Hola!(スペイン語でこんにちは)、週の真ん中水曜日の江原です。筋骨格系腰痛や慢性疼痛のリハビリに従事する理学療法士の先生は、圧倒的に腰痛患者を多く担当していると思います。
例えば非特異的腰痛と呼ばれる原因が不明瞭な腰痛は、治療が難しく慢性化しやすい疾患です。
私は腰痛の場合、いつ痛みが増悪するのかを時間帯で分けてインタビューして、腰痛の分類に分類に用いています。姿勢や身体機能評価だけですと、痛みを説明する決定的な証拠となりにくいと感じており、アプローチに結びつきにくいのではないかと考えています。
今回は朝起きる時に痛い腰痛について考えてみたいと思います。患者さんはよく『寝ていて朝起きる時が痛い。寝方が悪いんだろうか?』とおっしゃいます。
ベッドの固さなど、腰痛に関連がある環境要因も検討されていますが、寝方を指導しても寝返りを打ってしまいますので決定的な指導になることは少ないと考えます。
臨床経験のまとめですが、あるクリニカルパターンを導入し起床時の腰痛を視覚化する方法の一例について書いていきたいと思います。
痛みの評価~出現パターンの分析
腰痛下肢痛の場合、痛みの質や強度や部位の他に、出現のタイミングや増悪と寛解について評価することをお勧めします。
そうすると運動器疼痛と考えられる腰痛の場合、
・安静時痛
・運動時痛
に多くの場合分けられます。
また時間帯に分けると
・常時痛い
・起床時や朝に痛み増悪
・夕方から夜にかけて痛み増悪
という傾向があります。
起床時の腰痛に注目し、身体機能評価を行いそれに基づく思考のプロセスを追っていきます。まずはred flagの鑑別から。
起床時の腰痛増強の器質的原因
起床時に寝ていても安静時の腰痛が起こっている場合、器質的な腰痛やRed flagについて一度検討する必要があると思います。腰椎周辺へのメカニカルストレスが限りなく少ないのに痛みがあると考えられるからです。
腰椎レントゲン画像を電子カルテ上に出しながら、検討します。
●発症年齢<20 歳 または>55 歳
●時間や活動性に関係のない腰痛
●胸部痛
●癌,ステロイド治療,HIV*感染の既往
●栄養不良
●体重減少
●広範囲に及ぶ神経症状
●構築性脊柱変形
●発熱
ほとんどの場合当てはまらないことが多いと思いますが、見落としがないようにインタビューを行います(本来は医師の仕事で問題ないことが多いですが、人間の作業は完璧ではないので、理学療法士といえど慎重に行います)。
寝ていて痛かった腰痛が起きて動き出すと痛みが改善していくのであれば、『時間や活動性に関係のない腰痛』には当てはまらないですね。
『構築性脊柱変形』については、急性の腰椎圧迫骨折について言及していると考えます。高齢者の場合、ちょっとした動作やくしゃみなどでも骨折になることもあります。
寝ていても痛い、少し起き上がろうとするだけで痛みが著明に悪化し独力で起き上がれない場合などは該当しますので、医師に報告し診察・診断がベターだと考えます。
臥位姿勢評価
次に臥位姿勢の問題点を探ってみます。寝ていて痛くなるので、臥位姿勢評価は客観的検査につなげるために問診と合わせてクリニカルリーズニングの初期仮説立案に非常に重要です。
腰痛がある方の背臥位姿勢を評価するポイントはいくつかありますが、今回は腰部のアライメントに注目し、
・前弯増強位
・前弯減少位
のどちら寄りかを確認します。腰椎前弯増強位では背部の筋緊張亢進や腹筋筋力低下、腹筋筋緊張低下などが関与したあれば、傍脊柱筋の柔軟性を検査したり、トランクカール運動での変化をみて立位姿勢や抗重量姿勢での姿勢パターンの一致を評価します。
難しいのは前弯減少位のパターンです。つまり後弯傾向が強まっているのですが、腰椎前弯=腰痛というイメージを持ちすぎているとこの異常に気付かないこともあります。個人的には起床時の腰痛には比較的多い身体機能異常と考えています。
背臥位でベッドと床との間の隙間に手を入れて、棘突起を圧したりしながら背臥位の主観的情報を収集していくとよいです。
ROM-T 予想以上の制限
背臥位でそのまま股関節屈曲の可動域を測定します。腰椎前弯増強位でも減少位でも腰椎アライメントをニュートラルにした状態(ベッドと背部の隙間がない状態)で角度とend feelを測定します。
特に前弯減少位の場合は、これ以上後弯方向に変位しないか棘突起に指尖を当ててアライメントの変位をモニタリングしながら、股関節屈曲していくと非常に有用な情報が得られます。
丁寧にend feelを見ていくと、股関節屈曲100°程度で腰椎後弯方向への代償が出現し始めることがあると思います。これが今回のポイントです。腰椎の不安定性?殿筋・背筋群の短縮?
いくつか仮説を頭に浮かべながら統合と解釈を行います。