【症例報告】舌痛症のリハビリテーション

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難治性の口腔顔面痛である舌痛症。本来は適応ではないのリハビリテーションを行った経験を、評価アセスメントを中心にまとめました。

Hola!(スペイン語でこんにちは)、週の真ん中水曜日の江原です。本日は口腔顔面領域における難治性疼痛、舌痛症について書きたいと思います。また自験例をモデルにしたリハビリテーションについても書いていきます。

 

舌が痛い

『舌、ベロが痛くなったことはありますか?』このような問いを立てると、大半の方が『ある』と答えると思います。熱いものを食べてしまい熱傷、咀嚼中に舌を嚙んでしまって受ける外傷、口内炎ができてしまったなどほとんどの方が経験していると思います。

 

今回取り上げる舌痛症はちょっと訳が違います。舌痛症は舌に原因不明の痛みが起こる疾患の総称で、外傷などきっかけがないのに、舌が痛くなり、場合によっては歯槽や口腔内全体の痛みになる場合もあります。

 

そしてその痛みは何か月も続き、何をしても治らない。そんな風になったらどう感じますでしょうか?四肢の急性痛であれば、どこかにぶつけてはいないか?とか、使い過ぎてはいいないか?など想像を巡らせなんらかの原因に行きついたりします。

 

それにより不安は少しは解消されるかもしれませんが、舌痛症はそうはいきません。そして皆さんは『この痛みはどの診療科にかかればよいのか?』そのように感じるに違いありません。

 

舌痛症の病態

舌痛症の有病率は全人口において、0.7~15%と報告されています。女性に多く閉経後に多く、この年代の有病率に限定すると大きく上がります。

 

入院施設があるリハビリ科では、現病歴や既往歴などカルテ上で舌痛症の記載を見かける程度の疾患だと思いますが、慢性疼痛領域の臨床では治療対象として比較的多く、1日に数人受診されていることもあります。

 

発症機序は不明であります。しかしながら、女性に多いという疫学的側面に注目すると、閉経後に発症する病歴から女性ホルモンに関係する要因や、その時期のライフイベント等心理社会的要因の関与が考えられています。

 

また痛みの性質や適応する薬や近年の研究において、その痛みのメカニズムの根幹は神経障害性疼痛であると推測され始めています。

 

バーニングマウス症候群の診断基準

舌痛症は海外ではバーニングマウス症候群(BMS:口腔内灼熱症候群)と呼ばれています。診断基準は以下のようになっています。以下の診断基準A~Dをすべて満たす口腔痛

A 連日2時間以上で3か月以上繰り返していること

B 疼痛は以下の2つの性質を有していること

 ・灼熱感
 ・口腔粘膜表層の痛み

C 口腔粘膜は正常所見で、感覚含めて臨床検査は正常であること

D 他のICHD-3(国際頭痛分類第3版)の診断基準で説明できないこと

Aを見てみると、毎日症状が続き3か月以上経過しているという慢性疼痛の時間的な特徴を表しています。

 

B・Cでは口腔内の部位に関する条件を指しています。やはり慢性疼痛の特徴と言える、器質的要因がなく機能的な問題による痛みであることが示唆されます。また灼熱感は神経障害性疼痛の特徴を表していますね。

 

Dでは、他の疾患との鑑別について述べられています。

 

また誘発因子として全身性要因と、局所的要因が挙げられております。

全身的要因

糖尿病、シェーグレン症候群、貧血、中枢神経障害、薬の副作用

局所的要因

口腔内乾燥、口腔内感染症、口腔内粘膜疾患、口腔内パラファンクション(咬合や舌の動きなど)、アレルギー反応、放射線治療後

これらから他の疾患を鑑別するために、血液検査や感染のスクリーニング、唾液流出速度、アレルギーの検査などを行います。上記の誘発因子以外にも睡眠障害、心理社会的要因がトリガーになることも多いので、丁寧に問診することが重要です。

 

特徴的な舌痛症の治療

原因が解明されていないので、治療方法も確率はされていません。抗てんかん薬のクロナゼパムが使用されていることが多いです。

 

そしてその使用方法が特徴的で、薬を飲みこむのではなく口腔内で薬を溶かして薬剤をいきわたらせるように使用します。機能性疾患になりますので、痛みを治すよいうよりは悪化しないようにコントロールして生活することを第1目標にします。

 

この観点では認知行動療法的な指導もポイントになります。

 

症例報告 舌痛症のリハビリテーション

最後に舌痛症患者にリハビリを行った症例報告をお示しします。

・Aさん 50歳代女性 
・診断名:舌痛症・頚肩腕症候群・非特異的腰痛
・画像所見:X-P画像にて頚椎前弯減少を認める
・経過:30歳代後半からストレスが多い生活をしていた。ある時舌が痺れていることに気づいたが軽度なため放置していた。だんだん強くなり下から口腔内全体に広がった。不安に思い他院内科受診したが、心療内科受診を勧められ受診した。うつ状態と診断され抗うつ薬が処方されたが舌の痛みは変わらない。

 

インターネットで検索し当院初診となった。医師からは、頚部痛や腰痛があるためリハビリテーションを行い、同時に舌痛症の経過も見てほしいとのコメントがあった。


理学療法評価
・痛み:舌はNRS:7/10 舌の全体が痛い 何もしなくてもびりびりと痛い 作業をしていると比較的気にならない 
    頚部痛・腰痛は部位は不定でNRS:0~4/10
    疲労しやすく運動は苦手であると
・視診:姿勢は一見良肢位 表情は硬く不安げである
・触診:両側咬筋・頚部周囲筋に圧痛あり
・姿勢:sway back 姿勢軽度 骨盤前傾著明
・ROM:頚部ROM 前屈50° 後屈45° 側屈30°/30° 回旋45°/45° 肩関節屈曲130°/130° 水平屈曲100°/100°
・MMT:上肢・下肢5/5
・立ち上がりテスト(ロコモ):40cm台からの片脚立ち上がり困難
・ADL:自立 PDAS19/60点
・心理社会的要因:PCS35/52点 HADS-D 11/21点 HADS-A 6/21点
・社会的情報:週5勤務 親族の介護も行う

 

統合と解釈

 頚部痛・腰痛は画像所見や症状などから非特異的であり、全般的な運動療法が適応すると考えた。関節可動域や圧痛から筋拘縮の可能性があり痛みへの関与を考える。舌痛症に関しては、咬筋や頚部の機能障害との関与が疑われるが、痛みに着目するよりもロコモテストが陽性であることを患者本人と共有し、全身の機能低下を改善していく方が改善につながるかもしれないと説明し、運動療法に関する同意を得た。

 

プログラム

・有酸素運動:エアロバイク

・全身の運動:ダイアゴナルエクステンション、スクワット

・ストレッチ・マッサージ:頚部・咬筋周囲

・痛みの教育:痛みよりも体を強くすることに主眼を置き仕事や家事に影響しないようにすることを定期的に確認する

 

1年間リハビリテーションを行い、身体機能が改善しているときは舌痛が比較的軽度で、仕事や家事が忙しく運動が行えず機能障害が目立つときには頚部痛・腰痛も強く舌痛も悪化傾向であった。本人に自覚はなく、舌痛にとらわれていたため、なかなか運動療法の取り組みが定着しなかった。

 

因果関係は不明だが、痛みにより全身の機能低下がありADLが低下してい場合、神経障害性疼痛にもリハビリテーション効果が認められる場合がある。目標を患者と共有し、ADLに影響がある舌痛症の場合、生活指導という視点ではわずかではあるが効果があるかもしれない。

 

まとめ

運動器疼痛が併発した舌痛症の患者の症例を中心に、舌痛症患者のリハビリ経過についてまとめました。治療指針としてはリハビリは推奨されていませんが、慢性疼痛・神経障害性疼痛に対するアプローチの一環として、参考になったら幸いです。それでは本日はここまで!Adios!(スペイン語でさようなら)

参考文献

田口敏彦他監修:疼痛医学,今村佳樹他,舌痛症pp159-161,2020

【症例報告】舌痛症のリハビリテーション

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