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膝関節治療を成功に導く膝蓋骨の動態評価と実践

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この記事で学べること

・膝蓋骨の基本的な動きと臨床的な重要性
・膝蓋骨の動きに関連する評価手順
・膝蓋骨の可動域制限を引き起こす要因
・治療における実践的なアプローチ

膝関節の屈曲・伸展は、日常生活動作やスポーツに欠かせない重要な動作です。この動きは、大腿脛骨関節(FT関節)と膝蓋大腿関節(PF関節)の協調によって成り立っています。膝の痛みを訴える患者様の評価において、FT関節だけでなくPF関節の評価も欠かせません。特に、膝蓋骨の動きがスムーズかどうかを確認することで、効果的な治療戦略が立てられ、臨床実践の質を向上させることや患者様の生活の質をあげることに繋がります。本記事では、膝蓋骨の動きとその評価方法、臨床応用について解説します。

1.膝蓋骨の動きと臨床への応用

膝蓋骨は、単なる上下動(挙上・下制)だけでなく、複雑な動きを持っています。この動きは、膝関節の安定性や効率的な力伝達において重要な役割を果たします。その中でも以下の4つの動きが膝関節の円滑な運動に寄与しています:

Frontal rotation(回旋): 前額面上の外旋と内旋の動き
Coronary rotation(回旋): 水平面上の内側傾斜と外側傾斜の動き
Glide(滑り): 水平面上の内外側への移動
Tilt(傾き): 矢状面での前後傾

これらの動きの中で特に臨床的に重要なのは、膝関節の屈曲・伸展に伴うFrontal rotationとCoronary rotationです。これらは膝蓋骨の軌跡を制御し、PF関節の安定性と大腿四頭筋の効率的な働きに大きく関わります。

2.Frontal rotation(前額面上の回旋)の重要性

Frontal rotationとは、膝関節の屈曲に伴う膝蓋骨の外旋動作を指します。この動きは膝蓋骨が大腿骨顆間窩に適切に収まるために重要です。膝関節屈曲25°~130°時、膝蓋骨は最大約7°外旋します。この外旋は、大腿骨外側顆の形状や内外側膝蓋支帯の緊張の差により発生します。この外旋が不足すると、膝蓋骨が大腿骨顆間溝に適切に収まらず、PF関節の不安定性や疼痛を引き起こす可能性があります。特に膝蓋大腿関節痛症候群(PFPS)では、このFrontal rotationの異常がよく見られます。

3.Coronary rotation(水平面上の回旋)の重要性

Coronary rotarionとは、水平面上の膝蓋骨内外旋の動きです。膝関節屈曲25°~115°時膝蓋骨最大約11°内旋します。これは大腿骨顆間溝の形状と内側膝蓋支帯の緊張が関与します。内側傾斜は膝関節の安定性を高めるだけでなく、大腿四頭筋の力を効率的に伝える役割を果たします。この傾斜が不足すると、膝蓋骨への不均一な荷重がかかり、軟骨損傷のリスクが高まります。

4.膝蓋骨の可動性とその評価

膝蓋骨の動きを評価する際には、以下のステップを踏むことが推奨されます。

観察
膝蓋骨の静止位置や傾きを確認します。

徒手評価
膝蓋骨を上方、下方、内方、外方へ動かし、動きのスムーズさや制限を評価します。特にFrontal rotationCoronary rotationを重点的に確認します。

5.膝蓋骨の可動域制限の要因

要因

詳細と臨床例

大腿四頭筋の柔軟性低下

中間広筋の短縮が膝蓋骨の上方への牽引力を増強し、可動域制限を引き起こします。
例えば、大腿四頭筋が過度に緊張している患者では、膝の屈曲時に膝蓋骨が動きにくくなることがあり、膝前面に違和感や痛みを訴えることが一般的です。

膝蓋支帯の拘縮

内側および外側膝蓋支帯の拘縮がFrontal rotationとCoronary rotationを制限します。
例えば、長時間の不動状態後に膝を動かすと、膝蓋骨の動きがぎこちなく感じられる患者が見られることがあります。

膝蓋上嚢の滑走不全

膝蓋骨の下方移動を阻害します。膝の術後や関節炎を経験した患者では、膝蓋骨の下方滑りが制限され、しゃがみ動作に支障が出ることがあります。

周囲軟部組織の短縮

大腿筋膜張筋、腸脛靭帯、関節包などの短縮も膝蓋骨の動きを制限します。例えば、ランナーのように腸脛靭帯が硬くなりやすい人は、膝外側に痛みを感じるケースがあります。

 

6.治療の実践

膝蓋骨の動きを正確に評価し、Frontal rotationとCoronary rotationの異常を評価することでPFPSや膝蓋骨不安定症の早期発見が可能になります。患者様に対しても適切な治療を迅速に提供できます。そして、膝蓋骨の外旋を促すモビライゼーションや内側広筋の選択的強化を行うことで、膝蓋骨のトラッキングを改善できます。

膝蓋骨の動きの理解は、臨床評価と治療の質を向上させる重要な鍵です。特にFrontal rotationCoronary rotationを正確に評価することで、診断精度と治療効果が向上します。この知識を活用し、患者様の生活の質を高めることに役立てていただければ幸いです。

また、今回の記事を基に簡潔に「膝蓋骨の動きについて」の動画を公開いたしました。

併せてご覧ください。動画内にエクササイズの映像も含まれていますので、ぜひご参考ください。

膝関節治療を成功に導く膝蓋骨の動態評価と実践

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