現在、慢性疼痛において注目されているのは有酸素運動なのではないかと思われます。アメリカスポーツ医学会(The American College of Sports Medicine:ACSM)によると、有酸素運動は、慢性腰痛患者に最も推奨される介入方法で、ウォーキング、水泳、サイクリング、ジョギング、ランニング、ハイキング等が典型的な有酸素運動だとしています。
疼痛メカニズムと有酸素運動
慢性疼痛のメカニズムの構成すると言われている痛覚変調性疼痛に対しては、有酸素運動を選択することが多いと思います。痛覚変調性疼痛メカニズムの関与が高いと推測される患者は、リスクが低い患者と比較して、身体機能評価の結果が低く、運動恐怖と破局的思考の割合が高く、QOLが低いとされています1)。病態だけでなく障害像の観点から見ても、まず第1に身体機能改善と身体活動維持が改善に必要であり有酸素療法が推奨されます。
慢性腰痛に対する有酸素運動
慢性腰痛患者の疼痛強度と障害の改善における様々な有酸素運動の有効性を評価したRCT研究を分析したシステマティックレビュー2)で抽出されていた有酸素運動の方法としては、
・ウォーキング
・エアロバイクでのサイクリング運動
・トレッドミルランニング運動
・歩行運動とランニング運動の両方
・トレッドミルウォーキング、階段昇降、静止サイクリング運動
・ウォーキングとジョギング運動
・個別にデザインされ、管理された有酸素運動
でした。外来リハでの使われるのは、エアロバイクかトレッドミルあたりでしょうか。22人の患者を腰痛教育とエアロバイクを行う群と腰痛教育のみを行う群に振り分けて、エアロバイク運動の有効性を評価したRCTでは、1セッション90分間、週に2セッションで5カ月間継続した介入後の測定で、エアロバイク群が対照群に比較し疼痛強度とRDQが大きく低下したと報告されています3)。参加者数の少なさと介入期間の短いとの指摘がありますが、5カ月というと本邦の運動器の疾患別リハビリ算定期間とほぼ同じ期間であり短期的な腰痛改善にエアロバイクは適しているのかもしれません(週2回通院する是非はありますが)。