>>相澤先生による無料セミナー<<
糖尿病は、現代社会において多くの人が向き合う必要のある課題です。その治療には、薬物療法や食事療法だけでなく、運動療法や生活習慣の改善が欠かせません。しかしながら、運動療法を専門に指導する理学療法士がこの分野で活躍する場は、まだ限られています。 今回のインタビューでは、理学療法士として糖尿病の一次予防・二次予防に取り組む相澤郁也先生にお話を伺いました。広島でのキャリアスタートから現在のクリニックに至るまでの経験、糖尿病治療に対する哲学、そして患者さんとの関わり方について詳しく語っていただきました。 相澤先生が語る「やるべきことをやるだけ」というキャリア哲学は、多くの医療従事者にとって大きな示唆を与えるものです。糖尿病治療の未来に挑む相澤先生の思いを、ぜひご覧ください。
プロフィール
【学歴】
2015:健康科学大学 健康科学部 理学療法学科(卒業)
2022:広島大学 大学院医歯薬保健学研究科 保健学専攻 博士課程前期(修了)
【職歴】
2015/4~2020/3:国家公務員共済組合連合会 吉島病院 リハビリテーション科
2020/4~現在に至る:医療法人社団 三咲内科クリニック
【社会活動】
日本糖尿病理学療法学会 広報委員会 委員
全国臨床糖尿病医会 関東・北日本コメディカルの会 世話人
【資格】
2015:理学療法士免許
2016:3学会合同呼吸療法認定士
2019:呼吸認定理学療法士
2019:呼吸ケア指導士(初級)
2019:日本糖尿病療養指導士
2019:代謝認定理学療法士
2022:千葉県糖尿病療養指導士
2022:修士(保健学)
【競争的資金】
2021年度 日本糖尿病協会メディカルスタッフ育成研究助成
『基本的日常生活動作能力に着目した高齢者糖尿病患者に対する運動療法効果の検討』
2021年度 公益財団法人太陽生命厚生財団 調査研究助成
『高齢生活習慣病患者に対するオンライン集団運動療法の効果および安全性の検討』
医療法人社団三咲内科クリニックの相澤郁也と申します。理学療法士として、糖尿病患者さんに対して運動療法を提供しています。
一般的には、理学療法士はADL(日常生活動作)に障害を抱える方を対象にリハビリを行うことが多いですが、私はADLが自立している糖尿病患者さんを対象に運動療法を指導するという形で活動しています。
ありがとうございます。糖尿病については後ほど詳しく伺いますが、そもそも理学療法士を目指されたきっかけは何だったのでしょうか?
単純な理由なんです。親から「こういう仕事がある」と紹介されたのがきっかけです。それまで勉強はほとんどしておらず、高校までずっと野球一筋でした。ただ、スポーツに関わる仕事だと感じ、なんとなく理学療法士を選んだという感じです。
野球部っぽいですね笑。その後、どのようにキャリアを築いてこられたのですか?
大学を卒業して最初に就職したのが、いきなり山梨から広島への異動だったんです。その話をする前に、大学時代のことを少しお話ししますね。
大学2年生のときに実習を終えた後、そこから勉強に本気で取り組むようになりました。それまではあまり勉強していなかったのですが、特に内部障害の勉強がすごく楽しくて、どんどんのめり込んでいきました。
その結果、いわゆる「ダニング=クルーガー効果」の“バカの山”に登頂してしまった感じです(笑)。山頂に立った気分で、「普通の理学療法士になるなんてもったいない」と思ってしまったんですね。それで、当時のゼミの先生に「何でもしますから、とにかく偉くしてください」とお願いしました。
横軸に知識・経験、縦軸に自信を設定し、知識・経験の蓄積とともに自己評価がどのように変化していくかを示しています。初めは知識・経験が少ないにもかかわらず自信が高い「無知の絶頂」の状態から始まり、知識・経験の蓄積に伴って一旦自信が低下する「谷」の状態を経て、最終的に知識・経験と自信がバランスを保つ「熟練」の状態に至ることを表現しています。このダニング=クルーガー効果は、学習プロセスにおける人間の自己評価の変化を表す重要なモデルとなっています。
すると先生が、「内部障害の分野なら心臓でも呼吸でも糖尿病でも、どの分野でも第一人者を紹介してやれるぞ」と言ってくれたんです。そのとき、「糖尿病をやりたい」と即答して、先生から紹介していただいたのが広島の先生でした。それがきっかけで、まず広島の病院に就職することになりました。
その後、広島大学大学院にも進み、研究を続けました。そして5年ほど前から、現在のクリニックで本格的に糖尿病に取り組むようになったという経緯です。
全くなかったです。広島に行くことが決まってから親に伝えたくらいですね。
はい、3年生の実習は広島でした。2年生の時に「偉くなりたい」と先生に伝えた際、「それなら広島に行け」と言われて、そこでの出会いが広島への就職につながりました。
その時点で、内部障害の分野が将来的にチャンスが広いと考えたのですか?
そうです。でも内部障害を選んだのは、当時の勉強の楽しさと、先生のアドバイスがあったからです。
「偉くしてほしい」という表現は少し他力本願に聞こえるのですが、どうしてそう思ったのですか?
当時は大学2年ということもあり、偉い人に話を聞けば、偉くなる道を教えてくれると合理的に感じていました。
合理的な選択をされたわけですね。その後、広島ではどのような環境で働かれたのですか?
最初は吉島病院という病院に就職しました。呼吸リハビリテーションを主に担当しつつ、糖尿病の患者さんとも関わっていました。その後、広島大学大学院に進み、研究を進めました。現在のクリニックに移ったのは約4年半前で、ここから糖尿病に本格的に取り組むようになりました。
最初は呼吸リハだったんですね。なんかすごい面白いキャリアだなと思っていて、相澤先生の中で20代の広島での経験から千葉に移ってくるまで、いろいろなことがあったと思うんですが、キャリアを作っていく上で大事にしていることはありますか?
キャリアを作る上で大事にしていることは、シンプルに「やるべきことをやる」ということです。
僕自身、今まで「やらなきゃいけないこと」だけをやってきた気がします。その「やらなきゃいけないこと」をやるために、まず自分で環境を整えることから始めています。
そうしないと自分では動けない人間なので(笑)。だから、最初から「やるべきことをやれる環境」を作るよう心がけています。
確かに、自分で動ける環境を整えることが大切ですよね。では、現在のクリニックではどのような患者さんと関わっているのですか?
糖尿病の一次予防(発症予防)や二次予防(合併症予防)、三次予防(合併症の増悪予防)でも足の切断や透析の状態に至っていない方達を主に担当しています。
一次予防では、市の検診で引っかかった方や、耐糖能異常(糖尿病予備軍)の段階で発見された方々が中心です。糖尿病は初期症状が少ないため、検診や別の病気の治療をきっかけに診断されるケースが多いです。
発症予防の患者さんは、どのような経緯で病院に来られるのですか?
まず市の検診で引っかかった方が多いです。それ以外では、高血圧や脂質異常症などの診断で内科を受診された際に、検査で「糖尿病の疑いがある」とわかったケースもあります。
発症予防の人たちは、どのような症状があると「糖尿病かもしれない」と感じて来院されるのでしょうか?
これはすごく重要な点です。糖尿病というのは基本的に強い症状があまり出ません。
そのため、気づかれないことが多く、「隠れ糖尿病」と呼ばれる人たちが非常に多いのが現状です。現在、私たちが診ている発症予防の患者さんは、たまたま検査で気づいたケースがほとんどです。
じゃあ、自分で「何かおかしいな」と感じて来院する方は少ないんですね?
そうですね。そういう方ももちろんいらっしゃいますが、強い症状が出てから来るというケースはあまり多くないと思います。
確かに、それは納得できます。やっぱり検診を受けた方がいいということですね。
その通りです。特に、現在診ている患者さんは、健康意識が高い方が多い印象です。検診に積極的に行く方々が多いので、そういった方たちが発見されやすいのだと思います。
なるほど、検診を受けている人たちだから、健康意識が高く、話をしっかり聞いて治療に取り組んでくれる方が多そうですね。
糖質制限の話題が一時期話題になりましたが、糖尿病における糖質制限についてはどうお考えですか?
糖尿病界隈では、糖質制限の話題は必ず議論になりますね。ただ、どの先生も糖質制限そのものを積極的に勧めることはありません。長期的な安全性についてのエビデンスが確立されていないためです。確かに、血糖値は急激には上がらないので、血糖値自体は良くなると思います。
なるほど。でも、糖尿病の方って血糖値をしっかり管理しているイメージがあるので、それで症状が安定するんじゃないかと思うんですが、そういうわけではないんですね?
糖尿病治療の目的は、糖尿病のない者と同様の寿命とQOLを確保することです。そのため、患者さんには食事を楽しんでいただきつつ、糖質を「制限」ではなく「調整」するよう指導しています。
うちのスタッフは必ず患者さんに、「糖尿病は血糖値を良くするために生きるのではなく、自分が良い生活を送るために治療してほしい」ということを伝えるようにしています。
この考えを共有することで、治療の目的を患者さん自身が理解しやすくなると思います。
すごいイメージが湧いてきたんですけど、その中で相澤先生は具体的にどのようなことをされているんですか?
糖尿病の治療支援において、運動療法だけでなく生活全体のマネジメントが必要だと考えています。
私自身、運動療法を提供するだけでなく、他職種と比べて患者さんと関わる時間が長い分、薬の情報収集や患者さんの生活習慣の把握を行っています。
たとえば、薬が新しく処方された場合、副作用がないかを確認したり、食事について栄養士さんと話し合った内容がきちんと守られているかをチェックします。
さらに、間食や摂取カロリー、タンパク質の摂取状況などを確認し、それらの情報を他職種に共有することで、全体の連携を図っています。
なるほど、理学療法士が「柔軟剤」的な役割を果たしている感じですね。最近みたNetflixのドラマで主人公も「柔軟剤のような人になりたい」と言ってました笑
そう言っていただけると嬉しいです。実際、糖尿病治療においては薬や食事がメインですが、運動に関わる部分は少ないのが現状です。そこに理学療法士が関与することで、運動と薬、食事をつなぐ橋渡しの役割が果たせるのではないかと考えています。
理学療法士がそのような役割を果たすのは非常に重要ですね。
ただ、現状では点数が取れないことが経営的に難しい点もあると思うのですが、そのあたりを改善するにはどうしたらいいとお考えですか?
大きく分けて二つの解決策があると思います。一つは診療報酬を得られるよう、しっかりとしたエビデンスを構築すること。
もう一つは自費診療で価値を提供できる体制を作ることです。私自身、診療報酬を得るための研究を進めていますが、自費診療でも患者さんに納得いただける形でサービスを提供することが必要だと考えています。
実は、3月からクリニックの移転に伴い、自費診療の新しい取り組みも進めているところです。
具体的にはどのような自費診療を計画されているんですか?
詳しいことはまだ言えないのですが笑、パーソナルトレーニングのような形で理学療法士が関わるプログラムも検討しています。重要なのは、私が関わることで直接的なメリットを生むだけでなく、他職種と連携して患者さんにさらなる価値を提供できる仕組みを作ることだと思っています。
診療報酬が取れるようになれば理想的ですが、現実的には難しい部分もありますよね。そのためには自費診療を取り入れるハイブリッドな形が重要ですね。
その通りです。診療報酬化を目指しつつ、自費診療での可能性を広げる。この二つを進めることで、理学療法士が糖尿病治療に貢献する場を増やしていければと思っています。
わかりました。ありがとうございます。糖尿病のマネジメントについては、POSTの無料セミナーで1月にお話しいただける予定ですよね。その際に情報をアップしますので、皆さんにぜひ受講してもらいたいと思います。
そろそろ伏線を回収したいのですが、「偉くなりたい」とおっしゃっていましたよね。その目標については、順調ですか?
笑 大学2年生の頃に「偉くなりたい」と言ったのですが、その時の基準が、「名前を検索したら一番最初のページが自分の名前で埋まるくらいになること」だと思っていました。
でも実際には、それって偉くなくてもできることだったんですよね。だから、今となっては「偉くなる」という基準がどこにあるのか、分からなくなっているんです。
確かに、糖尿病の分野で成果を上げていくとなると、例えば野村卓生先生のような存在が目標になりそうですが…なんとなく今、この話になるとトーンが下がっているように感じますね笑。
そうなんですよ笑。大学2年生の頃は、ただ「偉くなりたい」という気持ちだけが強かったんですが、今ではいろんな経験を積む中でプライドというものがすっかり削られてきて、もうまん丸な状態です。
なるほど。まん丸になった状態というのは、「偉くなる」という基準が変わってきたということなんですね。今は糖尿病というカテゴリーに取り組みながら、少しずつその分野を広げていこうとされているという感じでしょうか?
そうですね。自分が偉くなるというよりは、いろいろ発信していきたいという思いのほうが強いですね。
発信を続けていただけると、普通に病院でリハビリをされている方々にも良い影響が広がると思います。
糖尿病の患者さんは多いでしょうし、既往歴として書かれていても、主疾患が別だと糖尿病をしっかり見ない場合もあるでしょう。その点が変わっていくと良いですよね。
おっしゃる通りです。糖尿病に本格的に取り組むようになってから、以前の病院で糖尿病を持つ患者さんにもっとこういう風に関われば良かったな、と思うことがたくさんあります。
今度、POSTさんでのセミナーで、そのあたりについてお話しするつもりです。
本日は非常に興味深いお話をありがとうございました。最後に何か宣伝などありますか?
ありがとうございます。第11回 JSPTDM学術大会が来年の12月に千葉県幕張で開催されます。
私は広報部長を務めております。まだ非公開ですが、非常に魅力的なプログラムが企画されていますので、ぜひご参加ください。
今回のインタビューでは、理学療法士が糖尿病治療の現場でどのように貢献できるのか、その具体的な役割について深く知ることができました。相澤先生のお話からは、患者さん一人ひとりに寄り添いながら、生活全体を支援するという理学療法士ならではの視点が見えてきました。 また、キャリアを切り開いていく過程で「やるべきことをやる」というシンプルな原則を貫きつつも、そのための環境を自ら整える姿勢には強く感銘を受けました。 医療の現場においては、一つの専門分野だけでなく、多職種との連携がますます重要になっています。その中で理学療法士が果たすべき役割は何なのか。この問いに対して相澤先生が示す方向性は、きっと多くの医療従事者にとって一つの道標となるでしょう。 相澤先生、貴重なお話をありがとうございました!
糖尿病ケアの新常識:実践力を磨く運動療法と支援の最新知識
糖尿病治療と支援に関する知識を深め、現場での実践力を高めるセミナーを開催します!糖尿病は現代社会において多くの人々が直面する課題であり、その適切なマネジメントは健康と生活の質を守る鍵となります。本セミナーでは、糖尿病の基礎から最新の治療法、さらにリハビリテーション現場での支援方法までを体系的に学びます。特に運動療法に焦点を当て、実践的なアプローチを提供する内容となっています。医療や福祉の現場に携わる皆さまにとって、有益なスキルを習得する貴重な機会です。ぜひご参加ください!
プログラム
1.糖尿病の基礎
「糖尿病とは何か」を基礎から解説し、糖尿病が身体的および心理的に及ぼす影響を理解することで、糖尿病治療および治療支援の重要性について学びます。
2.糖尿病治療と治療支援
糖尿病治療の三本柱である「食事療法」「薬物療法」「運動療法」を体系的に解説し、とくに運動療法に焦点を当てながら、治療支援に必要な実践的な知識を提供します。
3.臨床で役立つ糖尿病治療支援の考え方と実践
リハビリテーションの現場で、既往歴として糖尿病を持つ患者に対応する際に必要となる治療支援のポイントを学びます。糖尿病のマネジメントにおける実践的な知識を深め、リハビリテーションの現場で役立つスキルを身につける絶好の機会です。皆さまのご参加をお待ちしております。
セミナー概要
日時:2025年1月23日(木)20時~21時30分
会場:オンライン
対象:理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、その他リハビリテーションに携わる専門職
参加費:無料
アーカイブなし:プレミアム会員のみ視聴可能
お申し込み方法:https://forms.gle/ikYno8LtwHtNuGaf