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痛みの概日リズムの評価は短縮可能か?-慢性疼痛を有する地域住民を対象とした研究-

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痛みの概日リズムとは24時間周期の痛み感受性の変動を意味します.こうした痛みの概日リズムを把握することで,痛みによって制限を受けている日常生活活動や生活の質の改善を目的としたリハビリテーションがより効果的に進むのではないかと考えられています.しかし,痛みの概日リズムの評価期間はこれまで7日間が一般的であり,日内に数回評価する特性上,患者負担が大きいことが問題視されていました.畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターの田中 陽一 客員研究員と森岡 周 教授らは,痛みの概日リズムの評価期間が3日間であっても,従来の7日間の評価から得られた結果と概ね一致することを明らかにしました.この研究成果は,Journal of Pain Research誌(Can the Assessment of the Circadian Rhythm of Pain Be Shortened? A Study of Community-Dwelling Participants with Chronic Pain)に掲載されています.

研究概要

慢性疼痛患者に対し自身で痛み管理を行いながら日々の生活活動や身体運動の適正化を目標に教育的介入を行っていくことは重要であり,より具体的で効率的な教育的介入を行う為には,慢性疼痛患者の痛み概日リズムを把握する必要があります.しかしながら,従来痛みの概日リズムの評価期間は7日間が主流となっており,患者負担が大きいことから評価として定着しない現状がありました.そこで本研究では7日間評価と比較し,3日間評価の妥当性をカッパ係数を用いて検証しました.

本研究のポイント

 ・金曜から日曜の3日間が最も7日間評価との一致度が高いことがわかりました.

 ・金曜から日曜,火曜から木曜の3日間では概ね7日間評価と一致していましたが,日曜から火曜の3日間では他の曜日と比べ7日間評価との一致度が低下していました.

研究内容

地域在住の慢性疼痛患者を対象に,痛みの概日リズムの評価として起床時,9時,12時,15時,18時,21時の6時点での痛みの評価を7日間実施しました.個々の参加者について6時点の痛みスコアを用いてクラスター分析を行い,7日間評価による分類と,各3日間評価(火曜‐木曜,金曜‐日曜,日曜‐火曜)による分類間の一致度をカッパ係数を用いて確認しました.

 

図1.7日間評価による痛みの概日リズムの分類

各クラスターには以下の基準が適用されました;

CL1:痛みの強さは起床時に最小で,その後上昇し,正午以降はスコア0を超えた.CL2:起床時と21時にスコア0を上回り,日中は下回る.CL3:VASスコアは起床時にピークに達し,時間の経過とともに低下し,正午過ぎにはスコア0を下回った.

各3日間評価の分類を7日間評価の分類基準と照らし合わせて相違を確認し,7日間評価と各3日間評価の被験者内変動性をカッパ係数を用いて調べたところ,金曜-日曜の3日間が最も高いカッパ係数を示し(k=0.77),次いで火曜-木曜(k=0.67),日曜-火曜(k=0.34)という一致度であった.先行研究においてカッパ係数が0.58~0.80の間であれば,良好な一致を示すとされており,金曜-日曜,火曜-木曜の3日間評価は7日間評価の結果と一致していると考えられます.しかし,日曜日から火曜日までの3日間の一致度は低くなっており,本研究の結果は,3日間評価の有効性を示すと同時に,特定の曜日によっては一致度にばらつきが生じることも強調する結果となりました.

本研究の臨床的意義および今後の展開

本研究で得られた知見は,3日間評価から得られた結果が,従来の7日間評価から得られた結果と一致することを示しています.痛みの概日リズムの評価を短縮できるようになれば,臨床における評価がさらに確立され,痛みのリズムを考慮した疼痛管理が容易になると考えられます.また,評価時間の短縮は早期介入につながり,患者満足度の向上にも寄与すると思われます.したがって,本研究の結果は,患者の個人差を考慮し,評価期間を短縮した痛みの概日リズム評価を確立する必要性を示唆しています.

論文情報

Tanaka Y, Fujii R, Shigetoh H, Sato G, Morioka S.

Can the Assessment of the Circadian Rhythm of Pain Be Shortened? A Study of Community-Dwelling Participants with Chronic Pain.

J Pain Res. 2024 May 25 ; 17 :1929-1940.

詳細︎▶︎https://www.kio.ac.jp/nrc/2024/05/31/press-25/

注)プレスリリースで紹介している論文の多くは、単純論文による最新の実験や分析等の成果報告に過ぎました。 さらに研究や実験を進める必要があります。十分に配慮するようにしてください。

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