皆さん、こんにちは。火曜日担当の藤本裕汰です。本日もよろしくお願い致します。本日は痙縮について解説していきます。
痙縮
痙縮は脳卒中や脊髄損傷後に生じる症状であり、臨床上でも大きな問題になります。痙縮は上位運動ニューロンの障害により、運動速度依存性の伸張反射の亢進を呈し、腱反射亢進を伴う運動障害と定義されています1)。重要な要素としては①上位運動ニューロンの障害、②速度依存性の伸張反射の亢進、③腱反射亢進になります。
脳卒中片麻痺の方の痙縮の有病率に関しては4~42.6%と報告されており2)、非常に幅広いです。また病期毎に有病率に変化が見られ、急性期2~27%、亜急性期19~27%、生活期17~43%と病期により増加することが分かります2)。そのため、痙縮が脳卒中の発症により生じるということではなく、発症以外の要因も影響していると考えることができます。
痙縮の機序に関しては以下のようなまとめることが出来ます。中枢神経系(CNS)の損傷により麻痺や筋の過活動が生じます。その過活動が痙縮に繋がると考えられています。プラスして麻痺による不動や不使用により拘縮し、それが痙縮を助長するということも考えられています。これが病期により痙縮が増加する理由であると考えられます。
そのため、痙縮の要因は反射性要因と非反射性要因の2つに分けられると考えられています。反射性要因は神経により、生じる痙縮になります。非反射性要因は菌の柔軟性など構造的な要因であると考えられています。
痙縮と運動障害
機能障害と痙縮に関しては相関すると報告されており、機能障害が重度なほど痙縮に繋がると考えられています2)。機能障害のみでなく、運動機能にも関連するため論文も含めて紹介していきます。
底屈筋の痙縮は歩行速度・歩行耐久性には相関しないと報告されています4)。他の研究ではTUGの速さと相関したとの報告もされています5)。比較的に関係ないとの報告が多いため、痙縮の程度が歩行に与える影響は少ないと考えられます。
また上肢に関してはリーチとの相関が報告されています5)。痙縮の強さがリーチ時の肩関節・肘関節の可動域に負の相関があるとされています。またリーチ時に体幹前方傾斜が強くなるとされています。
痙縮の評価
痙縮の評価に関してはMAS(Modified Ashworth Scale)とMTS(Modified Tardieu scale)が挙げられます。
MASは0,1,1+,2,3,4の6段階評価であり、痙縮の評価になります。MASの原本評価マニュアルでは被検者の肢位は腰掛け座位で実施し、下肢の場合は背臥位でも可能としています。どちらの姿勢で行うことも可能ですが評価としては一貫性を持って行うことが重要になります。評価としては3回実施し、最も低い数値を採用します。
MTSはMASと同様の評価ですが実施速度に定義があることや反射性・非反射性に分けて考えることができることが特徴になります。筋の伸張速度や反応の質に関しては以下のようにまとめられます。
MTSの評価の中ではV3のできるだけ早い速度で伸張した際に最初に引っかかる角度がR1、V1のできるだけゆっくりの速度で伸張した角度をR2と設定します。このR2−R1が大きい場合は反射性の要素が大きいと判断することが出来ます。R2-R1が小さい場合は非反射性の要素が大きくなると判断することができます。
痙縮に対する介入
ここからは痙縮に対する介入について解説していきます。脳卒中ガイドライン2021では以下のように報告されており、臨床の中で使用しやすい内容は物理療法が多いと考えています。
ここからは私が臨床の中で実践する方法をお伝えします。私は臨床としてはMTSを評価して、反射性要素と非反射性要素、どちらの影響が大きいか評価します。反射要素が大きい場合には電気刺激療法・振動刺激療法を使用していきます。電機刺激療法や振動刺激療法のポイントについては以前も記事に記載しているのでそちらを参考にしてください。
非反射要素が大きい場合にはストレッチやリリースを中心に行います。自主トレでストレッチを指導したり、マッサージガンの使用を促すなど実施しています。
本日は痙縮について解説しました。少しでも参考にしていただけたら幸いです。
【参考文献】
1) Lance, J. W.: Symposium synopsis, In: Feldman, R. G., Young, R. R. and Koella, W. P. (Eds):Spasticity: disordered motor control, 485-494, Year Book Medical Chicago, (1980).
2) Wissel et al :Toward an epidemiology of post-stroke spasticity. Neurology, 13-19, 2013
3) Gracies JM:Pathophysiology of spastic paresis. Il: Emergence of muscle overactivity. Muscle Nerve 31(5):552-571,2005
4)Shamay S Ng,et al: Contribution of ankle dorsiflexor strength to walking endurance in people with spastic hemiplegia after stroke. Arch Phys Med Rehabil 93(6):1046-1051,2012
5)Rech KD,et al:Fugl-Meyer Assessment Scores Are Related With Kinematic Measures in People with Chronic Hemiparesis after Stroke. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2020 Jan;29(1):104463.
6)竹内伸行 他: Modified Tardieu scaleの臨床的有用性の検討・脳血管片麻痺患者における足関節底屈筋の評価 理学療法学 33(2):53-61,2006
7)日本脳卒中学会:脳卒中ガイドライン2021