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フレイル高齢者は1.9倍肺炎にかかりやすく、1.8倍重症化しやすい-約18万人の65歳以上の高齢者における疫学研究-

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フレイルとは、加齢や病気による⼼⾝の衰えにより要介護になるリスクが⾼い状態をいいます。新潟⼤学⼤学院医⻭学総合研究科国際保健学分野の齋藤孔良助教、菖蒲川由郷特任教授の研究グループは、フレイルの 65 歳以上の⾼齢者では、フレイル無しの⾼齢者と⽐べて約 1.9 倍肺炎にかかりやすく、また、1.8 倍肺炎が重症化しやすい(⼊院措置になりやすい)ことを明らかにしました。またフレイルの前段階にある⾼齢者でも、フレイル無しの⾼齢者と⽐べて 1.3倍肺炎にかかりやすいことがわかりました。 

 

本研究成果のポイント

  • ・フレイル⾼齢者は、フレイル無しの⾼齢者と⽐較して約 1.9 倍肺炎にかかりやすく、1.8 倍重症化しやすい。
  • ・フレイルの前段階にある⾼齢者もフレイル無しの⾼齢者と⽐較して 1.3 倍肺炎にかかりやすい。 

 

研究の背景

肺炎は⽇本を含む世界中で⾼齢者の死因の上位を占めます。フレイルとは加齢や病気による⼼⾝の衰えにより要介護になるリスクが⾼い状態をいいます。これまでの研究で、寝たきり等要介護状態の⾼齢者では誤嚥性肺炎が起こりやすいことがわかっています。しかし、要介護状態ではないがフレイルの⾼齢者が、肺炎になりやすく重症化しやすいのかは不明でした。

 

研究の概要

フレイル⾼齢者は肺炎にかかりやすく重症化しやすいのかを調べるため、⼀般社団法⼈⽇本⽼年学的評価研究機構(JAGES: Japan Gerontological Evaluation Study)が、2016 年 10 ⽉から 2017 年 1 ⽉の期間に⾏った約 18 万⼈の要介護認定を受けていない 65 歳以上の⾼齢者の健康と暮らしに関するアンケート調査データを統計解析しました。調査対象者が過去1年間で肺炎にかかったか、また、肺炎かインフルエンザ*にかかった後肺炎で⼊院したかを調べました。 

フレイルの判定は、厚⽣労働省が開発した基本チェックリストにより⾏いました。フレイル以外で肺炎に関係する可能性のある年齢、性、教育年数、所得、家族構成、婚姻状況、喫煙、肺炎にかかりやすく重症化しやすくなる病気(糖尿病、呼吸器疾患、⼼疾患、腎臓疾患)、肺炎球菌予防接種等の影響を統計学的な⽅法で除去しました。*インフルエンザになると、肺炎にかかりやすくなります。

 

研究の成果

統計解析の結果、フレイル⾼齢者は、フレイルではない⾼齢者と⽐べて、約 1.9 倍肺炎にかかりやすい可能性があることが明らかになりました。また、フレイルの前段階にある⾼齢者もフレイルではない⾼齢者に⽐べて 1.3 倍肺炎にかかりやすいことが分かりました。フレイル⾼齢者は、フレイルではない⾼齢者と⽐べて 1.8 倍肺炎で⼊院しやすい可能性があることが明らかになりました(下図)。 

 

また、基本チェックリストで⼝腔機能低下またはうつ状態に該当した⾼齢者は肺炎にかかりやすく、⽇常⽣活動作低下または閉じこもり*に該当する⾼齢者では、肺炎で⼊院しやすいことがわかりました。さらに、運動機能低下または低栄養状態に該当する⾼齢者では肺炎になりやすく、かつ肺炎で⼊院しやすいことがわかりました。*「閉じこもり」とは、⼀⽇のほとんどを家で過ごし、週に 1 回も外出しないことです。閉じこもりがちな⽣活が続くと、筋⼒や⾷欲が低下し、認知症やうつなどになりやすくなります。

 

今後の展開

フレイルを調べることで、⾼齢者が肺炎にかかりやすいのか、肺炎が重症化しやすいのかがわかる可能性があります。フレイルを予防することが、肺炎予防にもつながる可能性があります。今後は、⾼齢者で重症化しやすいインフルエンザや新型コロナウイルス感染症にもフレイルが関係しているのか等を明らかにしていく予定です。

 

研究成果の公表

これらの研究成果は、2021 年 4 ⽉ 12 ⽇、Scientific reports 誌に掲載されました。

論⽂タイトル:Frailty is associated with susceptibility and severity of pneumonia inolder adults (A JAGES multilevel cross-sectional study)

著者:齋藤孔良*、菖蒲川由郷、相⽥潤、近藤克則 *筆頭著者及び責任著者

doi: 10.1038/s41598-021-86854-3

 

本研究への⽀援

本研究は、科学技術振興機構が⽀援する OPERA(企業、研究所、学界とのオープンイノベーションプラットフォームに関するプログラム助成⾦番号 JPMJOP1831)による援助を受けています。また、この研究は、私⽴⼤学戦略的研究基盤形成⽀援事業、⽇本学術振興会科研費、厚⽣労働科学研究費補助⾦、国⽴研究開発法⼈⽇本医療開発機構(AMED)⻑寿科学研究開発事業、国⽴研究開発法⼈国⽴⻑寿医療研究センター⻑寿医療研究開発費、公益財団法⼈⻑寿科学振興財団、⾰新的⾃殺研究推進プログラム、公益財団法⼈笹川スポーツ財団、公益財団法⼈健康・体⼒づくり事業財団、公益財団法⼈ちば県⺠保健予防財団、公益財団法⼈ 8020 推進財団、新⾒公⽴⼤学、公益財団法⼈明治安⽥厚⽣事業団による援助を受けています。

 

詳細▶︎https://www.niigata-u.ac.jp/news/2021/91535/

 

注)紹介している論文の多くは、単に論文による最新の実験や分析等の成果報告に過ぎません。論文で報告された新たな知見が社会へ実装されるには、多くの場合、さらに研究や実証を進める必要があります。最新の研究成果の利用に際しては、専門家の指導を受けるなど十分配慮するようにしてください。

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