22日に開催された「令和7年度 第2回 入院・外来医療等の調査・評価分科会」の内容を2部構成でまとめたうちの第1部です。リハビリテーション専門職(PT・OT・ST)に直接関わる改定点や実務に影響する要素を中心に整理しています。
▶ 第1回分科会の内容はこちら:2025年度診療報酬調査の焦点|リハビリ職の夜間配置など変化する役割に注目
運動器リハ、6単位超えの効果に疑問符
令和6年度改定で回復期リハ病棟における運動器リハビリテーション料は、大きな方針転換を迫られました。これまで認められていた「1日6単位を超える算定」が、運動器疾患に限って上限緩和の対象から除外されたのです。
今回公表された調査データは、この政策判断を裏付ける結果となりました。回復期リハ病棟で運動器リハを受ける患者の大多数が6単位以下の実施にとどまっており、7単位以上の患者は少数派だったことが判明しています。
厚労省はこの結果について「6単位を超えた実施単位数の増加に伴うADLの明らかな改善が見られなかった」と説明しており、今後の制度設計においても「量より質」の方向性がより鮮明になりそうです。
診調組 入-1 7 . 5 . 2 2令和6年度調査結果(速報) 概要
新加算の届出率わずか9%、理想と現実のギャップ
リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算(120点/日)の届出状況は、わずか9.0%にとどまりました。
届出できない理由として、
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PT・OT・ST2名以上の常勤専従配置困難(56.3%)
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土日祝日のリハ提供が平日の8割未満(53.9%)
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管理栄養士の常勤配置困難(31.4%) といった人的体制の問題が顕著です。
*会議中に訂正「N=24」は誤記で「N=66」とする訂正が事務局から報告されました。
回復期リハ病棟、機能に応じた配置格差が鮮明に
回復期リハビリテーション病棟のPT・OT・ST配置人数は、病棟機能の違いによって顕著な差があることがで示されました。
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入院料1:17.92名(40床あたり)
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入院料2:13.18名
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入院料3:8.00名
この格差は各病棟の機能と実績要件の違いを反映したもので、より高い実績要件を求められる上位入院料ほど充実した人員配置が行われています。リハ職にとっては勤務先の入院料区分がキャリア形成や業務環境に大きな影響を与える状況となるかもしれません。
地域包括ケア病棟、在宅復帰の「中継ぎ」機能が明確に
地域包括ケア病棟の入退棟経路が示されました。
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入棟元:他院の一般病床(55.5%)、自院(24.9%)
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退棟先:自宅(64.9%)、介護施設(20.4%)
40日以内・以降の評価導入により、急性期からの早期介入と退院支援体制の構築が制度上促されており、PT・OT・STの生活支援や環境指導の役割が一層重要になっています。
災害対応におけるリハ職の位置づけも調査対象に
田宮菜奈子委員(筑波大学 医学医療系 教授)より能登半島地震での教訓を踏まえた議論の中で、DMATやJMAT等の災害医療チームにおけるPT・OT・STの関与実態を調査票に反映する提案がなされました。
今後は、被災地での生活支援・避難所対応におけるリハ職の重要性が改めて評価されるとともに、制度的な後押しにつながることが期待されます。
地域包括医療病棟、連携加算とのミスマッチ
新設された「地域包括医療病棟入院料」(3,050点)は、
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PT・OT・ST2名以上の専任配置
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常勤の管理栄養士配置
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救急搬送患者15%以上
といった要件が設定されており、地域医療の中核病棟として位置づけられています。
届出理由の最多は「高齢者救急搬送対応」(約70%)ですが、リハ・栄養・口腔連携体制加算の併算定率は17%にとどまり、制度の整合性と実装能力のギャップが課題として浮き彫りになっています。
第1部まとめ:制度と現場の接続にリハ職の声を
第1部では、PT・OT・STに直接関わる制度変更と調査設計を中心に、以下のトピックを取り上げました:
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運動器リハ6単位制限の妥当性とデータ的裏付け
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連携加算の届出率9%という制度と現実の乖離
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入院料別の配置格差と機能分化
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地域包括ケア病棟での中継機能と在宅支援
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病棟における多職種配置・業務分担調査の実施
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疾患別にとどまらない生活支援型リハの評価対象化
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災害時のリハ職の関与実態を問う調査項目の新設
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地域包括医療病棟での連携体制整備の難しさ
これらの内容は、現場と制度の接続においてリハ職の存在がますます重要になることを示しています。
*本記事は2部構成の【第1部】です。
▶ 【第2部】地域医療構想と医療提供体制の再構築
資料▶︎https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212500_00271.html