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痛みの性質を観察することで脳卒中後疼痛のリハビリテーション予後を推定できるか?

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脳卒中後疼痛(Post-Stroke Pain:PSP)は,脳卒中を発症した患者の約40%が経験するとされる痛みです.脳卒中後疼痛は,患者の日常生活やリハビリテーション過程に大きな影響を与えるため,その予後を正確に予測し,適切なリハビリテーションを計画する必要があります.畿央大学大学院 博士後期課程 浦上慎司,ニューロリハビリテーション研究センター 大住倫弘 准教授らの研究グループは,痛みの性質データ(うずくような,しびれたような)を活用すれば痛みのリハビリテーション予後を推定できることを明らかにしました.この研究成果はPhysical Therapy誌(Prognosis of Pain after Stroke during Rehabilitation Depends on the Pain Quality)に掲載されています.

研究概要

脳卒中後疼痛(Post-Stroke Pain, PSP)は,脳卒中を発症した患者の約43%が経験するとされる痛みです.この痛みは肩の痛み,筋肉の痙攣による痛み,神経障害性疼痛など,様々なタイプがあり,患者の日常生活やリハビリテーション過程に大きな影響を与えます.PSPの管理は患者の機能回復にとって重要であり,痛みの質に応じた個別化された治療が理想とされています.今回の研究により,脳卒中後の痛み(PSP)のリハビリテーション予後は,痛みの性質に依存することが明らかになりました.

本研究のポイント

・痛みの性質に基づく患者分類: 脳卒中後疼痛患者を4つの異なるクラスターに分類し,それぞれの痛みの性質に基づいて個別のリハビリテーション戦略が提案されました.

・リハビリテーション効果の差異: 一部のクラスターでは,従来の運動療法ベースのリハビリテーションが有効である一方,他のクラスターでは追加の治療法が必要とされることが判明しました.

・個別化されたリハビリテーションの必要性: 痛みの性質に応じた個別化されたリハビリテーション戦略が,脳卒中後疼痛の治療に重要であることが示されました.

研究内容

本研究では,脳卒中後疼痛を有する85名の患者を対象に,痛みの質に基づいて4つの異なるクラスターに分類しました(下図の左:こちらをクリック).クラスター1は「冷たい刺激が痛いグループ」,クラスター2は「しびれがつよいグループ」,クラスター3は「圧痛がつよいグループ」,クラスター4は「深部痛がつよいグループ」で構成されました.患者は,12週間にわたる運動療法ベースのリハビリテーションを受け,痛みの強さ縦断的に観察されました.クラスター4の患者は,従来の運動療法ベースのリハビリテーションにより痛みの強度が有意に軽減されましたが,クラスター1およびクラスター2の患者は痛みの軽減が見られませんでした(下図の右:こちらをクリック).この研究結果から,症例ごとに異なる痛みの性質によってリハビリテーション予後が異なることが分かりました.痛みの性質は,症例の痛みを発生させている病態メカニズムを表現していると考えられていることから,それぞれの病態によってリハビリテーション予後が異なるということが考えられます.そのため,個別化されたリハビリテーション戦略が重要であり,特に,従来のリハビリテーションが効果的でない場合,追加の治療法(例:経頭蓋直流刺激など)が必要となる可能性があります.

図:脳卒中後疼痛の痛みの性質に基づくクラスター分類とそれぞれのグループのリハビリテーション予後

*高解像度の図はこちらをクリックして下さい.

本研究の臨床的意義および今後の展開

今回の研究では,症例が日常的に表現する痛みの性質(ズキズキなど)を軽んじてはいけないということが再確認されました.また,リハビリテーションの初期段階での痛みの性質の評価をすることで,予後を予測できるだけでなく,リハビリテーションの選択を迅速に提供できるようになるとのことです.

論文情報

Uragami S, Osumi M, Sumitani M, Fuyuki M, Igawa Y, Iki S, Koga M, Tanaka Y, Sato G, Morioka S.

Prognosis of Pain after Stroke during Rehabilitation Depends on the Pain Quality.

Phys Ther. 2024 Apr 3:pzae055. doi: 10.1093/ptj/pzae055. Epub ahead of print. PMID: 38567849.

詳細︎▶︎https://www.kio.ac.jp/nrc/2024/06/13/press-26/

注)プレスリリースで紹介している論文の多くは、単純論文による最新の実験や分析等の成果報告に過ぎました。 さらに研究や実験を進める必要があります。十分に配慮するようにしてください。

痛みの性質を観察することで脳卒中後疼痛のリハビリテーション予後を推定できるか?

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