本記事は、2025年5月22日に開催された「令和7年度 第2回 入院・外来医療等の調査・評価分科会」の内容を2部構成でまとめたうちの第2部です。本章では、医療提供体制の全体再設計と「新たな地域医療構想の取りまとめ」に焦点を当て、PT・OT・STをはじめとしたリハ職種に求められる新たな役割と制度的背景を分析します。
地域医療構想の再整理:「治す医療」から「治し支える医療」へ
域医療構想の理念と現実のギャップに対し、再設計が必要とされている旨が明記されました。
構想のキーワードは、
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「高齢者救急の急増への対応」
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「地域の急性期機能の再配置」
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「入院初期からのリハビリ・退院調整」
とされており、特にPT・OT・STには、発症直後からの在宅復帰支援・生活期ケアへの橋渡しが求められる構造となっています。
機能別の医療機関把握と都道府県主導の報告制度
都道府県が医療機関から「現に有する機能」「将来担う意向」を報告させる制度(いわゆる医療機能報告制度)の強化が提案されました。
これにより、地域のリハ職配置状況や提供体制が自治体単位で可視化・調整対象となり、以下のような展開が想定されます。
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回復期・慢性期リハの提供地域の再編
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中小規模病院における人材配置の誘導
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在宅・生活期リハビリとの連携構造の明示化
急性期医療の在院日数短縮と初期リハ強化
急性期一般入院料1の平均在院日数が18日から16日へと短縮されたことで、入院初日からのリハ介入が常態化しています。これにより、入院初期の評価・リスク把握・ADL維持が、リハ職に求められる重要な役割となっています。
ICU機能分化と遠隔医療の制度整備
特定集中治療室管理料5・6の届出が増加し、ICU機能の段階的整理が進む中で、医師配置要件の緩和が進んでいます。今後は重症患者への対応力を保ちつつ、医師の働き方改革との両立が課題となっており、チーム医療全体の最適化が求められる局面にあります。また、遠隔ICU支援加算は低調な届出率となっており、設備投資の壁や対象地域の制限が課題とされ、今後の改定による見直しの余地が示されています。
多職種連携の前提条件としての薬剤師・栄養職の不足
眞野成康委員(東北大学病院 教授・薬剤部長)は「薬剤師や管理栄養士の配置が難しい施設が多く、連携体制の確保が課題」と指摘しました。PT・OT・STに対しても、退院支援の文脈における多職種間の連携力や情報共有の重要性が一層高まる可能性があります。
第2部まとめ:地域医療構想の再設計とリハ職の視座
本章では、「新たな地域医療構想の取りまとめ」を中心に、医療提供体制の再構築と制度設計に伴うPT・OT・STの関与可能性について整理しました。
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入院初期からのリハ提供と退院支援の制度的強化
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地域医療の再編と都道府県による医療機能把握制度の設計
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チーム医療を支える人的資源の制約と、それに伴う連携体制への注目
これらの論点は、「治し支える医療」「地域完結型医療」の方向性とともに、リハ職種が地域の医療提供体制の中でどう機能していくかを問う基盤となります。現時点で明確な制度変更の対象とはなっていない項目についても、今後の政策動向に注視する必要があります。
▶運動器リハ6単位制限・加算届出9%…リハ職を取り巻く制度の今と課題
資料▶︎https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212500_00271.html