週の真ん中あたりの江原です。前回は診断ラベルが患者に貼りつけられると、どんどん粘着性を高めまとわりつく傾向が生まれやすい「診断モメンタム」という認知バイアスについて書きました。
医療チームの仲介者(患者、救急医、看護師、医師)を経由することで、最初は「可能性」として始まった診断名に勢いがついてしまい、他の可能性がすべて排除されてしまう考えの偏りです。
原因がわからないことが多い慢性疼痛では前回の記事の後半にある症例の様に、より一層認知バイアスに注意しないといけないと感じました。医療における認知バイアスについて専門的に学んだことはありませんが、興味が出てきましたので少し調べてみました。
人の考え方と認知バイアス
事象の客観的な姿と主観的視認または理解した像との間にある解離がバイアスです。自分の目に映ったものが正しいものとは限らない、とは冷静になれば当然のことと考えられます。しかし、一度思い込んでしまうと本来正しい情報が信じられなくなったり、古い情報に引っ張られて正しい情報が見えているのに、取り上げずスルーしてしまいます。
自らの思考のバイアスに気付かず、適切な考え方から逸れてしまうリスクを抱えているということを認識しなければなりません。慢性疼痛においては、痛覚変調性疼痛について考察するときに注意が必要そうです。
先日初の研究会が開催された痛覚変調性疼痛ですが、原因不明な慢性疼痛を表現するのに都合のいいメカニズムのようですが、本来は慢性一次性疼痛(疼痛疾患である、非特異的腰痛、線維筋痛症、CRPS)の説明に使われる用語です。
しかし、「他の慢性疼痛の病態でうまく説明できない すべての病態に使うべきではない」とも言われているにも関わらず、疼痛部位が広範囲なだけで短絡的に痛覚変調性疼痛と決めつけてしまう傾向があります。早く結論付けた方が人間の心理的には楽なのです。