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理学療法士も知っておきたい鎮痛法⑤~ノイロトロピン®~

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消炎鎮痛薬だけが薬物療法ではない

週の真ん中水曜日の江原です。これまでにも何度か書いてきましたが、本日はセラピストにも身近な薬物療法についてです。我が国の慢性疼痛治療でもよく用いられている、ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液(ノイロトロピン®)は、記事でも度々「特殊な治療薬」として取り上げてきました。

驚きの成分と製造方法

まず注目されるべきはノイロトロピン®の製造方法ですが、その経緯を製造会社の資料から知ることができました。

本剤開発の発端は、1929 年に種痘法の改良を目的として精製痘苗の製法を完成した矢追秀武博士 (当時東大伝染病研究所、後に東京大学教授)の研究に始まる。その後精製痘苗と百日咳ワクチンとの併用注射により咳嗽発作が著減されることを見出した。一方、中村豊博士 (当時北海道大学・細菌学教室教授)らは、1930 年代に電気泳動法及びザイツろ過法により痘苗液からウイルス成分とウイルスを含まないたん白質を含有する炎症皮膚由来成分とに分離し、随伴物質は免疫活性を有する他に、生体に感染阻止力を与える何かが存在する可能性を示唆していた。
この両者の研究を踏まえ、1920 年代にドイツの炎症病理学者 Aschoff L.教授の下で研究を進めた木下博士は、「炎症とは、外部から組織に浸入した外敵に対する生体の局所防衛反応である」との観点から「精製痘苗による臨床効果がウイルスそのものの活性によるのでなく、ウイルス刺激やそれに伴うストレスに対する生体防御反応により生理活性物質が炎症組織内に産生される」という考えの基に、本剤の開発を弊社に依託し製剤化に至った。

日本臓器製薬2015 年 2 月 第 10 版 医薬品インタビューフォームより引用抜粋

ノイロトロピンは®は、ワクシニアウイルスを接種した家兎の皮膚炎症組織から抽出した多成分で作られた薬物で、主成分は明らかになっていません。なぜウサギの皮膚の炎症?成分が不明で大丈夫なの?どんな経緯でこんな方法を思いついたのかと疑問に思っていましたが、資料からは偉大な研究成果を応用し長い年月をかけて作られた薬剤だと知ることができます。痘苗とは弱毒化したウイルスである種痘の材料となるもの。『矢追抗原』とも呼ばれていた精製痘苗は、『ただ一回で免疫百%の種痘法 : 痕跡も残らぬ簡単な皮下注射 : ジェンナー以来の革命「精製痘苗」』という見出しで当時の新聞にも取り上げられています(昭和9年12月10日東京日日新聞より)。

種痘を改良した矢追博士の画期的な方法と、ウイルス成分の分離法を開発した中村博士の方法を合わせて、炎症に対する仮説に基づき鎮痛作用・抗アレルギー作用を有する非たん白性の生理活性成分を分離・製剤化しノイロトロピン®は完成しています。

理学療法士も知っておきたい鎮痛法⑤~ノイロトロピン®~

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