キャリアコンサルタントが徹底サポート

変形性膝関節症の力学的な病態解明に迫る!内側半月板が逸脱する歩行中の力を解明~半月板病態に基づく新規治療開発、効果的な予防に向けて~

3820 posts

【本研究成果のポイント】

・内側半月板の逸脱(図1b)は徐々に増悪し、膝関節の衝撃吸収機能を低下させることで変形性膝関節症の進行や痛みに繋がりますが、その原因は不明でした。

・超音波装置と三次元動作解析システムを用いて、変形性膝関節症患者の歩行中に生じる半月板の動きと関節の負荷から、逸脱を増悪させる力学的特徴を発見しました。

・半月板が逸脱する力学的病態の解明によって、変形性関節症の新規治療開発や、発症および進行の効果的予防法の確立に繋がることが期待されます。

【概要】

・変形性膝関節症の進行に関与する、内側半月板を逸脱させる力学的特徴を発見しました。・変形性膝関節症は、変形が進行すると自立した生活が困難になるため、原因となる半月板の逸脱(図1b)を予防することが重要ですが、この増悪原因は不明でした。

・本研究では、変形性膝関節症者と健常高齢者において、超音波装置と動作解析システムを用い、半月板の動きと関節の負荷を同時計測することで、歩行中に半月板を逸脱させる力を解明しました(図2)。

・変形性膝関節症者は、歩行中に地面を踏み込む瞬間(図3)に発生する力によって半月板が逸脱し、この力を効果的に減少させることが、関節変形進行や発症を予防する効果的な治療に繋がる可能性があります。

・本研究はイギリス時間の8月3日に「Knee」オンライン版に掲載されました。

【論文発表】

論文名:
Knee adduction moment is correlated with the increase in medial meniscus extrusion by dynamic ultrasound in knee osteoarthritis

著者:
石井陽介1)*,石川正和2),中島祐子3),高橋真1), 岩本義隆1), 橋爪孝和1), 岡本冴子1),砂川融4),岡田薫5),高木一也5),安達伸生6)

1)広島大学大学院医系科学研究科生体運動・動作解析学

2)広島大学大学院医系科学研究科人工関節・生体材料学

3)広島大学大学院医系科学研究科運動器超音波医学

4)広島大学大学院医系科学研究科上肢機能解析制御科学

5)コニカミノルタ株式会社

6)広島大学大学院医系科学研究科整形外科学

*責任著者

・DOI番号:10.1016/j.knee.2022.07.011

【背景】

変形性膝関節症は関節変形の進行に伴い、自立した日常生活を困難にさせます。この関節変形は、長年の関節への負荷によって、ゆっくり進むと考えられてきましたが、その進行スピードには個人差があることが問題になっています。そのため、全て“年のせい”として片づけるのではなく、個別的な進行原因を理解することが、変形性膝関節症患者の健康寿命の延伸にとって必要です。

半月板は関節内に正しく位置することで、衝撃を吸収する働きがあります(図1a)。しかし、半月板が関節外へ逸脱していくと(図1b)、衝撃吸収機能が低下し、変形の進行スピードが加速することが分かっています。そのため、半月板が逸脱する詳細な原因解明は、効果的な治療や予防への取り組みに繋がるため、非常に重要です。

変形性膝関節症者の半月板逸脱は、日常生活の繰り返される関節負荷によって増悪することが確認されています。特に生活動作の多くは歩行が占めていることから、歩行中に半月板を逸脱させる力の解明が求められています。しかし現在に至るまで、変形性膝関節症者における、歩行中の半月板の動きと関節へ発生する力の関係は分かっていませんでした。

【研究成果の内容】

本研究は変形性膝関節症者23人と健常高齢者10人を対象とし、快適歩行中の内側半月板の動きと関節負荷を、超音波検査装置と三次元動作解析システムを用いて同時に測定しました(図2)。

変形性膝関節症患者は、膝関節の内側に生じる力(図2)が健常高齢者より大きく、特に地面を踏み込む際に発生する力と逸脱の関連が確認されました(図3)。したがって、歩行後半に生じる膝関節内側への力が、日常生活中に半月板を繰り返し逸脱させており、変形性膝関節症特有の力学的特徴が発見されました。

【今後の展開】

歩行中の半月板逸脱を増悪させる力を解明したことで、その力を効率的に減少させる装具や歩き方など、変形性膝関節症者の新規治療発展に寄与することが期待できます。

加えて、現在膝に痛みなどの症状がない方にとっても、半月板の逸脱しにくい、適切な歩き方や歩行量など日常生活中に実践できる、具体的な予防方法を提案できる可能性があります。

【参考資料】

図1: 内側半月板逸脱の図を示す。正常に関節内に位置している半月板(a)、関節外へ半月板が逸脱している(b)。

 

図2:歩行中に膝関節へ発生する力と内側半月板の動きを示す。赤矢印は踏み込む瞬間に膝内側へ発生する力(a)、力で半月板が関節外へ逸脱する動き(b)を示している。

図3:各歩行段階に生じる半月板の動きを、超音波画像で示す。白矢印は内側半月板の逸脱量、歩行中に徐々に増悪し、赤点線の踏み込む瞬間において半月板が最も逸脱している。

詳細▶︎https://www.hiroshima-u.ac.jp/news/72755

注)プレスリリースで紹介している論文の多くは、単純論文による最新の実験や分析等の成果報告に過ぎました。 、さらに研究や実験を進める必要があります。最新の研究成果の利用に際しては、専門家の指導を受けるなど十分配慮するようにしてください。

変形性膝関節症の力学的な病態解明に迫る!内側半月板が逸脱する歩行中の力を解明~半月板病態に基づく新規治療開発、効果的な予防に向けて~

最近読まれている記事

企業おすすめ特集

編集部オススメ記事