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【変形性膝関節症】慢性期における屈曲制限の解剖と運動療法

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今回は、膝関節屈曲制限に対する因子、解剖学、問診を基にした評価と治療(運動療法)をお伝えしたいと思います。日常生活では階段を降りる時、椅子に座った時、しゃがみ込み時、正座時など様々な場面で膝を屈曲させます。膝関節屈曲制限は変形やそれに伴う拘縮が原因のこともありますが、それ以外の軟部組織性による制限であることも多いと感じています。その軟部組織を中心としたアプローチも紹介していきます。

問診と動作からどこが痛いのかを考える

まずは屈曲制限の確認を行うために、しゃがみ込みと階段昇降、可能な方は正座を行います。その後、臥位にて膝関節を他動的に屈曲させていきます。この際にどこに痛みが生じ屈曲制限を起しているのか、ということを聴取していき予測を立てていき治療(運動療法)へとつなげていきます。まず初めにそれぞれの動作に必要な角度を知っておくことが大切です。

これらが実際の動作時に必要であるとされています。ベッド上での屈曲可動域が不足している場合では、まずはその他動的な可動域を広げていく必要があり、そうではない場合には制限している組織はどこなのか、どうしてできないのかを考えていく必要があります。

今回は特に屈曲制限に起因しやすい部位をピックアップしてご紹介します。

・膝の前面が痛い

膝蓋下脂肪体

動画1:膝蓋下脂肪体

膝蓋下脂肪体は線維性滑膜に覆われた脂肪組織であり、膝蓋靭帯の深部の間隙を埋めています。疼痛の閾値が低い組織といわれており、膝関節の周囲の中でも特に疼痛に敏感な部位でもあります。動態としては膝屈曲位で深層に移動し、伸展位で表層に移動するとされている為、圧痛確認や治療には基本的に伸展位で行うことが多いです。しかし、屈曲動作時には膝蓋骨が下方に動くためにも脂肪体の移動は必要になってきます。よって、屈曲時に脂肪体周囲の疼痛や違和感を訴え場合には、脂肪体を全て触れることは困難になってきますが、屈曲位での脂肪体マッサージも行い検証をしていきます。

動画2:脂肪体に対しての徒手療法(屈曲位)

膝関節屈曲位で膝蓋腱から内外側に分かれて触れることができ、脂肪体が逃げないように中央に向かって軽く圧迫しながら動きを出していきます。脂肪体に硬さがある場合には、疼痛が生じやすい傾向があると感じるため、硬さを取るように意識しながら行っていきます。膝伸展位と比較すると、脂肪体を触れることができる範囲が狭くなりますが、可能な範囲で行っていきます。

膝蓋支帯

内側膝蓋支帯と外側膝蓋支帯があり大腿骨から膝蓋骨に付着しています。これらの柔軟性や滑走性が低下すると膝蓋骨が大腿骨関節面に対して下方へ移動しづらく屈曲制限になることがあります。

動画3:膝蓋支帯リリース

膝蓋骨は軽度屈曲位で動きが出やすい為、まずは軽度屈曲位で膝蓋骨の操作を行っていきます。操作方法は膝蓋骨の内側もしくは外側から膝蓋骨を斜め下方に押し込み、押している対側が少し浮き上がるように行っていきます。膝屈曲角度を変えながら、この操作を行っていくと良いと思います。状況によって手掌面または手指で操作を行っていきます。

膝蓋上方組織-大腿四頭筋、膝蓋上脂肪体、膝蓋上嚢、大腿骨前脂肪体

図4:膝蓋上方組織

膝蓋上方組織には大腿四頭筋をはじめとして層になって脂肪体が存在します。ここの柔軟性や滑走性が不足していると膝関節屈曲時に膝蓋骨の下方移動が阻害され、膝関節屈曲制限に繋がってきます。これらの組織の柔軟性に関しては、徒手のみでなく動きを同時に入れていくことでより効果が出現すると感じています。

動画4:膝蓋上方組織リリース

側臥位で下方下肢の股関節を90°屈曲位に骨盤の前傾を防止した状態で開始します。上方の股関節を軽度伸展させ、そこから膝関節を屈曲させていきます。その際にセラピストは片方の手で膝蓋上方を圧迫しておく事で、その組織のリリースを促していきます。

・膝の後面中央が痛い

膝窩筋

膝窩筋の痛みの発生メカニズム

後方軟部組織の硬さ➡脛骨の後方偏位➡膝窩筋過外旋による伸張ストレス(内旋作用がある為)➡筋内圧による痛み

膝関節は屈曲112°以上になると大腿骨の膝窩筋腱溝に膝窩筋がはまり込みます。その際に正常な膝関節は、屈曲に伴い20~40°程度内旋するといわれており、内旋が不足すると、膝窩筋は深屈曲時において過度に伸張される可能性があります。そのことからも深屈曲時の疼痛において内旋不足により膝窩筋に疼痛が生じることがあります。また膝窩筋の疼痛発生メカニズムで脛骨の後方偏位が関係してきますが、以下に結果が出たアプローチを紹介します。

動画5:結果が出た前方引き出しでの屈曲運動

膝窩に小さめのボールを挟んだ状態で屈曲を他動的に促していきます。こうすることで脛骨の後方偏位を抑え膝窩組織の挟み込みを防止することができ、可動域の拡大を図ることが可能となります。ここではボールを使用していますが、屈曲角度が増加してくるとバスタオル、フェイスタオルというように挟む範囲を狭めていくことが工夫するポイントとなってきます。また、深屈曲が可能となってくると自身で正座をする際に膝窩にタオルを挟んでいくと上記と同様にスムーズにできる手助けになるかと思います。

・膝の後面外側が痛い

外側半月板

膝関節屈曲時の制限として、大腿骨のロールバック時に脛骨の内旋不足から周辺組織の線維化により半月板後方制限が起き、半月板が大腿骨と脛骨に挟み込まれてしまう(インピンジメント)ことで痛みを誘発してしまうことがあります。

大腿二頭筋+腓腹筋外側頭

問題がよく出現する軟部組織として大腿二頭筋長頭と短頭との間、大腿二頭筋と外側広筋の間があります。それぞれの間を狙っていきます。訴えと触診からしっかりと部位を特定していくことが大切です。

動画6:大腿二頭筋と腓腹筋リリース

動画7:大腿二頭筋リリースの自主練習

また後面外側でのインピンジを防ぐためにも過外旋(内旋不足)の修正も図る必要があります。ここでは下腿の過外旋を修正する方法を解説していきます。

動画8:下腿内旋誘導アプローチ

屈曲方向に関しては可能であれば、背臥位だけでなく腹臥位や座位等の様々な肢位で、自動屈曲動作に伴い内旋方向へと他動的に誘導していきます。これにより外側半月板の動きを促すとともに、膝窩筋や半膜様筋の収縮を促すことで自動屈曲時においても過外旋が修正されるため痛みの改善へもつなげていきます。

今回は慢性期における膝屈曲制限の解剖と運動療法ということで紹介をしてきました。 問診を基に徒手での介入・ストレッチ・セルフエクササイズ・トレーニングを行い、屈曲制限の改善に努めていくことで、疼痛の改善にも繋がってきます。

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【変形性膝関節症】慢性期における屈曲制限の解剖と運動療法

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