地域医療介護総合確保基金の医療分野で、医療従事者確保事業の執行率が95.6%とほぼ上限に達していることが明らかになりました。介護分野でも人材確保事業の交付額比率が拡大し、全国的な人手不足の深刻さが数字に表れています。2027年4月の改正医療法施行を見据え、基金の新区分創設や総合確保方針の改正も報告されました。
医療分野:10年間で8,493億円交付、人材確保は使い切り水準
3月11日に全国都市会館で開催された第22回医療介護総合確保促進会議(座長:田中滋・埼玉県立大学理事長)で、地域医療介護総合確保基金の執行状況が報告されました。
医療分野の2014~2023年度の10年間における交付総額は8,493億円(うち国費5,717億円)、執行総額は6,664億円で、全体の執行率は78.5%。前年度までから2.1ポイント上昇しました。

注目すべきは事業別の執行率の差です。医療従事者の確保に関する事業(区分Ⅳ)は95.6%に達し、事実上の「使い切り」状態にあります。一方、勤務医の労働時間短縮に向けた体制整備(区分Ⅵ)は51.4%にとどまり、2020年度に新設された比較的若い事業であることを差し引いても、低い水準です。施設・設備整備(区分Ⅰ-1)も56.5%で、建築費高騰が計画見直しを迫っている実態が浮かびます。

令和6年度の交付額ベースで見ると、医療従事者確保が44.0%と最大のシェアを占め、勤務医の時短体制整備は14.5%(前年度から11.0ポイント増)と急拡大しています。

なお、福島県では基金を活用した「理学療法士等医療従事者確保推進事業」の事後評価が報告され、理学療法士の新規免許申請数がR4年の111件からR5年に120件へ増加した実績が示されました。PT/OT/STの確保に基金が直接活用されている具体例として注目に値します。

介護分野:人材確保事業のシェアが37.7%まで拡大
介護分野(2015~2023年度)の交付総額は8,239億円(うち国費5,492億円)、執行総額は6,711億円で、執行率は81.5%(前年度から4.2ポイント上昇)でした。

事業別では施設整備(区分Ⅲ)が78.4%、人材確保(区分Ⅴ)が88.7%。特筆すべきは、令和6年度の交付額における施設整備と人材確保の比率です。人材確保事業のシェアは37.7%まで拡大しました。多くの都道府県が介護人材の確保・定着に予算を振り向けざるを得ない状況が読み取れます。

委員からは「効果検証」「地域間格差の是正」を求める声
医療分野に対しては、日本医師会副会長の角田徹構成員が、勤務医の労働時間短縮事業の執行率が十分でない背景の分析と対策を求めました。日本経済団体連合会専務理事の井上隆構成員、日本医療法人協会副会長の菅間博構成員、日本看護協会副会長の山本則子構成員、健康保険組合連合会常務理事の伊藤悦郎構成員はそれぞれ、事業の効果検証の徹底を要請しています。
日本労働組合総連合会総合政策推進局長の永井幸子構成員は、人材確保難がどの地域にも共通する課題であることを指摘し、研修等の費用補助が都道府県によって可否が異なる問題を挙げ、基金の活用促進を訴えました。リハ専門職を含む医療従事者の研修機会が、勤務地の自治体次第で左右される現状は、現場にとって切実な問題です。
介護分野では、全国社会福祉法人経営者協議会相談役の平田直之構成員、全国老人福祉施設協議会会長の大山知子構成員、全国老人保健施設協会会長の東憲太郎構成員がそろって、施設整備事業の対象拡大と建築費高騰への対応を要望。民間介護事業推進委員会代表委員の山際淳構成員は地域密着型サービスへの重点配分を、日本介護支援専門員協会副会長の七種秀樹構成員は都道府県の財政力を勘案した国費配分の仕組みの検討を提起しました。
2027年に向けた制度改正:基金に「業務効率化」新区分、総合確保方針も改正へ
会議では、医療機関の業務効率化・勤務環境改善に関する制度対応も報告されました(資料3)。基金に「業務効率化・勤務環境改善に関する事業」が新区分として加わる予定です。なお、令和8年度の基金(医療分)全体の予算案は公費ベースで960億円(うち国費647億円)が計上されています。業務のDX化として、スマートフォンによる情報共有、見守りカメラ・スマートグラスの活用、音声入力や生成AIによる文書作成支援などの取組例が示されました。

積極的・計画的に業務効率化に取り組む病院を厚生労働大臣が認定する仕組みも新設されます。医療法上、病院・診療所の管理者に業務効率化への努力義務が明記される方向で、リハビリテーション部門の業務フローにも影響が及ぶ可能性があります。
総合確保方針の改正も報告されました(資料4)。改正医療法により地域医療構想が医療計画の「上位概念」に位置づけられたことを受け、総合確保方針においても「医療計画基本方針」の文言を「地域医療構想基本方針」に改め、「病床の機能の分化及び連携」を「医療機関や病床の機能の分化及び連携」に拡張するなど、医療機関機能にも着目した体系へと再編されます。

まとめ・今後の展望
今回の促進会議で明らかになったのは、医療人材確保の基金がほぼ使い切られている一方、勤務医の働き方改革関連はまだ道半ばという、予算配分のアンバランスです。介護分野では人材確保へのシフトが数字で鮮明になりました。
改正医療法に基づく新たな地域医療構想の関連規定は2027年4月に施行されます。これに合わせ、総合確保方針の改正、基金への新区分追加など一連の法令整備が進む見通しです。都道府県では2026年度に医療提供体制全体の方向性や必要病床数の推計を行い、2028年度までに医療機関機能に着目した協議を完了させるスケジュールとなっています。
病床再編と機能分化が加速する中、リハ専門職の配置や地域連携における役割も再定義を迫られることになるでしょう。次回以降の促進会議の動向に引き続き注目が必要です。






