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CT 画像から心大血管手術後の自立歩行獲得の遅延を予測 -手術前の治療介入の適応判定にも役立つ可能性-

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兵庫医科大学(所在地:兵庫県西宮市、学長:鈴木 敬一郎)大学院リハビリテーション科学研究科病態運動学分野 大学院生 清水 和也、講師 松沢 良太、教授 玉木 彰らの研究グループは、心大血管手術前のルーチン検査である Computed Tomography(CT) 検査により評価した筋質が、術後の自立歩行獲得の遅延を予測するのに有用であることを明らかにしました。

本研究論文は Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle (2023 JOURNAL IF: 9.4) に掲載されました。

本研究のポイント

・心大血管手術における術後の自立歩行獲得の遅延は、入院期間の長期化や死亡率の上昇、再入院のリスク増加に繋がるため、特に高齢患者においては術後の機能回復が最重要課題である。

・CT 検査は心大血管手術前のルーチン検査であり、術後の自立歩行獲得が遅れるリスクのある患者を抽出し、術前の治療介入の適応判定にも有用である可能性が示された。

図1. 術前CT 画像の活用例

研究の背景

本邦では、年間約7 万人以上の患者が心大血管手術を受けており、高齢化の影響で、高齢の患者数も増加しています。心大血管手術を受ける高齢患者では、フレイル(※1)の有病率は 25~50%、サルコペニア(※2)の有病率は、19%~27%と報告されています。このような高齢の患者において術後の機能回復が最も重要な課題です。術後の自立歩行獲得の遅延は、入院期間の長期化や、死亡率および再入院のリスクの上昇につながることが報告されており、このような事態を未然に防ぐためには、ハイリスク患者を早期に抽出し、是正することが重要です。しかし術前にハイリスク患者を抽出することは、さまざまな制約により実務的に困難であり、また手術直前に抽出しても是正の機会を得ることはできません。

そこで、我々は既存の CT 画像を用いた骨格筋評価に着目し、心大血管手術後の自立歩行獲得の遅延に対する予測能を評価することにしました。CT 検査は病態把握および手術計画のために心大血管手術前のルーチン検査として実施されており、近年では骨格筋の量や質を評価するゴールドスタンダードにも位置づけられています。

研究手法と成果

単一施設で待機的心大血管手術を受けた 139 名を対象として、術前CT 画像から、筋肉量の指標である大腰筋体積と、筋質の指標である CT 値を算出しました。術後の自立歩行の獲得遅延の定義は、日本循環器医学会のガイドラインを参考に、「術後4 日以内に 100m 歩行が達成できない場合とし」、本研究対象者の47.5%がこれに該当しました。CT 値および大腰筋体積と術後の自立歩行獲得遅延との関連について評価するために、受信者動作特性(ROC)分析およびロジスティック回帰分析を行いました。ROC 分析によって算出した CT 値、大腰筋体積の曲線下面積はそれぞれ 0.78、0.69 であり、CT 値は中等度の判別能を有することが確認されました。また、ロジスティック回帰分析の結果、CT 値の低下は年齢、手術の種類、腎機能等の患者背景と独立して、術後の自立歩行獲得遅延と関連することが明らかになりました。

本研究では、術前1~2 か月の CT 画像を採用しており、術前までの治療介入に必要な期間が確保されています。したがって、CT 検査は、術後の自立歩行獲得が遅れる可能性のある患者を抽出し、術前の治療介入の適応判定にも有用である可能性が示されました。

今後の課題

本研究は単施設での観察研究であり、今後は症例数を増やした検討が必要です。また、症例数が少なく、手術の種類別あるいは疾患別にデータを分析することができませんでした。今後は、対象者を増やし、病態や術後管理の異なる対象者別に分析を行う必要があると考えます。

研究費の出処

兵庫医科大学大学院

用語解説

※1 フレイル 健康な状態と要介護状態の中間の段階を指します。

※2 サルコペニア 加齢による筋肉量の減少および筋力の低下のことを指します。

掲載誌

Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle (2023 JOURNAL IMPACT FACTOR : 9.4)

論文タイトル

Association of computed tomography‐derived muscle mass and quality with delayed acquisition independent

walking after cardiovascular surgery

論文著者名

清水 和也(リハビリテーション科学研究科 病態運動学分野(内部障害) 修士2 年)

松沢 良太(リハビリテーション科学研究科 講師)

玉木 彰(リハビリテーション科学研究科 教授) ほか

詳細︎▶︎https://www.hyo-med.ac.jp/files/20240628/7043bd58bd0d0c2fa8eb0197736531d4f239a475.pdf

注)プレスリリースで紹介している論文の多くは、単純論文による最新の実験や分析等の成果報告に過ぎました。 さらに研究や実験を進める必要があります。十分に配慮するようにしてください。

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