痛みのマネジメントにおける理学療法士の仕事②~痛みのトリアージ~

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前回からの続編で、マネジメントのうちのトリアージについて書きます。理学療法士もトリアージするからミスが減り集学的治療がさらに活きるんです。

週の真ん中水曜日の江原です。理学療法士は慢性疼痛をはじめとする痛み治療のマネジメントに重要な役割を果たしています。前回は運動療法のマネジメントについて書きました。本日は理学療法士が実施する腰痛のトリアージについて書きたいと思います。

 

適切なトリアージで医師の診断を補助する

腰痛の分類で最も良く広く受け入れられている方法は、診断トリアージです。腰痛ガイドラインによると患者はトリアージによって、

・重篤な脊髄病変

・神経学的病変

・非特異的腰痛

の3つのグループのいずれかに分類されます。この3つのうち、重篤な脊髄病変はred flagsと呼ばれているのは、POSTさんのSPOTWRITERでもたびたび取り上げられていますしご存じだと思います。

red flagとは、文字通り、合図するために使われる赤旗のことであり、特に注意を要する特定の問題の警告信号として使用され始めた。そのため医療の現場では、red flags,red flag signs,red flag symptomsという表現で、重篤な病態を生じている可能性や処理の必要性が切迫した状態を継続する合図や徴候のことを示す。

痛みの教育コアカリキュラム編集委員会:痛みの集学的診療:痛みの教育コアカリキュラムより引用

腰痛患者の診察に際し最大の注意点は、red flagsを確実に理解し、腫瘍、感染、骨折を確実に見極め診断することです。

・発症年齢が、 20歳以下または55歳以上

・時間や活動性に関係のない腰痛

・胸部痛

・癌,ステロイド治療,HIV 感染の既往

・栄養不良

・体重減少

・広範囲に及ぶ神経症状

・構築性脊柱変形

・発熱

腰痛診療ガイドライン2019改訂第2版より引用

例えば診断の時点でトリアージを行い、非特異的腰痛の可能性が高い場合は患者教育、助言が最良のアプローチである可能性が高いのです。この時に医師の助言でも改善せず数週間経っても問題が改善されない場合、短期間の理学療法を行うと費用対効果からの面でも効率が良いと言われています。

 

腰痛と診断され全例がリハビリを処方されなくても改善に近づくと言えます。この話題は次回執筆予定の層化アプローチでまた書きたいと思います。一方で、重篤な脊髄病変や神経学的病変には医師による治療が適切です。このように腰痛の原因となるトリアージは治療選択にも関わります。

 

腰痛診断のアルゴリズム

痛みのマネジメントにおける理学療法士の仕事②~痛みのトリアージ~

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