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診療報酬プラス改定を医療の質に変える──日慢協・橋本会長、院外リハやFIM見直しの実行と課題を語る

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日本慢性期医療協会(日慢協)は3月12日、定例記者会見を開き、2026年度診療報酬改定の評価と課題を示しました。橋本康子会長は「プラス改定は病院が儲かったで終わらせてはならない。国民への還元、すなわち医療の質向上とアウトカム創出こそが本丸だ」と強調。院外リハの上限緩和や身体的拘束最小化推進体制加算の新設など、リハ専門職の業務に直結する項目を具体的に解説しました。

「上位基準を取れ」──改定が示す明確なメッセージ

日慢協の橋本康子会長はまず、今改定の全体像を俯瞰しました。回復期リハ病棟入院料1は2,346点(+117点)、入院料5は1,794点(+98点)と、上位基準ほど引き上げ幅が大きい設計です。新設の「物価対応料」でも入院料1が19点、入院料5が15点と差がつき、同じ医療機能でも施設基準の高低で報酬格差が拡大する構図が鮮明になりました。

橋本会長は「施設基準を引き上げ、算定可能な加算を確実に取得し、ストラクチャー・プロセス・アウトカムを回していく。診療報酬はその道標だ」と述べ、プラス改定の原資が国民の税と社会保険料である以上、治癒・改善、在院日数短縮、寝たきりゼロといった成果で還元するサイクルを回す必要性を訴えました。

実行例:院外リハ上限緩和と退院前訪問指導料──セラピストの出番が広がる

リハ専門職にとって注目度が高いのが、医療機関外リハビリの上限緩和です。従来、1入院あたり3単位(1時間相当)だった院外リハの上限が、最大6単位(2時間相当)まで拡大されました。橋本会長は「公共交通機関の利用練習、スーパーへの買い物、銀行での年金引き出しなど、退院後の生活行為には1時間では足りない場面が多い」と具体例を挙げ、在宅復帰に向けた"生活を見るリハビリ"の充実を促しました。

退院前訪問指導料も580点(約3単位相当)に引き上げられ、療法士に加えて看護師も算定可能となっています。セラピストと看護師が多職種で自宅を訪問し、住環境を踏まえたリハプログラムを組み立てる――そうした連携の後押しとなる改定です。

身体的拘束最小化推進体制加算──「拘束ゼロ」に1日40点

今改定で新設された身体的拘束最小化推進体制加算は、1日につき40点。対象は療養病棟、地域包括ケア病棟など慢性期の主要病棟です。施設基準として、病院長や看護部長が拘束最小化を表明すること、年2回以上の講習実施、拘束用具の病棟外一括管理、最小化チームによる定期巡回などが求められます。身体的拘束を実施した日数の割合が3%以下であることも要件の一つです。

一方、既存の身体的拘束最小化の基準は「体制に係る基準」と「実績等に係る基準」の2段階に整理されました。両方を満たせば減算なし、実績基準のみ未達なら20点減算、体制基準も未達なら40点減算という4段階構造です。橋本会長は「拘束ゼロの病院はプラス40点、何も取り組んでいなければマイナス40点。その差は1日80点に及ぶ」と、メリハリの大きさを指摘しました。

【★画像挿入:定例記者会見資料 の P9(スライド8「身体的拘束最小化に係る特に高い取組の評価」)をここに貼る】

回復期リハ病棟のFIM実績指数見直し──「重症患者を切り捨てるな」と橋本会長

課題として取り上げられたのが、回復期リハ病棟におけるFIM実績指数の除外基準の見直しです。今改定では重症患者基準が厳格化され、FIM合計21点以下の患者は重症基準に該当しなくなりました(高次脳機能障害・脊髄損傷を除く)。

橋本会長は自らが関わる千里リハビリテーション病院の2025年実績データを提示。運動FIM20点以下かつ認知FIM14点以下の「グループ①」(78人)でも15%が最小介助以上で退院、認知機能が保たれた「グループ②」(25人)では48%が最小介助以上で退院したと報告しました。1日9単位のリハを提供した結果です。

「実績指数の数字を操作しようとか、低い患者は取らないようにしようとか、そういうことは言わないでほしい。きちんとリハビリをすれば良くなる」と橋本会長は語気を強めました。除外対象となるグループ①の患者も、途中で改善が見込まれればグループ②として実績指数に組み入れ直す運用が今改定で認められており、「すごくいいシステムになっている」との評価も示しています。

人員基準の柔軟化に警鐘──「緩和されたから良かった、ではない」

看護師・介護職の確保が困難な場合の人員配置基準が柔軟化された点について、橋本会長は慎重な姿勢を見せました。「10人のところを8人でいいとなっても、DXによる業務効率化で減らせたのではなく、単に人が足りないだけなら残ったスタッフがしんどい思いをする。それが退職につながる」と指摘。有料職業紹介所への手数料規制やハローワークの活用促進など、人材確保の努力を続ける必要性を訴えました。

質疑応答:運動器リハの6単位上限について

質疑応答では、前回会見でも課題として挙がっていた運動器リハビリの単位数上限について質問が出ました。橋本会長は「骨折の場合、疾患自体は徐々に治っていく面があり、6単位の上限に異論はない」としつつ、「術後の荷重制限がある最初の1か月程度や、人工骨頭置換術の有無によってリハの進め方は異なる。もう少し自由度があればよい」と要望を述べました。

池畑副会長による総括:「汗をかいた病院に点数がつく改定」

日慢協の池畑経衣副会長は理事会での議論を踏まえ、改定の全体評価を補足しました。高度急性期・大学病院への傾斜配分はやむを得ないとした上で、療養病棟の日本入院基本料加算が71点にとどまった点には「もう少しつけてほしかった」との声もあったと紹介。一方で、日慢協が長年要望してきた医療区分の「合わせ技」(感染症と処置の合算による区分引き上げ)が第一歩として実現した点や、包括対象の薬剤に一定の出来高評価が認められた点を前向きに評価しました。池畑副会長は「汗をかいたところにはしっかり点数がつくが、何もしなければ沈んでいく。メリハリのついた改定だった」と総括しています。

まとめ・今後の展望

今回の記者会見で日慢協が示したのは、プラス改定を「病院の収益改善」にとどめず、「国民へのアウトカム還元」につなげるという方針です。院外リハ上限の拡大(3→6単位)、退院前訪問指導料の充実、身体的拘束最小化推進体制加算(1日40点)の新設は、いずれもリハ専門職の関与が不可欠な領域。回復期リハ病棟のFIM実績指数の見直しについては、低FIM患者の受け入れ拒否につながらないよう現場への注意喚起がなされました。2026年度改定の施行は今後控えており、各施設は上位基準の取得と加算の算定に向けた体制整備が急務となります。

診療報酬プラス改定を医療の質に変える──日慢協・橋本会長、院外リハやFIM見直しの実行と課題を語る

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