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加齢性難聴を有する高齢者の約7割は病院受診を希望していない

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発表内容の概要

東京都健康長寿医療センター研究所の桜井良太研究員をはじめとする研究グループは、高齢者の聴力と、耳の聞こえの不調について病院を受診する意向があるかを調査し、約 7 割の加齢性難聴を有していると考えられる高齢者は診察を希望していないことを明らかにしました。この研究成果は、国際雑誌「JAMDA (The Journal of Post-Acute and Long-term Care Medicine)」オンライン版(5 月 5 日付)に掲載されました。

 

研究成果の概要

加齢性難聴は、転倒発生や認知機能の低下など高齢者の健康に悪影響を及ぼすことがこれまでの研究から報告されてきました。この加齢性難聴には根本的な治療はないため、耳鼻科などの関連診療科を通じて加齢性難聴の診断を受けた後に、補聴器装着など適切な対応を早期にとる必要があります。しかし、どの程度の高齢者が耳の聞こえの不調に関して診察を希望しているかについては明らかではありませんでした。そこで我々の研究チームでは、2022 年に群馬県草津町で行った健康調査(代表:藤原佳典研究部長※当時、現研究所副所長)」に参加した 385 名の 75歳以上の高齢者のデータを解析し、これを明らかにすることとしました。

調査ではオージオメータを用いて聴力を測定し、1 kHz と 4kHz での平均聴力レベルから中等度以上の難聴者の把握を行いました。加えて、難聴の自覚(主観的難聴)についても調査するとともに、「耳の聞こえに関して、病院に行こうと思ったことはありますか?」という質問から耳の聞こえの不調に関して診察を希望しているか否かを調査しました。

調査の結果、37.4%(144 名)の高齢者に中等度以上の難聴が認められました。この中等度以上の難聴者のうち、耳の聞こえの不調に関して診察を希望している者もしくは既に受診したことがある者は 29.9%(43 名)に留まり、大多数の加齢性難聴と考えられる高齢者は受診の希望を抱いていないことが明らかとなりました。この傾向は難聴の自覚の有無に強く影響を受けることも分かりました。

 

図. 結果の一例

(左)それぞれの群の該当者割合

(右)各群における受診希望者および既に受診を経験した者の割合:難聴の自覚が受診意向に影響を与えていることが分かる

 

研究成果の意義

本研究から高齢者における加齢性難聴による受診意向の低さが明らかとなりました。個人によっては診療科への受診を経ずに補聴器を購入する方もいるため、一般化は難しいですが、本結果は加齢性難聴を抱える方の問題意識がそれほど高くないことを示す結果と言えます。

本研究では難聴の自覚がない方ほど受診の意向が低いこともわかりました。これは当然の結果とも言えますが、難聴の自覚を持ってもらうことの必要性を示す結果でもあります。早期の補聴器装着が認知症の危険性を下げるといった研究結果もあることから、定期的な耳の聞こえのチェック(耳の聞こえの不具合の顕在化)を通じた耳鼻科等への受診勧奨のシステムが必要であると考えられます。

 

掲載論文

国際科学雑誌「JAMDA (The Journal of Post-Acute and Long-term Care Medicine)」

(オンライン版掲載 現地時間 5 月 5 日付)

Low Intention to Visit a Hospital for Hearing Loss Among Older Adults

(高齢者における加齢性難聴での受診意向の低さに関する研究)

 

詳細▶︎https://www.tmghig.jp/research/release/2023/0518.html

注)プレスリリースで紹介している論文の多くは、単純論文による最新の実験や分析等の成果報告に過ぎました。 、さらに研究や実験を進める必要があります。十分に配慮するようにしてください。

加齢性難聴を有する高齢者の約7割は病院受診を希望していない

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