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普段の臨床場面において変形性膝関節症の患者さんを見る機会は非常に多いと思います.その中でも「歩き始めが痛い」という訴えをされる患者さんって多いですよね。特に「今は痛くないんだけど、長く座っていた後の動き始めで痛い」といった具合にリハビリ室で再現痛が取れないという方は、評価が難しいかなと思います。
そこで、今回はそのような患者さんを担当した際にどのような評価をして、どのような治療をすればよいのかを紹介したいと思います。内容としましては大きく分けて、
・歩き始めで痛くなる原因
・原因となりやすい組織
の2つを順に紹介していきますので是非最後までご覧ください。
①歩き始めで痛くなる原因
まず初めに僕が考える歩き始めで痛くなる原因について説明します。結論から申し上げると、「伸展関節可動域制限があるのが原因」と僕は考えています。シンプル過ぎて拍子抜けした方もいらっしゃると思いますが、僕の臨床経験上「歩き始めの痛み」は伸展関節可動域制限の改善に伴って改善する事が多いです。
もちろん座位姿勢や日常生活の聴取等の評価も必要ではありますが、それよりも伸展関節可動域制限をしっかり評価・治療した方が効果が高いと思っています。では何故、伸展関節可動域制限があると歩き始めに痛みが出るのでしょうか?これを考える際にはpanjabi氏のニュートラルゾーンという考え方を使います。
ニュートラルゾーンとは?
ニュートラルゾーンとは、受動脊柱による抵抗がほとんど ない中立姿勢の周辺にある椎間関節の運動領域である。
M M Panjabi「The stabilizing system of the spine. Part II. Neutral zone and instability hypothesis」J Spinal Disord. 1992 Dec;5(4):390-6; discussion 397.
Deep l翻訳で翻訳
これだけ読んでも良く分からないという方も多いと思うので、もう少し詳しく説明します。ニュートラルゾーンとは、靭帯や関節の構造物による制動がかからない”可動域の領域”のことです。
panjabi氏が提唱したのは脊柱の可動域の事なので、脊柱や周囲の靭帯組織に負担のかからない可動域の領域という事になります。例えば腰椎を伸展していくと最終域には腰椎の前方にある靭帯の張力と椎間関節の骨構造によって制動されます。同様に腰椎の屈曲では腰椎の後方にある靭帯の張力と椎間板の構造によって制動されます。
このような関節構造による制動がかからない領域をニュートラルゾーンといいます。そして、筋肉の柔軟性低下などで可動域が減少するとニュートラルゾーンは減少します。これが非常に大切です!
膝関節伸展におけるニュートラルゾーンは?
ではこれを膝関節で考えてみましょう。Panjabi氏が提唱したのは脊柱のニュートラルゾーンでしたが、これは膝関節にも当てはめて考えることが出来ると僕は考えています。つまり、膝関節を伸展していった際に靭帯などの関節構造物に負担がかからない可動域の領域があるという事です。正確に何度までがニュートラルゾーンであるかはわかりませんが、今回は仮に-5°までとしてみます。
つまり、伸展-5°まではニュートラルゾーンであり、-5°~0°の間が靭帯や関節に負担がかかる領域として考えてみましょう。そして上述した様に関節可動域制限が生じるとニュートラルゾーンが減少します。よって、正常のニュートラルゾーン(仮)が-5°であったのが、-10°に悪化してしまうことが考えられます。
ニュートラルゾーンが-5°であったのが-10°になるということは、正常では負担のかからなかった-10°で関節に負担がかかるようになってしまうという事を示しています。
ニュートラルゾーンの減少と歩き始めの痛みの関係
ではニュートラルゾーンと歩き始めの痛みがどう関係するかについて紹介します。僕の臨床経験上、歩き始めで痛い人は”長時間座位後の動き始め”で痛みが生じ、「歩いていると楽になってくる」という方が多いです。この”長時間座位”というのが問題になります。僕は長時間座位によって、膝関節伸展のニュートラルゾーンが減少する事が歩き始めの原因と考えています。
皆さんもご経験があると思いますが、長時間のバスの移動や運転後に膝裏に張り感や痛みを生じる事ってありますよね。これは長時間座ることによって膝関節が長時間屈曲位に保持され、膝関節屈曲筋の柔軟性が一時的に減少する事が原因と考えられます。それに伴い膝関節伸展のニュートラルゾーンも減少し、より少ない角度で関節や靭帯に負荷がかかる事になります。
(例:正常が-5°までがニュートラルゾーンであったのが、-10°に減少すると以前は負担のかからなかった-8°でも負担がかかる)
なので普段は膝関節に痛みが生じない人でも長時間座位でいると時折このような症状が出現する事があると僕は考えます。これが膝関節伸展制限がある人ではどうでしょう。膝関節伸展制限があり、ニュートラルゾーンが-10°である人が、長時間座位によって-15°まで領域が減少したとすると、より高頻度に膝関節の疼痛の引き起こすと考えられます。
なので僕は、歩き始めの痛みがある人は膝関節伸展制限を改善した方が良いと考えています。
原因となりやすい組織
最後に原因となりやすい組織を紹介したいと思います。膝関節伸展制限になりやすい筋肉ですので、もちろん半膜様筋を代表としたハムストリングスが原因になる事も多いですが、個人的に非常に多いのが大腿筋膜張筋~腸脛靭帯による制限です。
これは何故かと言いますと、長時間座っているということは膝関節屈曲だけでなく股関節も屈曲位で保持されているため股関節屈曲筋である大腿筋膜張筋はより短縮位になるからです。もちろん座位から立ち上がった後の歩行時も股関節位伸展が求められるため、股関節伸展+膝関節伸展のストレスがかかります。
以上の理由から腸脛靭帯による膝関節伸展制限が歩き始めの痛みの原因になる事は非常に多いです。実際の臨床場面では、まずオーバーテストなどを用いて大腿筋膜張筋~腸脛靭帯の柔軟性を評価しましょう。そして腸脛靭帯のストレッチによって膝関節伸展制限が改善されるようなら、大腿筋膜張筋のマッサージを自主トレで指導しましょう。マッサージであれば例えばデスクワークの方も仕事中に出来ますので非常におススメです。以上参考になれば嬉しいです!最後までご覧いただきましてありがとうございました!
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