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明日から実践で使えるアプローチ 〜変形性膝関節症の屈曲制限〜

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膝関節屈曲時に『膝裏から外側が詰まったような感じで痛いです』との訴えをよく耳にするのではないでしょうか。日常生活において、階段を降りる、しゃがみ込む、正座をする、椅子に座る等膝を曲げる動作は頻回にあり、痛みなくそれらが行えることで生活満足度が格段に上がります。そのためには、あらかじめ屈曲時制限因子や治療方法を把握しておくことが必要です。今回は膝関節屈曲時の膝裏から外側の痛みを解消する方法として、筆者の経験上、改善反応が良好な施術方法【Aプレス】についてお伝えします。

1.膝関節屈曲運動の理解

効率よく屈曲するために、大腿骨の転がり運動と滑り運動(ロールバックモーション)そして脛骨内旋運動(medeial pivot movement)の複合運動が起こっている理解が必要です。まず60°付近まで転がり運動が、その後徐々に滑り運動へ移行し、後方移動が起こっています。特に大腿骨外側顆部は著名な後方移動が起こり、深屈曲では外側半月板は亜脱臼位になるほど後方移動が生じています。加えて、脛骨は屈曲に伴い20°~40°程度内旋するといわれています。これらを理解しておくと治療時の誘導方向が容易に想像できるようになります。

2.膝関節屈曲時に膝後面から外側の制限

屈曲制限が起きる要因として、ロールバックモーションやmedeial pivot movementが適切でないこと、またそれに伴い、周辺組織の制限因子となっている可能性が高いです。

具体的には、大腿骨のロールバックモーション時に脛骨の内旋不足から周辺組織の線維化により外側半月板後方移動の制限が起き、半月板が大腿骨と脛骨に挟み込まれてしまうインピンジメントが生じることで痛みが誘発され制限されていることがあります。
 また、膝関節の屈曲時の痛みに関与する組織として、表層組織、大腿四頭筋、膝蓋上嚢、膝蓋肢体、大腿骨前・膝窩の脂肪体、膝窩筋、大腿二頭筋、腓腹筋外側頭、外側半月板等の軟部組織が挙げられます。

『膝裏から外側が詰まったような感じで痛い』

この訴えの場合、膝窩の脂肪体、膝窩筋、大腿二頭筋、腓腹筋外側頭、外側半月板が制限因子となっている可能性が高いです。

3.屈曲制限を解消するAプレス

Aプレスとは、膝関節屈曲を行う際に他動可動域制限が出現している場合に徒手にて誘導しながら屈曲可動域を増大せていく方法です。

〈アプローチ方法〉

①患者様の膝窩にセラピストの下肢を挟んだ状態で屈曲を他動的に促していきます。その際、脛骨の内側関節面が回旋の中心となるように脛骨内旋を意識してセットしてください。

②徒手にて脛骨の内旋を誘導しながら、セラピストの下肢で脛骨の後方偏位を抑え、大腿骨のロールバックモーションを誘導します。

※この時に大腿二頭筋外側もしくは腓腹筋の外側頭を挟んでいる下肢や徒手にて圧迫を 加えながら実施することで、癒着部分のリリースとなり滑走性を良くしていきます。

また、膝窩組織の挟み込みを防止することができ、可動域の拡大を図ることが可能とな ります。

③患者様の反応と抵抗感を加味しながら、徐々に可動域の範囲を増大させていきます。

最初は、セラピストの下肢にて実施していますが、屈曲角度が増加してくると柔らかいボールやバスタオル、フェイスタオルというように挟む範囲を狭めていくことが工夫するポイントとなってきます。また、深屈曲が可能となってくると自身で正座をする際に膝窩にタオルを挟んでいくと上記と同様に屈曲がスムーズにできる手助けになるかと思います。

動画1:屈曲制限を解消するAプレス

〈心理面〉

膝関節屈曲制限が出現している患者様の多くが[膝屈曲=痛みが出る]という潜在意識が働いている可能性があります。潜在意識がある場合は疼痛を回避するため、防御性収縮がみられる場合もあります。潜在意識によるものに関しては、Aプレスはセラピストの下肢を利用することで大腿~下腿後面の支持基底面を保つことができ安定性を得られるため、患者様の屈曲に対する恐怖心も取り除きながら実施することが可能です。

また、声かけすることや鏡やスマホで撮影して視覚的にフィードバックを実施しながら行うと、屈曲角度が増大しているという患者様自身の認識ができ防御性収縮の抑制に繋がることを臨床上非常に多く経験します。

今回、膝後面から外側に屈曲制限がある方への有効なアプローチ方法についてご紹介しました。ただし、重要なのはあくまで屈曲制限がとれた先にある患者様の生活であると考えています。大前提として、階段、しゃがみ込み、歩行時等の動作に必要な膝関節の屈曲角度は把握した上でベッド上での治療を実施し、生活動作改善に繋げることを常に意識しています。生活に繋げることの一つのアプローチとして、明日からの治療に役立てていただければと思います。

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