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【事例集】8,000万円補助、何に使う?──リハ部門AI・ICT導入の選択肢

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最大8,000万円の補助金で病院のICT導入が加速する見通しです。厚生労働省が示した成果目標には「リハ職種の記録作成等の時間の減」が明記されており、リハ部門も対象に含まれています。では、具体的に何を導入すればいいのか。先行して取り組んだ病院の事例から、選択肢を整理しました。

記録業務の効率化、2つのアプローチ

リハ職種にとって最大の業務負担は「記録作成」です。訓練後にPCの前に座り、カルテを入力する時間──これを削減する方法は、大きく2つに分かれます。

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音声入力型

40〜70%

削減実績の目安

スマホに話しかけてテキスト化。移動中に入力可能で、導入ハードルが低い

AI自動生成型

80%以上

削減実績の目安

会話を録音→AIがSOAP形式で下書き生成。確認・修正は必要

どちらが優れているという話ではありません。病院の規模、電子カルテとの連携状況、セラピストのITリテラシーによって、最適解は異なります。

音声入力で「70%削減」──HITO病院の事例

愛媛県の社会医療法人石川記念会HITO病院は、リハビリ部門のICT活用で最も注目される事例の一つです。

同院は全セラピスト約40名にiPhoneを配布し、音声入力システムを導入しました。訓練後の移動中にスマートフォンへ音声で記録を吹き込み、モバイル電子カルテと連携して直接カルテに反映する仕組みです。

結果、カルテ入力時間を従来比約70%削減。実出勤41名で1日あたり約11時間の入力時間削減を達成しました。7割以上の職員が「簡単で改善した」と回答しています。

注目すべきは、最初から成功したわけではない点です。

同院は2017年に一度、PC+マイク方式で音声入力を導入しています。しかし「気恥ずかしい」との声が多く、現場に定着しませんでした。そこでスマートフォン方式に転換し、テスト運用でWi-Fi環境やテンプレートを最適化。PHSの代替としてスマホ1台で内線・音声入力・カルテ参照を完結させる運用に変えたことで、ようやく普及に至りました。

「導入すれば効果が出る」のではなく、現場に合った運用設計があって初めて効果が出る──この教訓は、これから導入を検討する病院にとって重要です。

AI自動生成で「8割削減」──生和会グループの挑戦

音声入力の「次」として注目されるのが、生成AIによるカルテ自動作成です。

リハビリテーション病院を複数運営する生和会グループ(彩都リハビリテーション病院、川西リハビリテーション病院等)は、リハビリ分野に特化したAI記録支援ツールを共同開発しました。セラピストが患者との会話内容を録音すると、AIがSOAP形式のカルテ原稿を自動生成する仕組みです。

臨床検証の結果、3か月間で2,000時間以上のセラピストの間接業務削減を確認。カルテ入力時間を8割以上削減したと報告されています。2025年10月より関西9病院(計180アカウント)で運用を開始し、全国展開を進めています。

開発には現職のPT・OT・STが研究員として参画しており、リハビリ特有の用語や記録形式に対応している点が特徴です。

岡山中央病院──「40%削減」の実測データ

岡山中央病院リハビリテーション部も音声入力を導入した事例です。隙間時間にスマートフォンから音声入力でリハビリ記録を作成し、電子カルテに転送する運用で、リハビリ記録作成・カルテ入力時間を5分18秒から3分8秒へ約40%短縮しました。スタッフ52名中7割以上が改善を実感しています。

70%削減のHITO病院に比べると控えめに見えますが、導入環境や運用方法によって効果には幅が出ます。補助金申請時の「定量目標」を設定する際、40〜70%という幅を参考にできるでしょう。

記録以外のICT活用──スケジュール作成、予後予測

記録業務以外でもICT活用は広がっています。

兵庫県立リハビリテーション中央病院は、休日・休暇・欠勤によるリハビリスケジュール再作成の負担に対し、生成AIによるスケジュール自動作成システムを内製開発しました。IT知識ゼロの総務部スタッフが主導し、外部企業と連携して90日間で開発。スケジュール作成時間を80%短縮(100分→20分)し、空いた時間をリハビリ提供に充てることで月あたり約36単位(88,200円)の収益増加が見込まれています。AWS ANGEL Dojo 2025で第2位を獲得しました。

十勝リハビリテーションセンター(北海道)は、AIを用いて回復期リハ病棟の退院時機能予後を予測する取り組みを行っています。過去6年分のデータを学習したAIモデルにより、退院時の「歩行動作」「トイレ動作」「運動項目FIM」を高い精度で予測。入院当初から退院時のイメージ像を提示可能になり、「AIでの予測結果と担当者の見解の違いを前向きに協議する」文化が自然発生したと報告されています。

導入を検討する際のチェックポイント

先行事例から見えてきた、導入検討時のポイントを整理します。

電子カルテとの連携:自院の電子カルテと連携可能か確認。連携費用は補助対象
Wi-Fi環境:リハ室・病棟・移動経路で使えるか。整備費用は補助対象
現場の受容性:HITO病院の失敗例のように、方式によっては定着しない場合も。小規模トライアルから
効果測定の準備:導入前の「現状値」を測定しておかないと削減率を算出できない。補助金には成果報告が必須
ランニングコスト:運用・保守費用は補助対象外。SaaS等の月額利用料は令和8年度分のみ例外的に対象(最大12ヶ月)

他部門の事例も参考に

今回の補助金はリハ部門に限らず、医師・看護師・薬剤師・事務など病院全体が対象です。他部門でも導入事例が出ています。

  • 医師部門:藤田医科大学病院では退院サマリ作成AIを導入し、3か月で約1,000時間を短縮。医師の92%が「業務改善につながった」と回答
  • 看護部門:北原リハビリテーション病院ではAI音声入力で看護記録業務を58%削減。見守りセンサー「眠りSCAN」で夜勤の訪室回数を削減した施設も
  • 事務部門:名古屋大学病院ではRPAを全事務部門に導入し、約9,800時間の効率化を見込む

病院全体でDXを進める際の参考にしてください。

まとめ

補助金の成果目標に「リハ職種の記録作成等の時間の減」が明記された以上、病院経営層がリハ部門のICT導入を検討する流れは加速するでしょう。

先行事例を見ると、音声入力で40〜70%、AI自動生成で80%以上の削減実績が報告されています。ただし、これらの数字は「導入すれば自動的に達成できる」ものではありません。現場の運用設計、電子カルテとの連携、セラピストへの教育──これらが揃って初めて効果が出ます。

補助金には「成果が認められなければ返還」という条件が付されています。導入を検討する際は、まず現状の記録時間を測定し、どの程度の削減が現実的かを見極めることが重要です。

※本記事で言及した製品・サービス(順不同):
・音声入力システム:AmiVoice iNote(アドバンスト・メディア社)
・AI記録支援ツール:medimo(Pleap社)
・AI予測分析:Prediction One(ソニーネットワークコミュニケーションズ)
・生成AI基盤:Amazon Bedrock(AWS)
上記は先行事例として取り上げたものであり、特定製品を推奨するものではありません。

参考

【HITO病院】
・HITO病院「iPhoneと"声"が変えるセラピストの働き方改革」(病院公式資料)
http://hitomedical.co-site.jp/wp2017/wp-content/uploads/2018/09/iphone_web.pdf

【岡山中央病院】
・アドバンスト・メディア「医療向けAI音声認識ワークシェアリングサービス『AmiVoice iNote』岡山中央病院のリハビリテーション部に導入」(2023年10月18日、PR TIMES)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000441.000020223.html

【生和会グループ】
・Pleap「国内初!!リハビリテーション分野に特化した生成AIソリューションの共同開発開始。」(2024年2月15日、PR TIMES)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000124331.html

【兵庫県立リハビリテーション中央病院】
・Amazon Web Services「地方病院がシステムの内製化に挑戦!? IT 知識ゼロから始めた生成 AI による業務効率化への 90 日」(AWS公式ブログ)
https://aws.amazon.com/jp/blogs/news/healthcare-local-hospital-challenge-to-initiate-inhouse-generative-ai-acceleration/
・Amazon Web Services「ANGEL Dojo 2025 活動報告と結果発表!」(AWS公式ブログ)
https://aws.amazon.com/jp/blogs/psa/2025-12-angel-dojo/

【十勝リハビリテーションセンター】
・ソニーネットワークコミュニケーションズ「AIを用いた回復期リハビリテーション病棟向け予後予測ソリューションを十勝リハビリテーションセンターと共同開発」(2024年6月12日、PR TIMES)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001438.000000196.html
・北斗病院「回復期リハビリ病棟でAI予後予測、ソニーネットワークコミュニケーションズと十勝リハビリテーションセンターが共同開発」(病院公式サイト)
https://www.hokuto7.or.jp/hospital/prediction-one/

【事例集】8,000万円補助、何に使う?──リハ部門AI・ICT導入の選択肢

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