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リハビリテーションと栄養管理の重要性:症例を通じて考える臨床の課題と実践

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現代日本において、高齢化社会が進行し、リハビリテーションと栄養管理が重要な課題となっています。特にリハビリテーションの効果を最大限に引き出すためには、栄養状態が大きな役割を果たします。本記事では、リハビリ職種に向けて、臨床現場での実際と課題を症例を通じて紹介し、リハビリと栄養の連携の重要性を考察します。

高齢化社会におけるリハビリの現状

日本の総人口は1億2111万人、そのうち約30%が高齢者です。この状況下で、認知症や脳血管疾患、衰弱、骨折・転倒といった要因で、介護やリハビリを必要とする高齢者が増加しています。高齢者がリハビリを必要とする原因は多様であり、特定の疾患に限らず、徐々にADL(基本的日常生活動作)が低下していくケースも多いです。

リハビリと栄養管理の連携の必要性

リハビリテーションが効果的であるためには、栄養状態が大きく関与します。リハビリを行っても、運動機能や筋力が思うように改善しない場合、その背景には栄養状態の問題やサルコペニア(筋肉量・筋力の低下)などが関与していることがしばしば見られます。

リハビリを行う患者の多くは、入院中に活動量が低下し、体力が落ちていることがよくあります。これに加えて、手術や疾患治療に伴う体力の消耗、栄養不良が発生することが多いため、入院環境そのものが回復を妨げる要因にもなり得ます。特に高齢者の場合、入院前からすでに衰弱していることもあり、さらに入院生活が長引くことで、リハビリが進展しにくくなる可能性が高まります​。

栄養管理とリハビリテーションを効果的に連携させるためには、各職種が密に連携し、三位一体でのアプローチが必要です。2023年に発表された「骨太方針」では、リハビリテーション、栄養管理、口腔ケアの重要性が強調され、リハビリと栄養、口腔ケアの連携が新たな加算要件として導入されました。具体的には、入院時における栄養状態の評価が初期段階で行われ、栄養士、看護師、理学療法士が協力して栄養プランを立てることが重要です。

サルコペニアとフレイルの関与

サルコペニアやフレイルは、リハビリの成果を左右する重要な要因です。サルコペニアは、筋肉量と筋力の低下を特徴とし、2016年には国際疾病分類の一部として正式に登録されました。フレイルもまた、慢性的な低栄養や活動量の低下が引き金となる、身体的・精神的脆弱性を指します。最近の研究では、サルコペニアやフレイルの評価に関して、栄養状態、身体活動、口腔機能が密接に関わっていることが示されています。サルコペニアは、加齢や活動低下、疾患によって筋肉量が減少し、筋力が低下する状態を指します。フレイルは、身体的、精神的、社会的な脆弱性が重なり、身体機能が低下していく状態であり、高齢者に特に多く見られます。これらの問題は、リハビリを進める上で重要な障害となり得るため、しっかりと評価し、対策を講じる必要があります。

低栄養のリスクとその対策

低栄養は、特に高齢者や慢性疾患を持つ患者においてリハビリの進展を阻害する大きな要因です。低栄養のリスク要因として、侵襲(手術や外傷)、悪液質(がんやCOPDなどの慢性疾患)、飢餓(食事摂取の不足)の3つが挙げられます。これらの要因が重なり、エネルギー消費量がエネルギー摂取量を上回ると、低栄養の状態に陥り、リハビリの効果が減少します​。

低栄養がもたらす影響は、単に体重の減少にとどまらず、筋肉量の減少や免疫機能の低下など、患者の全体的な健康状態に深刻な影響を与えます。そのため、リハビリを行う際には、栄養管理を同時に行い、必要に応じて栄養補給を積極的に行うことが重要です。

症例を通じた実践的なアプローチ

1つの症例では、80代の女性が大腿骨の転子部を骨折し、手術後にリハビリを開始しましたが、軽度の認知症と低栄養状態のためにリハビリが思うように進みませんでした。そこで、多職種チームによる栄養支援が行われ、食事形態の工夫や栄養補助食品の提供が行われました。1ヶ月のリハビリを経て、歩行機能が改善し、杖を使いながらも自立歩行が可能になりました。この症例は、リハビリと栄養支援の連携が、患者の回復にどれほど重要であるかを示しています​。

別の症例では、肺疾患を持つ患者が手術後のリハビリを受け、当初は酸素を必要とする状態でした。しかし、タンパク質を強化した栄養管理が行われ、最終的には杖なしでの歩行が可能になりました。このように、栄養管理が適切に行われることで、患者の体力や筋力が向上し、リハビリの効果が最大化されることが分かります​。

まとめ

リハビリテーションと栄養管理は、患者の機能回復を促進するために欠かせない要素です。特に高齢者や長期入院患者においては、リハビリの進展を妨げる要因として、低栄養やサルコペニア、フレイルが挙げられます。これらの問題に対処するためには、リハビリ専門職と栄養管理専門職、さらには口腔ケアを含めた多職種連携が不可欠です。

リハビリ職種としては、対象者の栄養状態を常に評価し、必要に応じて栄養支援を行うことで、より質の高いリハビリテーションを提供することが可能になります。

▶︎▷対象者をどう評価し支援していくか~リハ栄養の視点から~

リハビリテーションと栄養管理の重要性:症例を通じて考える臨床の課題と実践

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