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高額療養費見直し、専門委員会が基本的考え方をとりまとめ──多数回該当は「現行水準維持」、新たに「年間上限」創設も

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社会保障審議会医療保険部会の下に設置された「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」は12月16日、制度見直しの基本的な考え方をとりまとめた。長期療養者への配慮として多数回該当の限度額は現行水準を維持する一方、所得区分の細分化や70歳以上の外来特例見直しなどを盛り込んだ。施行は来年夏以降を想定している。

制度堅持を前提に「不断の改革」へ

専門委員会は令和7年5月に設置され、患者団体や保険者、医療関係者、学識経験者など多様な立場からのヒアリングを経て、計8回の議論を重ねてきた。

とりまとめでは、高額療養費制度について「セーフティネット機能として患者・家族にとってなくてはならない制度」であり、「諸外国と比べてもこのような恵まれている制度を擁している国はほとんどない」と位置づけた。その上で、高齢化の進展や高額薬剤の開発・普及等を背景に医療費が増大する中、制度を将来にわたって堅持するためには「不断の改革」が必要との認識を示している。

ただし、具体的な限度額の金額については「医療保険制度改革全体の議論を踏まえて設定すべき」とし、今回のとりまとめには含まれていない。

所得区分を細分化、「年収370万円と770万円が同じ」の是正へ

現行制度では、年収約370万円の方と年収約770万円の方が同じ所得区分に整理され、限度額も同一となっている。とりまとめはこの点を「あまりにも大括りな制度」と指摘し、応能負担の観点から所得区分の細分化(住民税非課税区分を除く各区分を例えば3区分に)を提言した。

細分化によって高所得層の限度額は相対的に増加することになるが、「現在の限度額から著しく増加することのないよう、応能負担の考え方とのバランスを踏まえた適切な金額設定とすべき」との方向性も示されている。

長期療養者への配慮――多数回該当は据え置き、「年間上限」新設も検討

長期療養を必要とする患者への配慮は、今回のとりまとめの柱の一つだ。

委員会では「患者の立場の方を中心に多くの方々から再三にわたり指摘があった」とされ、多数回該当(直近12カ月に3回以上高額療養費に該当した場合に適用される軽減措置)の限度額については現行水準を維持すべきと明記された。

一方、多数回該当以外の限度額が見直された場合、従来なら限度額(現行:月80,100円+医療費の1%等)に達していた患者が該当しなくなり、結果として長期療養にもかかわらず多数回該当から外れてしまうケースが想定される。この問題への対応として、新たに患者負担に**「年間上限」**を設けることが提案された。年に1回以上、現在の限度額に該当した方を対象とする案などが示されている。

実務面では、保険者のシステム対応が制約とならないよう、患者本人からの申出を前提とした運用で開始することも選択肢に挙げられた。

70歳以上の外来特例、見直しは「避けられない」

70歳以上に設けられている外来特例についても議論が行われた。制度創設から20年以上が経過し、健康寿命の延伸や受療率の低下といった環境変化を踏まえ、「制度の見直し自体は避けられない」との方向性で概ね一致した。

具体的には、月額上限・年額上限それぞれの限度額見直しに加え、対象年齢の引き上げも視野に入れるべきとの意見が出された。一方で、「限度額の段階的な見直しなど丁寧な対応が必要」「医療保険部会における高齢者の負担の在り方の議論を見極めた上で慎重な議論が必要」との声もあった。将来的な制度廃止を求める意見も出たが、いずれにせよ「高齢者の経済的負担に急激な変化が生じないような制度の在り方とすべき」との認識で締めくくられている。

「医療費の見える化」や保険者変更時の多数回該当引き継ぎも課題に

このほか、高額療養費が現物給付化されていることで費用総額が見えにくくなっている点も指摘された。日本難病・疾病団体協議会のアンケート調査(n=143)では、難病患者・家族の約8割(77.6%)が医療費総額を把握しているとの結果も紹介されたが、制度への理解を深めるため、医療費の「見える化」を進めていく方向性が示された。

加入する保険者が変わる際に多数回該当のカウントがリセットされる現行の仕組みについても、カウントが引き継がれる仕組みの実現に向けた検討を進めるべきとされた。

今後の展望

具体的な限度額の金額設定は、医療保険部会における医療保険制度改革全体の議論を踏まえて決定される。施行時期については、国民・医療関係者への周知、保険者・自治体のシステム改修等の準備期間を考慮し、来年(令和8年)夏以降を予定している。

▶︎「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」とりまとめ

高額療養費見直し、専門委員会が基本的考え方をとりまとめ──多数回該当は「現行水準維持」、新たに「年間上限」創設も

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