こんにちは、茨城県水戸市で理学療法士をしています、宮嶋佑と申します。人工股関節全置換術(THA)のリスクといえば、「脱臼」ですよね。私も学生の頃に教わってから、メカニズムを理解するまでは、股関節の関節可動域訓練を行う際に、脱臼を恐れて、おっかなびっくりしながら行っていたのをよく覚えています。
しかし、「なぜ脱臼するのか」、そのメカニズムをしっかりと理解していれば、適切に行うことができます。そこで今回は、後方脱臼のメカニズムについて詳しく説明していきたいと思います。
1.人工股関節の構造
まず人工股関節の構造について、おさらいしていきましょう。基本的にソケット、ライナー、ステム、ヘッドの4つの部品で構成されています。
それぞれ、カップは臼蓋、ライナーは人工軟骨、ステムは大腿骨頸部、ヘッドは大腿骨頭の役割を果たしています。また、ステムの大腿骨頸部の部分を「ネック」と呼びます。この部品の名前は、この後の説明に良く出てきますので良く覚えておいてください。
2.脱臼のメカニズム
結論から述べますと、脱臼の原因は人工関節同士または骨同士のインピンジメント(衝突)によって生じます。逆に言えば、インピンジメントしなければ脱臼しないと言っても過言ではありません。以下の動画を見てください。
股関節を屈曲し、内旋していくにつれて、ステムのネックがライナーとインピンジメントするのが分かると思います。するとインピンジした部分が支点となり、ヘッドが浮き上がってきます。股関節後方の関節包や短外旋筋群の緊張が保たれていれば、ヘッドが浮き上がるのに抵抗する力が働きますが、後方アプローチによって緊張が弛んでしまった場合、浮き上がりを抑えることができずに脱臼してしまいます。これが後方脱臼のメカニズムです。
つまり、インピンジメントが生じてヘッドが浮き上がり、それを後方の軟部組織で止めることが出来なかった際に脱臼が生じるのです。よって、ROMを行う際は、“いかにインピンジしないように行なうか”が大切です。それには下図の様に大腿骨頸部を軸に股関節を屈曲する必要があります。
実際にROMを行うと、以下の動画のようになります
これで、脱臼のメカニズムはご理解いただけたでしょうか?整形外科医は①インピンジをしないように②軟部組織の緊張を緩めないようにを考えながら、手術計画を練り、実行していきます。ちなみに私が勤務している病院では、初回のTHA患者さんには基本的に脱臼肢位を設けていません。それほど、術前計画や手術手技が脱臼の予防に大きな影響を与えます。
実際は、術者であるドクターに手術所見を確認し、どの程度で脱臼の危険があるかを確認するのが一番ではありますが、それが困難である場合、大腿骨頸部を軸に屈曲する事を意識してROM訓練を行ってみてください。
THA術後の理学療法3つの課題
前回TKA術後理学療法の講習会は大人気となり、アンケートでも特に要望の多かったTHA術後理学療法についてお話しいただきます。宮嶋先生は、全国的にみても非常に多くのTHAを行っている病院に勤務した経験があり、これまで400例以上のTHA術後患者さんを診てきました。THA術後の理学療法で重要となってくるのが、
(1)脱臼に対する対応
(2)脱臼させずに屈曲可動域を向上させる事
(3)跛行に対する治療
だと思います。今回は、その3つについて徹底的に深く且つわかりやすく解説したいと思います。今回のセミナーに参加して頂くと、
・脱臼についての不安が軽減し、自信を持ってADL指導が出来る
・脱臼におびえずに屈曲可動域を向上させられる
・しっかりとプロトコール通りに退院させることができ、医師や上司に信頼される
・「歩き方が綺麗になった」と患者さんに喜んでもらえる
といったことが出来るとようになります。
*1週間限定のアーカイブ配信あり。
プログラム
(1)THAの脱臼について徹底解説
・THAはそもそも何故脱臼するのか?
・脱臼しやすいTHAの条件(侵入方法、カップの前開き、外開き、骨頭径)
・知らないと危ない骨盤と大腿骨前捻角の影響
・脱臼予防方法について
(2)THA後屈曲可動域の改善方法
・脱臼しない股関節屈曲可動域訓練
・股関節屈曲の3大制限因子
・人工関節特有の曲げ方とは?
(3)THA後に多い跛行への評価・治療
・反り腰歩行への評価・治療
・デュシェンヌ歩行への評価・治療
・疼痛への恐怖が強い人への対応
講師:
Confidence代表
宮嶋 佑(理学療法士)
概要
【日時】 7月30日(日) AM10:00~12:00
【参加費】3,300円
【定員】50名
【参加方法】ZOOM(オンライン会議室)にて行います。お申し込みの方へ、後日専用の視聴ページをご案内致します。