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医療従事者不足の深刻化 病院薬剤師確保困難、給与格差10万円以上

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日本病院会(日病協)は11日の定例記者会見で、医療従事者不足の深刻化について報告した。中央社会保険医療協議会(中医協)の入院外来医療等の調査評価分科会で示されたデータを基に、病院薬剤師や看護師、看護補助者の人材確保が困難な状況にあることを明らかにした。

病院薬剤師不足、薬局薬剤師が75%占める

令和4年には医療機関や薬局に従事する薬剤師の75%を薬局薬剤師が占めており、病院薬剤師の数はほぼ横ばいで推移している。薬局薬剤師が右肩上がりで増加している一方、病院薬剤師は微増程度にとどまっているのが実情だ。

日病協では「病院薬剤師は非常になかなか応募しても来てくれないという状況が続いている」と説明。この背景には明確な給与格差があり、薬学部6年制を卒業して就職する場合、「一般的に町薬局に就職した方がはるかに初任給は高い」とし、「一般的には10万円以上は開く」と具体的な差額を示した。

病院薬剤師の確保については、「病院薬剤師の給料をぐんと上げるって追いつくようにね民間に追いつくように上げればいいんですけどそうはいかない」と現実的な困難を認めた上で、「薬学部の学生にですねやっぱり病院薬剤師のモチベーションとか生きがいとかですねやりがいそういったことは極力話すようにしている」と、やりがいや魅力を伝える取り組みを継続していることを明らかにした。

看護師も若い世代で減少、養成所定員割れ

看護師についても構造的な変化が起きている。40歳以上の看護師は増加している一方、40歳以下の若い世代の看護師は減少傾向に入っている。また、看護師養成所の1学年定員数についても、令和6年は89.90%となり、約1割の定員割れを起こしている状況が報告された。

「入学者数が明らかに減ってきている」とし、「生産年齢人口の減少がだんだんと広がってきているのかなという感じはある」と分析。「若い世代の看護師が減ってくるというのは非常に大変な状況だ」と危機感を示した。

看護補助者も継続的に減少

看護業務の補助者についても、平成26年以降減少が続いている。看護業務の補助者と介護福祉士の合計数も同様の減少傾向にあることが報告された。

日病協では「看護補助者は非常に大切」としながらも、この状況を受けて診療報酬のあり方について言及した。

診療報酬評価システムの見直し要望

現在の診療報酬について「ストラクチャー評価といって頭数を揃えないと高得点にならない」仕組みだが、「特に地方ではいろんな職種の方が採用できていないということがある」と指摘。「ストラクチャー評価ではなくてアウトカムとか結果が良ければそれで評価してもらいたい」「プロセスを評価をして診療報酬」の検討を要望した。

この要望については、4月に日病協として5項目の具体的な診療報酬に対する要望を既に提出済みで、その中の1つとしてストラクチャー評価からアウトカム評価への転換が含まれていることを明らかにした。厚生労働省保健局医療課長からは「検討する価値はありますね」との回答を得ているという。

物価上昇に対する診療報酬改定への要望

太田先生から提出された資料を基に、病院医療提供コストの上昇と診療報酬対応不足についても議論された。2020年から2024年までの病院医療提供コスト上昇に対して、薬価診療材料以外の本体で補填すべき割合を計算した結果、「7%ぐらいが必要になる」との試算が示された。

一方、診療報酬の本体改定率は0.55%、0.43%、0.88%と推移し、2年ごとの改定を全て足しても1.87%にとどまっている。この結果、「やはり5%くらいの補填不足があるんじゃないか」との分析が示された。

ただし、この5%という数字について「はっきりとした要望事項ではないんですけどみんなで議論をして」「これはあくまでも今回みんなで共有したっていうイメージ」と説明し、「それをどのように要望するかというのはまだ決まっていません」と今後の対応は未定であることを明らかにした。

米国大統領令による薬価政策への懸念

米国のメーカーのある会社からの意見聴取として、トランプ大統領が「公正な市場価格よりも低い価格で他国で販売されることを抑制することを目的に再建国の対応薬化の導入を目指すための大統領令に署名した」との情報が報告された。

日本では特許期間中でも様々なルールで薬価が引き下げられる仕組みがあるため、製薬会社としては「特許の期間中は下げないでほしい」との要望が出されたという。これに対し日病協では「我々は何ともいかんともしがたい」としながらも、「ちょっと何あるか分からないので怖いですよね」と懸念を示した。

社会保障審議会医療部会での報告

社会保障審議会医療部会については報告事項のみで、特に議論にはならなかったと説明。骨太方針で物価上昇を加味するとの方針が示されたが、「どのくらいちゃんとしてくれるかというのが非常に心配」と実効性への懸念を表明した。

日病協では、現在の医療機関の厳しい経営状況を踏まえ、「今のほとんど倒産をしてくるような状況」「このままだと病院かなりやっぱり潰れていく病院出てきて今でももう出てきてますけどねさらに増加していくんじゃないか」との危機感を示し、適切な診療報酬改定の必要性を訴えた。

【中医協総会資料】

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_59377.html

医療従事者不足の深刻化 病院薬剤師確保困難、給与格差10万円以上

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