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【書評】触って、覚えて、理解する。実践的な機能解剖学の決定版

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『触診とゴロで覚える 四肢&体幹の機能解剖学』
高橋仁美 著(中山書店、2025年10月刊)

2013年刊『ゴロから覚える 筋肉&神経』の刊行から12年。待望のアップデート版となる本書は、著者・高橋仁美氏(福島県立医科大学特任教授)が掲げる「触診とゴロで筋の作用と髄節レベルを楽しく学ぶ」という明快なコンセプトを、徹底した教育設計で具現化している。
単なる改訂ではなく、「見て、触って、動かして覚える」新しい解剖学学習書への進化だ。

理論と実践のバランスが生む“体感型”の理解

最大の魅力は、理論と実践の絶妙な融合にある。従来の機能解剖学書が抱える「暗記中心」「抽象的」という課題を、著者は三つのアプローチで克服した。

  1. フルカラーイラストによる直感的理解
    解剖図が全面的に刷新され、筋線維の走行や神経支配、触診のポイントが視覚的に整理されている。図を“読む”だけでなく、“感じて理解できる”構成は、初学者のつまずきを軽減する。

  2. 「触診」という実践的アプローチ
    章ごとに配置された触診写真は、読者が自分の身体を教材にできるよう設計されている。教室でも自宅でも“手で確かめながら”学べるため、学習内容が経験として定着する。これはまさに、臨床実践への橋渡しとなる構成だ。

  3. ゴロでつなぐ記憶の定着
    「筋肉の作用」や「神経支配」を語呂合わせで関連づける工夫が秀逸で、抽象的な情報を意味のある形で記憶できる。学びが“楽しい”と感じられる瞬間を多く生み出している。

MMT準拠で臨床に直結する知識体系

本書は徒手筋力テスト(MMT)の枠組みに沿って構成され、
①筋の作用、②起始・停止、③支配神経、④髄節レベル
が一貫して整理されている。さらに巻末には「間違いやすい神経支配・髄節」を確認できる問題集も付属し、知識の定着と自己評価を両立。国家試験対策にとどまらず、臨床現場で即応できる実践知として活かせる。

対象読者に寄り添う“心強い相棒”

理学療法士・作業療法士を目指す学生には、必修科目「解剖学」の予習・復習サブテキストとして最適。新人臨床家には、日々の施術や評価を支える再学習ツールとして有用だ。著者が序文で述べる「臨床現場で繰り返し使える一冊」という言葉は決して誇張ではない。

総評:暗記から“体感を伴う理解”へ

高橋氏は序文で「筋名や起始・停止、神経支配などの情報は初学者には抽象的で、覚えること自体が壁になる」と指摘し、その解決策として「自ら触れ、動かして覚える」方法論を提示している。
本書は、学びの重心を“記憶”から“体感”へと移す試みであり、学習者に主体的な理解を促す。

機能解剖学を「身体で学ぶ」時代の到来を告げる、新しいスタンダード。
学生にも臨床家にも、“一度触れたら手放せない”信頼の相棒となるだろう。

▶︎https://www.nakayamashoten.jp/rehabilitation/takahashi_collection/

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