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「自分だけ実力がない気がする」新人療法士へ ── 62%が経験するインポスター症候群の正体

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自分だけができていない、という錯覚

臨床実習を終えて、国家試験に合格して、ようやく現場に出た。患者さんを担当し、評価して、プログラムを立てる。毎日必死でやっている。それなのに、ふと思うことはありませんか。

「自分だけ、全然わかっていないのでは…」

同期は要領よくこなしているように見える。先輩に質問するたびに、こんなことも知らないのかと思われている気がする。患者さんが良くなっても、たまたまだったのではないか。いつか自分の実力のなさがバレるのではないか。

この感覚には名前があります。インポスター症候群。直訳すれば詐称者症候群ですが、要するに自分は周りを騙している、本当の実力ではないと感じ続けてしまう心理状態を指します。

そしてこの感覚、あなただけのものではありません。

2025年に発表されたメタ分析によれば、医療従事者のおよそ62%がこれを経験しています。若手に限った話でもありません。臨床経験を積んでも、役職についても、残り続ける人はいます。

医療従事者の62%が経験している

2025年5月、BMC Psychology誌にSalariらのメタ分析が掲載されました。医療従事者に焦点を当てたインポスター症候群のメタ分析です。30研究、11,483名のデータを統合した結果、有病率は62%(95%信頼区間 52.6〜70.6%)。およそ3人に2人が経験している計算になります。ただし研究間の異質性は高く、この数字は大まかな推定値として捉えるべきでしょう。

データ比較

医療従事者全体:62%
30研究・11,483名、Salari et al., 2025

理学療法士:51%が頻繁または強いレベル
514名、Anderson et al., 2024

PT学生:74%、女性では79%
Young et al., 2024

メンタルヘルス診断歴あり:OR 2.77
約3倍のリスク増加、Anderson et al., 2024

リスクを高める要因、下げる要因

514名の理学療法士を対象としたAndersonらの研究では、いくつかの関連要因が明らかになりました。

リスクを高める最大の要因は感情的疲弊です。燃え尽きの中核症状であるこれが高いグループでは、インポスター症候群のオッズ比が14.13。桁違いに高い数値です。メンタルヘルスの診断歴がある場合も約3倍のリスク増加が見られました。

一方、リスクを下げる要因もあります。管理職経験があるとリスクが低下する傾向が見られました(OR 0.55)。臨床経験を積んだベテランでもリスク低下の可能性が示唆されています。経験を積むことで徐々に緩和される人がいる一方で、残り続ける人もいます。

興味深いのは、性別、人種、勤務地域はリスクと有意な関連がなかったこと。特定の属性の人がなりやすいわけではなく、幅広い層で起こりうるということです。

精神疾患ではない、でも放置は危険

一点明確にしておきます。インポスター症候群は精神疾患ではありません。DSM-5にもICD-10にも診断名として載っていない心理学的構成概念です。

ただし、うつ病や不安障害との関連は強いことがわかっています。燃え尽き症候群や仕事への不満足感との関連も指摘されています。軽視していい問題ではありません。

療法士に多いと考えられている背景

医療従事者全体で高いインポスター症候群ですが、療法士には特有の要因があると考えられています。

正解がない仕事

理学療法、作業療法、言語聴覚療法。いずれも一つの正解があるわけではありません。同じ疾患でも、患者さんによって最適なアプローチは異なります。この標準化しにくさが、自分のやり方が正しいのかという疑問を常に抱かせる可能性があります。手術のように明確な成功・失敗がないからこそ、本当にこれでよかったのかという問いが残り続けるのかもしれません。

フィードバックの曖昧さ

学生時代は試験の点数や実習の評価で自分の位置がわかりました。臨床に出ると、明確なフィードバックを得る機会が減ります。患者さんが良くなっても、それが自分の介入のおかげなのか、自然回復なのか、他の要因なのか。判断しにくい。この曖昧さが、成功体験を自分のものとして取り込むことを難しくしている可能性があります。

学校と現場のギャップ

養成校で学ぶ知識と、現場で求められるスキルには差があります。教科書通りにいかない患者さんを前にして、自分は何も知らないと感じる新人は多いのではないでしょうか。先輩が当たり前のようにやっていることができない自分を見て、劣等感を募らせる。これも無理はありません。

セルフチェックと対処法

こんな傾向はないか

以下のような傾向がある場合、インポスター症候群の可能性があります。ただし、これは標準化された診断尺度ではなく、あくまで自己省察のための目安です。

「自分だけ実力がない気がする」新人療法士へ ── 62%が経験するインポスター症候群の正体

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