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入院期の心臓疾患患者における座位時間と身体機能の関係

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神戸大学大学院保健学研究科の井澤和大准教授、金島侑司博士研究員らと、早稲田大学スポーツ科学学術院の岡浩一朗教授らの研究グループは、多施設における入院期の心臓疾患患者を対象に、入院期の生活において、座位時間が長い患者のグループは、短い患者のグループよりも退院時の身体機能指標は有意に低いことを明らかにしました。これらの発見は、身体機能を改善する際に、座位時間を考慮することの重要性を強調しています。

この研究成果は、6月10日に、Scientific Reportsに掲載されました。

ポイント

・入院期の心臓疾患患者353名のうち168名 (47.6%) において座位時間※1が長い傾向にあった (長い患者のグループ、733.6±155.3 対 短い患者のグループ、246.4±127.4分/日、p < 0.001)。

・退院時の身体機能指標は、座位時間が長い患者は、短い患者に比べ、低い値を示した ( 10.5±2.4 対 11.2±1.6 ポイント、p=0.001)。

・入院期の心臓リハビリテーションに参加していても入院中の生活場面における座位時間の長短により、退院時の身体機能に差がある。

研究の背景

長時間の座位行動 (座りすぎ) は、心臓疾患の死亡率や罹患率と関連しています。しかし、入院期の心臓リハビリテーションでは、座位時間と身体機能との関係については十分に理解されていません。 そのため、この研究では、入院期の心臓リハビリテーションに参加している心臓疾患患者における 座位時間が長い患者グループの割合、座位時間と身体機能との関係について明らかにすることを目的としました。

図:入院期の心臓リハビリテーションにおける心臓疾患患者の座位時間と身体機能指標との関係

座位時間が長いグループの患者は、低いグループの患者よりも身体機能指標が有意に低かった。

研究の内容

本研究は、2020年10月から2022年7月までに多施設における入院期の心臓リハビリテーションに参加した患者が登録されました。なお、認知症の可能性がある、単独歩行が困難な患者は除外されています。 座位行動の指標としては、1日の総座位時間が、退院時の身体機能指標としては Short Performance Physical Battery (SPPB)※2 がそれぞれ用いられました。心臓疾患患者は、先行研究 (Bennie JA、BMC Public Health 、2016) に基づき、短い座位時間グループ (<480分/日) と長い座位時間グループ (≧480分/日) に分けられました。 この2 つのグループについて分析しました。

その結果、入院期の心臓疾患患者353名のうち168名 (47.6%) において座位時間が長い傾向にあること (長い患者のグループ、733.6±155.3 対 短い患者のグループ、246.4±127.4分/日、p<0.001) 、また、退院時の身体機能指標は、座位時間が長い患者は、短い患者に比べ、低い値を示しました ( 10.5±2.4 対 11.2±1.6 ポイント、p=0.001)。

今後の展開

これらの発見は、入院期の心臓リハビリテーションに参加している患者においても、入院中の生活場面における座位時間の長短により、退院時の身体機能に差があることから、身体機能を改善する際には、座位時間を考慮することの重要性を示しています。今後は、入院期の心臓疾患患者に対して、入院期および退院後の各生活場面における座位時間の軽減、再発予防、そして健康に関連する生活の質などの向上のための指導方法について検討する必要があります。これらの研究を踏まえて、今後さらに入院期から回復期、生活期における心臓疾患患者の生活場面を想定し、健康を促進する方策の開発に少しでも役に立つような情報を得たいと考えております。

用語解説

※1 座位時間:

余暇におけるテレビ視聴やゲームなどの娯楽、仕事中の会議やパソコン使用によるデスクワーク、通勤時の自動車運転等の移動に伴う座位 (半臥位や臥位を含む) 行動に費やす時間。近年、この長時間にわたる座位行動、いわゆる「座りすぎ」がもたらす健康リスクが注目され、盛んに研究が行われるようになった。

※2 SPPB (Short Physical Performance Battery) :

立位バランス、歩行、そして立ち座り動作などの 3つの 課題より成り立つパフォーマンステストである。各課題の達成度について0~4 点で採点される。合計点 (4点×3=12 点満点) が指標となる。

謝辞

本研究は、JSPS 科研費 JP22K11392 の支援を得て実施されました。

論文情報

タイトル

“Relation of sedentary behaviour to physical function in phase I cardiac rehabilitation”

DOI:10.1038/s41598-023-36593-4

著者

Kazuhiro P. Izawa, Yuji Kanejima, Masahiro Kitamura, , Kodai Ishihara, Asami Ogura, , Ikko Kubo, Koichiro Oka, Hitomi Nagashima, Hideto Tawa, Daisuke Matsumoto, and Ikki Shimizu

掲載誌

Scientific Reports

詳細▶︎https://www.kobe-u.ac.jp/research_at_kobe/NEWS/news/2023_06_12_01.html

注)プレスリリースで紹介している論文の多くは、単純論文による最新の実験や分析等の成果報告に過ぎました。 さらに研究や実験を進める必要があります。十分に配慮するようにしてください。

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