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2040年に向けた地域共生社会の実現へ制度改正を提言

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厚生労働省は12月15日、第32回社会保障審議会福祉部会を開催し、「社会保障審議会福祉部会報告書(案)」を審議しました。報告書案は2040年に向けた地域共生社会のさらなる実現・深化に向け、包括的な支援体制の整備や頼れる身寄りがいない高齢者等への対応、介護人材の確保・育成など6つの観点から具体的な対応の方向性を示しています。

報告書案の構成と主な内容

報告書案は「Ⅰ.はじめに」「Ⅱ.各論」「Ⅲ.おわりに」の3部構成で、各論では以下の6つのテーマについて現状と課題、対応の方向性が整理されています。

  1. 1. 地域共生社会の更なる展開について
  2. 2. 頼れる身寄りがいない高齢者等への対応、成年後見制度の見直しへの対応について
  3. 3. 社会福祉法人制度・社会福祉連携推進法人制度の在り方について
  4. 4. 災害に備えた福祉的支援体制について
  5. 5. 共同募金事業の在り方について
  6. 6. 介護人材の確保・育成・定着について

委員からの主な意見

地域福祉と現場の人材確保

社会福祉法人小田原福祉会理事の井口健一郎委員は報告書案について「特に問題ない」と述べた上で、「2040年に向けて要医療・要介護者が増えていく中で、ヤングケアラーなど様々な人たちにしわ寄せがいかないよう、しっかりとした地域デザインをしていく必要がある」と指摘しました。

介護福祉士養成施設の現状と課題

日本介護福祉士養成施設協会副会長の小笠原靖治委員は、養成校における留学生の増加について触れ、「今年度、日本人よりも留学生の在籍数が上回った」と現状を報告しました。その上で「日本人が目指さない仕事は将来外国人も当然目指さなくなる。介護福祉士を日本人の若者たちが魅力を感じて目指していけるよう、制度としても支援いただければ」と要望しました。

複数資格取得とソーシャルワークの重要性

全国社会福祉法人経営者協議会副会長の谷村誠委員は、報告書45ページの「国家試験の受験資格に関する仕組み」について、複数資格取得の方策が書き込まれたことに謝意を示しました。さらに「ソーシャルワークを土台としてケアワークを展開する」という考え方の重要性を強調し、「ソーシャルワークを土台として、その上で保育や介護、社会福祉に必要なスキルを学ぶスタイルが理想ではないか」と述べました。

プラットフォーム機能への期待

埼玉県立大学地域連携センター教授の吉田俊之委員は、介護人材確保に関するプラットフォーム機能について「都道府県が設置主体となり、市町村・ハローワーク・福祉人材センター・介護事業者・養成施設・職能団体等が連携する場の制度化は、地域差という課題に対して、地域ごとに応じた対応策を議論できる場となる」と評価しました。また、「身寄りのない高齢者等への対応課題では、個別ニーズに応じたケースワークとの関連性も重要」と指摘し、社会福祉士や介護福祉士の役割について今後も議論が必要との認識を示しました。

自治体の実情への配慮

全国市長会(刈谷市長)の稲垣武委員は、「制度や運用の見直しを進める際には、明確なガイドラインを策定するなど現場において混乱が生じないようにするとともに、自治体の実情を十分に踏まえ、その実現可能性にもご留意いただくようお願いしたい」と要望しました。

全国町村会(豊郷町長)の伊藤定勉委員も同様に、過疎地域等における新たな仕組みについて「自治体の意見やモデル事業の結果をしっかり踏まえ、地域のニーズや実情に即した形で実施できる制度設計を」と求めました。さらに中核機関の位置づけについて「町村に過度な負担が生じない制度設計を強く要望する」と述べました。

災害福祉支援体制について

全国老人福祉施設協議会副会長の石踊紳一郎委員は、DWAT(災害派遣福祉チーム)について「平時からの研修訓練が制度的に担保されることは必要であり、国の関与のもと人材を育成し支援体制を構築することは重要」と評価した上で、「役割・権限の明確化、派遣手続の迅速化、人材の安全保障の問題、派遣元への配慮など早急に検討していただきたい」と要望しました。

日本介護福祉士会副会長の今村浩司参考人(及川ゆりこ会長の代理出席)は、DWATの運用に関して「迅速な派遣、支援のフェーズに応じた他の災害時の福祉支援との関係」について報告書に記載されていることを確認し、事務局から「大井川委員のご意見を踏まえて記載した」との説明を受けました。

権利ベースのアプローチの重要性

慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科教授の堀田聰子委員は、地域共生社会の理念について「障害者基本法や認知症基本法では『国民が始まった共生社会』となっているが、社会福祉法では『地域住民が始まって地域共生社会』となっている。生活のリアリティに即して『地域とは』『コミュニティとは』を考え続けていくことは課題になる」と指摘しました。また、権利ベースのアプローチの重要性に触れ、「学校教育段階で基本的な人権の尊重について実感的な理解を深めていくことが重要」と述べました。

報告書案の了承と今後の予定

部会では、中央大学法学部教授の宮本太郎委員から一部修文の提案があり、菊池部会長に一任することで了承されました。菊池部会長は「社会福祉法は福祉分野の基本法的な位置づけであり、その持つ意味は大変大きい。障害者部会や介護保険部会でも福祉部会の議論を横目で見ながら議論している状況」と述べ、報告書の重要性を強調しました。

また菊池部会長は「制度と実践のバランスを取りながら改善を図っていくしかない。今回大きな前進だと思うが、改革はここで終わりではない。今回の改正を土台にしてさらなる改善を図っていただければ」と総括しました。

神奈川社会援護局長は閉会の挨拶で、「2040年に向けて人口減少・単身高齢世帯の増加という問題は地域差がある。公的な助成については国の財政状況も厳しく、社会保険・共助の世界も今後増やしていくことは難しい状況。地域共生社会は非常に重要な取り組み」と述べ、「この報告書の内容をもとに制度改正に向けた準備を整理し、誰も取り残されることなく地域で支え合う社会を目指す地域共生社会のさらなる深化に取り組んでいく」と表明しました。

報告書は部会長と調整の上、近日中に厚生労働省ホームページで公表される予定です。

▶︎第32回社会保障審議会福祉部会

2040年に向けた地域共生社会の実現へ制度改正を提言

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