあって、「こんな楽しい仕事があるのか」と思い学校に入りました。
インタビュアー:最初はどちらに勤められたんですか?
大郷先生:今の職場にずっと勤めています。就職の理由は、一人暮らしがしたかった事、脳血管疾患が見たかった事、回復期リハビリテーションをやっている事、あとはお給料がそこそこというところを探していて、今の病院へ就職し、現在9年目になりますね。
視点を広げれば役割も変わる
インタビュアー:これまで、どのような活動をされているのですか?
大郷先生:最初は知識や技術があまりなかったので、3年目まではたくさん勉強していました。武器になるものを持たないとという思いや、周りの同期に負けたくないという思いで。
治療技術をガンガン上げようと思っていて、認知運動療法やボバース系の勉強会に片っ端から行っていました。
4・5年目辺りから、「促通反復療法」という治療を学び始め、それから脳卒中・片麻痺の治療は強くなりましたね。
その時期からだんだん管理職になってきて、現場から離れるようになってきました。それは仕方ないかなと思ったんですが、「自分は何のためにやっているんだ」という思いも生まれてきました。そこで、退職を考えたんですが、色んな方に相談したら「外の世界を見た方がいいよ。」とアドバイスを受け、他職種の方と交流するようになったんです。
色んな他職種の方と話しているうちに、自分が見ている作業療法・作業療法士の立ち位置が物凄く小さいところでしか判断していないと気づきました。
それで、僕の持っている力というのは、ただ1人の患者さんに対して治療するだけではなくて、スタッフがより働きやすい環境を作っていくアプローチも出来るし、そういうリーダーシップも出来るだろうと思ったら、もっと今の病院で頑張っていこうと思えました。
インタビュアー:管理職は病院ではどのようなことをするんですか?
大郷先生:些細なことが多いですね。単位数を管理したりとか、新人教育のプログラムを立てたり、マネージメントをしたり、仕事を振ったりしています。他部署からの頼まれごとや、他職種連携、当院はセラピストが100人を超えているので個別の相談に対応するだけでも結構な時間をかかりますね。
インタビュアー:100人セラピストがいる中での内訳は?
大郷先生:PTは65名、OT45名、ST15名ですね。平均年齢でいうと26〜27歳くらい、経験年数3〜4年目の療法士が多いですね。毎年1割弱が退職して、新人がどんどん入ってきます。なので療法士の数は増えていきますが、年数は若くなります。
辞めてほしくないけど中堅くらいになると辞める方は多いですよね。何かにチャレンジしたいという思いがあったり、管理職になって現場から離れたくないという人が辞めていってしまいますね。
インタビュアー:これからはリハビリのマネージメントという機会が増えてくると思います。時代に逆行しているように感じますね。
大郷先生:PTは良いも悪いも”職人”なんですよね。
一対一で何かしたいという自分のエゴが強い。ニーズに対して答えるのであれば、組織には役割があるわけなので、その組織の役割の中で自分の自己実現も図りつつ組織の命題に答えていかなければいけないというのが、一般的な働く者だと思います。その辺りが薄いですよね。こちらも伝えきれてはいませんが。
おっしゃる通り、この先マネージメントが出来ていかないといけないし、そういう人材が重宝されるでしょうし。そこらへんの危機感はもっと持って欲しいですけどね。
インタビュアー:どういう風に管理職として、マネージメントされているんですか?
大郷先生:マネージメントは、まずは「大まかなところから逸脱してなければOK」としています。ノルマはあるので、それを達成すればいいよと。あとはマネージメントとしては、”任せる”ということをしています。
だから僕の方が、目標を出して、それに対してどのような手段でやっていくのかは自分達で考えてくれ、と話しています。それに対しモニタリングしながら、どうなの?って話を聞いたりしていますね。
自分が全部やろうとしたら一杯一杯になってしまうし、出来るだけ「引き出してあげる」という関わり方をしています。
インタビュアー:どうやって「引き出して」いるんですか?
大郷先生:面談が一つ大きいですね。年に2回、全員ではないが個別の面談をしています。マネージメントをもっと良くするためにと思ってセミナーを受講したんですが、”モチベーショナル・マネージメント”というものがあって。
仕事している以上、個人としてやりたいことがあって、一方組織としてもやってほしいことがあって、この二つが同時に上手くいかなければいけませんよね。それを合致させている中間の人がマネージメントを取る役割で僕は今その立場にいるんです。
結構、不満だけ聞くと不満なんて一杯出てくるわけですよね。でも、病院側からすると、運営側での要望もあるわけです。
病院の要望を聞きながら個人のやりたいことを達成することはいくらでも出来るはずです。そこらへんで上手くいっていない人については話を聞いて、「したいことは何なの?どうなったらいいの?どんなことが出来そう?」と聞いて、提案をしています。
そこで気が付いてもらえるとモチベーションを高められますよね。
インタビュアー:素晴らしい上司ですね。
大郷先生:みんなにとって上手くいっているかはわかりませんが。
大郷先生が大会実行委員長を務める次世代リハサミット2016
詳細はこちら>>http://1post.jp/2016/08/09/reha_2016_summit/
次回の内容>>母を亡くした娘からのビーフシチュー
大郷和成先生経歴
【経歴】
作業療法士
平成18年 茅ヶ崎リハビリテーション専門学校卒業同年 新戸塚病院就職
平成24年 リハビリテーション科 主任(現在は副技士長)
【主な活動】経歴】
促通反復療法 講師
神奈川県作業療法士会 代議員
作業療法による健康を考える会 代表
日本青年国際交流機構 運営委員
平成25年度内閣府青年国際交流事業 ニュージーランド派遣団