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健康経営の最前線!産業保健で活躍する理学療法士の挑戦【長野保健医療大学 助教|佐藤剛章】

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現代の理学療法士は、患者の身体機能の回復にとどまらず、予防医療や健康経営といった多岐にわたる分野で活躍しています。特に近年では、産業保健や健康経営の分野において理学療法士の役割が注目されています。今回のインタビューでは、長野県で理学療法士として13年間臨床の現場で活躍し、現在は大学教員として産業保健分野に力を入れる佐藤さんに、これまでのキャリアと産業分野での活動についてお話を伺いました。

インタビューでは、佐藤さんがどのようなきっかけで理学療法士を目指し、どのようにしてキャリアを積んできたのか、さらに健康経営や産業保健分野での理学療法士の可能性についても詳しく語っていただきました。また、大学教員として学生たちに伝えている「行動力」の重要性や、臨床経験から得たチーム医療の大切さについても、興味深い視点を提供してくれています。

産業保健分野における理学療法士の役割や、佐藤さんのキャリアを通じて得た学びを、ぜひお楽しみください。

 

輪違
佐藤さんおはようございます。今日は佐藤さんが理学療法士になって、今大学の教員をやってますが、それまでにどういう道を歩んできたかお伺いできたらなと思います。

 

輪違
また、佐藤さんには10月15日に健康経営のお話をポストのセミナーでしていただく予定ですので、その話も最後の方でお聞きできればと思っています。

 

佐藤さん:
はい、よろしくお願いします。

 

輪違
早速なんですけど、佐藤さんは今大学の先生をされていると思いますが、理学療法士になろうと思ったきっかけを教えていただけますか?

 

佐藤さん:
はい、私が理学療法士になろうと思ったきっかけは、最初から理学療法士を目指していたわけではなく、高校の頃は理系科目が得意で、そのまま大学は工学部に進学しました。

 

佐藤さん:
そこで高齢者のために医療機器を作る仕事に就こうと思っていたんです。ですが、大学生活の中である人と出会い、人に興味を持つようになり、直接高齢者と関わる仕事がしたいと考え始めました。

 

佐藤さん:
大学4年生の時に母親から理学療法士という職業を紹介され、病院を見学したことで、この仕事を目指そうと決めました。

 

輪違
その後、専門学校に進まれたんですね?

 

佐藤さん:
はい、大学を卒業後、社会医学技術学院という夜間部の専門学校に通いながら、昼間は学校から紹介されたリハビリ助手の仕事で学費を稼いでいました。

 

佐藤さん:
家庭の事情もあり、自分で学費を負担する必要があったので、この選択をしました。

 

輪違
同級生も同じように社会人経験をしてから専門学校に通う方が多かったのですか?

 

佐藤さん:
はい、私のクラスメートの多くが社会人経験者でした。それまで学生としか関わったことがなかったので、社会経験を持つ人たちと一緒に学べたのは貴重な経験でした。

 

輪違
最初の就職先はどんなところだったのですか?

 

佐藤さん:
長野県の鹿教湯病院に就職しました。脳卒中の患者さんの治療をしたいという思いがあり、当時の参考書で「脳卒中最前線」で、この書籍といえば鹿教湯病院です。先輩方に相談してもここだろうということで選びました。

 

輪違
鹿教湯病院にはどのくらい勤めていたのですか?

 

佐藤さん:
13年間勤務していました。3年ほどで次のステップに進もうと考えていたのですが、もっと学びたいことがあり、そのまま長く勤めることになりました。

 

佐藤さん:
実際3年だけでは学びきれず、病院への恩ではないですが成果で還元したい、納得できる成果を出したいと思ったら13年かかりました。

 

輪違
13年間の間に大学院にも通われていたんですね?

 

佐藤さん:
はい、臨床8年目の34歳頃から大学院に通い始め、修士を取得し、その後博士号も取りました。

 

佐藤さん:
8年間臨床を続けながら、自分の研究テーマを見つけるまでの時間がかかり、ようやくテーマが見つかったタイミングで大学院に進学しました。

 

輪違
なぜ大学院に行こうと思ったのですか?

 

佐藤さん:
病院や周囲から求められていたわけではなく、理学療法士としてのキャリアの中で、学術的な活動や学位が必要だと感じていました。

 

佐藤さん:
ただ、具体的に何を研究すべきかが分からなかったので、タイミングを掴むまでに時間がかかりました。最終的に自分の研究テーマが明確になった時に進学を決めました。

 

輪違
キャリアをしっかりデザインして、着実に進めるタイプなんですね。

 

佐藤さん:
そうですね。年齢も遠回りしていることもあり、他の若い人たちと競っても勝てないと感じる部分がありました。だからこそ、自分にとって必要な武器を作るために学位取得が重要だと考えました。

 

輪違
4歳の差は大きいですか?

 

佐藤さん:
4年というのは大きいと感じることもあります。世の中の優秀な人たちは早くからキャリアを歩んでいるので、そういう人たちと戦うには武器が必要だと感じていました。

 

佐藤さん:
また、全国学会に参加した時、学術的な話が全く理解できなかったことが衝撃でした。それが大学院進学の大きなきっかけになりましたね。

 

輪違
それで博士号を取得し、病院を辞めてすぐ大学教員になったんですか?

 

佐藤さん:
はい、そうです。

 

輪違
教員のポジションはどうやって見つけたのですか?自分で応募するのですか?

 

佐藤さん:
私の場合、私立大学だったので、教員枠が空いていることを内部の先生から教えてもらいました。その後、私も教員になりたいという意志を伝えたところ、学部内で話を進めていただきました。

 

輪違
大学教員になってから、やりたいことがあったのですか?

 

佐藤さん:
はい、大学教員になった理由の一つは、産業保健分野での活動に力を入れたいという思いがありました。

 

佐藤さん:
病院勤務では時間が限られていたため、教員として自由に動ける時間を作り、その分野での活動を進めたいと考えていました。

 

輪違
産業とかの保健分野って最近では10年くらいの話ですよね。実際に求められていると感じますか?

 

佐藤さん:
そうですね。行政からの依頼も増えてきています。特に製造業の会社などで、腰痛や肩こりに困っている企業が多いんですが、何をしたらいいか分からないという場合が多いんです。

 

佐藤さん:
保健師さんも紹介先がわからないと悩んでいることがあり、需要はあると感じています。

 

輪違
誰にアクセスすればいいか分からない場合、佐藤さんが対応することになるんですね。例えば、腰痛体操や肩こりの体操、動作指導などを行うんですか?

 

佐藤さん:
そうですね。動作指導を通じて、肩こりや腰痛を悪化させる動作を改善するのが一つの入り口です。

 

輪違
そうすると、地域ごとにうまく売り込めば、そういう仕事も結構見つかりそうですね。

 

佐藤さん:
そうですね。私はゼロから始めたので、教員をしながら営業活動も行っていました。

 

佐藤さん:
大企業の保健師さんにアプローチし、問題を理学療法士が解決できることを提案しました。

 

佐藤さん:
その結果、産業保健総合支援センターの相談員の仕事もいただけたんです。営業すれば、仕事につながることを実感しました。

 

輪違
病院勤務だとそういう活動は難しいんですか?

 

佐藤さん:
そうですね。病院は受け身の仕事が多く、患者さんが来るのを待っている状態です。

 

佐藤さん:
でも、産業保健分野では企業側が自ら問題解決に動くことは少ないので、こちらから積極的に営業しないと仕事は来ません。この3年間でその重要性を実感しました。

 

輪違
やっぱり行動力が結構大事ってことですよね。そういうことを学生にも教えているんですか?

 

佐藤さん:
行動力は基本的にいつも教えています。産業分野に限らず、理学療法士として患者さんに関わる上でも行動することは重要ですし、PDCAを回さないと成果は出ませんからね。

 

輪違
佐藤さんはいろいろな経験をしてきているので、学生にも多様な相談に乗れそうですね。

 

佐藤さん:
そうですね。私は業績や頭の良さで勝負するタイプではなく、人とのつながりを大事にしてきました。

 

佐藤さん:
若い頃は他人の欠点ばかり見て、愚痴を言っていたこともありましたが、それでは生産性が上がらず、患者さんも良くならないと気づきました。

 

佐藤さん:
それ以来、人の良いところを見て、それを伝えるようにしています。この考え方は臨床でも教育でも大切にしています。

 

輪違
健康経営や健康増進の分野で理学療法士が求められていることも分かりましたし、佐藤さんが教員として大切にしていることも理解できました。

 

輪違
最後に、来月のセミナーで腰痛・転倒予防の介入について話していただきますが、どんなことが学べるのか教えていただけますか?

 

佐藤さん:
そうですね、一番伝えたいのは、理学療法士が健康経営や健康増進の文脈で何を求められているのかを知ってもらうことです。

 

佐藤さん:
医療機関での経験と産業分野での関わり方には違いがあるので、そのギャップを埋めることが重要です。

 

佐藤さん:
参加者が次の日から実践できるような学びを提供したいと考えています。

 

輪違
一番身近な人たちに手を差し伸べられることが、健康経営や健康増進の第一歩ですね。

 

佐藤さん:
そうですね。医療法人や病院でも健康経営を始めているところがあります。

 

佐藤さん:
看護師さんなどが腰痛やストレスに悩んでいることが多いので、組織的な目線で労働生産性の問題を解決していくことが大切です。

 

佐藤さん:
そこで経験を積んで、それを外に持ち出すこともできます。

 

輪違
その点が今回のセミナーで学べるわけですね。今日は貴重な時間をありがとうございました。

 

佐藤さん:
こちらこそ、ありがとうございました。

健康経営と理学療法

長野保健医療大学の佐藤剛章先生をお招きして「健康経営と理学療法 腰痛、転倒予防への支援」についてご講演いただきます。このセミナーでは、健康経営や予防領域に興味のある方が必要とされる基礎知識が学べます。また、臨床現場で日々担当する患者さんから勤労世代また健康経営などの予防リハにも使える内容となっております。今回は、予防領域でよく遭遇する課題である腰痛予防、転倒予防についてしっかり学んだことのない若手も安心して学べるように基本的な事項から講演していただきます。予防領域についての理解を深め、しっかり評価を学び効果的な支援方法を学習します。理学療法士、作業療法士、柔道整復師としてのスキルをさらに深めることができます。具体的な内容としては、実際の介入事例を知るのと同時にエビデンスが確立されたアプローチを習得します。

内容

・健康経営とは? リハ専門職は必要とされているのか?

・プレゼンティーズム、アブセンティーズム、ワークエンゲージメントとは?

・腰痛予防、転倒予防の基礎知識と介入方法

・実際の事例報告

講師:佐藤剛章

長野保健医療大学 保健科学部 助教

弘前大学大学院保健学研究科保健学専攻博 士後期課程(保健学博士)(2022)

健康経営エキスパートアドバイザー
大学教員の傍ら長野県内の企業に対し腰痛予防、産業保健総合支援センターや介護労働安定センターのなどの行政機関で転倒予防・腰痛予防の相談員と活動している。企業へ理学療法士等が介入することの重要性を初期から多方面へ伝えているパイオニアの一人である

概要

【日時】 10月15日(火) 20:00~22:00
【参加費】無料
【参加方法】ZOOM(オンライン会議室)にて行います。

申込▶︎https://wellbeing-physio.peatix.com/

健康経営の最前線!産業保健で活躍する理学療法士の挑戦【長野保健医療大学 助教|佐藤剛章】

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