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個別言語療育のなぜなぜ①「言語課題の割合が少ない」
「せっかく言語療育に通うのだから、沢山の言語課題に触れさせて欲しい」、そう願って来院されるかたにとっては、「意外と言語課題をしないんだな‥」とガッカリされてしまうことがあるようです。
もちろん現場によると思いますが、実際に私の場合も、練習の最初と最後には、パズルやクーゲルバーンやピタゴラスイッチなどの視覚認知系課題を用いることが多いです。特に、療育開始間もない子どもや、幼児期前半の子どもには意図的に視覚認知系課題の量を増やします。
視覚認知系課題は、私たちSTのところに来る「言葉の苦手さがある子ども」にとっても取り組みやすく、また“始まりと終わり“がわかりやすく達成感が得られやすい特徴があります。
つまり、視覚認知系課題を実行することで、注意力が持続しやすく学習意欲を引き出すことが期待されます。注意力や学習意欲の土台が整うと、「子どもが周囲から学べる姿勢」を養うことにつながります。
私たちは、単に机に向かえる力を育てているわけではなく、注意を必要時に目の前の相手に向けたり、意欲を持って人と関わることで、関わる相手から得られる情報を増やすことを狙っています。もちろん、言葉も関わる相手から得られる情報の1つです。
一見、視覚認知系課題を行っているだけに見えても、実は言語の獲得に必要な「周囲から学ぶ姿勢作り」に取り組んでいるのです。
個別言語療育のなぜなぜ②「もっと子どもに話しかけなくていいのか?」
言語療育=沢山言葉かけをされる、そんなイメージがある方もいるようです。実際の現場では、意外と(?)STはベラベラ話しません。
「子育てには言葉のシャワーを」という迷信もありますが、言葉かけで大事なのは、「量」以上に「質」、つまり言葉かけのタイミングとその方法だと思います。
幼い子どもは、1つのことにしか注意を向けることができません。だから、別のことに関心や視線が向いている時に横から大人が沢山話しかけても「耳に入らない」状態で、当然言葉の獲得にも繋がりにくいと考えられます。
だからこそ、話し掛けのタイミングが重要なのです。
具体的には、子供が注目しているものに大人も注目し、そのタイミングで言葉を添えていきます。例えば電車を食い入るようにみている時に「電車速いね〜」「電車が駅に着いたね〜」のような形です。情動を伴った出来事は記憶に残りやすいため、子どもが嬉しい時や楽しい時にその場で声をかけることも大切にしています。
個別言語療育のなぜなぜ③「話しかたが独特」
「は〜い、〇〇しましょ〜!」「おーわりっ」「つぎはっ、〇〇だよ〜!」のように、私たちSTはとてもゆっくり・はっきり、まるで童謡を歌うようなリズムで声かけをすることがあります。なぜこんな話し方をするのでしょうか?
私たちは、以下のポイントに気をつけてお話しをしています
・ゆっくり
・はっきり(明瞭に)
・繰り返し多く
・短い言葉
まず、「ゆっくり」「はっきり」話しかけた方が良い理由は、幼い子どもや発達障害のお子さんは音が中耳→内耳→聴神経→大脳皮質の聴覚領域で分析理解するまでのきくプロセスが未熟な状態であるためです。
ゆっくり・はっきり話しかけることで、聞き取れる言葉の数が増え、また1つ1つの単語がどういう音で成り立っているかが明らかになるため、言葉の習得に役立ちます。
また、子どもが一度に記憶できる文の長さは、1歳で単語、2歳で2語文、3歳で3語文程度と言われます。よって、子どもの力以上の言葉で伝えると、途中で言われたことを忘れてしまいます。よって、大事な言葉は「繰り返す」、そして「(子供がわかるレベルの)短い言葉で話しかける」ことを意識するのです。
言葉の発達の観点では、某放送局の歌のお姉さんのようなお話しは、子どもにとってとてもわかりやすいのです。
最後に
いかがでしたか?時々不思議がられる、また場合によっては不満につながりやすい「言語療育のなぜ?」について解説してみました。一言でいえば「言語療育は遊んでいるわけではない」ですが、根拠を持って説明することの難しさを感じる機会になりました。
しかしながら、コミュニケーションは日常の延長線上にあるため、STが何気なく行っていること“こそ“根拠を持ってお伝えすることで、日常を豊かにするヒントになるのではないかと感じました。
参考文献
発達障害とことばの相談(小学館、中川信子著)
言語聴覚士のために言語発達生涯学習第2版(医歯薬出版株式会社、石田宏代・石坂郁代編)