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OTC類似薬に「特別の料金」、出産費用の現物給付化へ──健保法等改正案を医療保険部会に報告

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厚生労働省は3月19日、第211回社会保障審議会医療保険部会(部会長:田辺国昭・東京大学大学院教授)を開き、健康保険法等の一部を改正する法律案の全容を報告しました。OTC類似薬77成分の薬剤費に4分の1の「特別の料金」を課す一部保険外療養の創設、出産費用の現物給付化、高額療養費への年間上限の新設、医療機関の業務効率化支援の法定化など、多岐にわたる改革が盛り込まれています。リハビリ臨床の現場にとっては、長期療養患者の負担構造の変化と、医療機関における業務DX推進の両面で影響が及ぶ内容です。

OTC類似薬77成分に「特別の料金」──令和9年3月施行を想定

今回の改正案の目玉の一つが、「一部保険外療養」の創設です。OTC医薬品(要指導医薬品・一般用医薬品)との代替性が特に高い医療用医薬品について、薬剤費の4分の1を保険給付の対象外とし、患者に「特別の料金」として負担を求める仕組みを新たに設けます。

対象は77成分・約1,100品目。鼻炎、胃痛・胸やけ、便秘、解熱鎮痛、風邪症状全般、腰痛・肩こり、みずむし、口内炎、皮膚のかゆみ・乾燥肌などが主な対応症状です。施行は公布後1年以内で、令和9年3月が想定されています。

こども、がん患者、難病患者、低所得者、入院患者、医師が長期使用を医療上必要と判断した方などへの配慮措置も検討される予定です。法附則には、対象薬剤の範囲や厚生労働大臣の定めのあり方について検討規定が置かれます。

日本医師会常任理事の城守国斗氏は「OTC類似薬で治療すべき患者が自己判断でOTC医薬品を購入することの問題点は多い」と指摘した上で、対象成分の範囲や配慮すべき方について「丁寧な引き続きの検討」を求めました。日本商工会議所社会保障専門委員会委員の藤井隆太氏は、セルフメディケーション推進の観点から本制度に期待を示しつつも「健康被害が生じることのないよう、段階的に取り組みを進めるべき」と述べ、OTC医薬品の購入履歴を含めた薬歴管理の一元化の重要性を訴えました。

日本労働組合総連合会副事務局長の林鉄兵氏は「患者の負担増となるため、国民・患者の理解や納得を得られるよう丁寧な対応が必要」と強調。対象薬剤の選定プロセスの透明性確保と、制度施行後の実態把握に基づく見直しの必要性を指摘しました。

高額療養費に「年間上限」を新設──長期療養者の家計への配慮を法律に明記

高額療養費制度については、政令で支給要件等を定める際に「特に長期療養者の家計への影響が適切に考慮される」よう、法律上明確化する規定が盛り込まれました。衆議院厚生労働委員会の決議を踏まえた対応です。

広報資料によれば、月単位の自己負担限度額に加え、新たに年単位の上限額(年間上限)を設ける方針です。例えば、年収約370万~770万円の層でこれまで多数回該当に至らなかった方の場合、年間自己負担が76.7万円から53.0万円へ、約23.7万円の軽減となるケースが示されています。

上智大学経済学部教授の中村さやか氏は、長期療養者の費用負担と家計状況を追跡的に把握するためのデータ整備の必要性を訴えました。レセプトデータと所得データの紐づけや、厚労省のパネルデータ(中高年者縦断調査等)への健康状態情報の充実を具体的に提案し、「要約統計にとどまらず、疾病罹患後の所得変動や医療費負担の実態をより精緻に把握すべき」と述べています。

早稲田大学政治経済学術院教授の野口晴子氏(新任の部会長代理)も「自己負担の変化が受診行動に与える影響、すなわち価格弾力性をどう把握するかが重要」と指摘。低所得者や慢性疾患患者での受診抑制リスクに言及し、医療利用情報と所得・金融資産情報を組み合わせた分析の不可欠さを強調しました。

日本医師会の城守氏は、年間上限の導入を評価する一方、「保険者が変更になった場合に多数回該当が通算されない問題など、見直しが必要な点は残っている」として、実態を踏まえた継続的な検討を求めました。施行日は令和8年8月1日です。

出産費用の現物給付化──「当分の間」の経過措置に複数委員が懸念

妊娠・出産に対する支援強化では、出産育児一時金に代わる新たな給付方式が導入されます。骨格は3つ。第一に、保険診療以外の分娩対応について国が基本単価を定め、保険者から施設へ直接支払う現物給付化。第二に、すべての妊婦への定額の現金給付の導入。第三に、費用の見える化の徹底です。施行は公布後2年以内。

注目を集めたのは、「施設の選択により、当分の間、施設単位で現行制度(出産育児一時金)の適用を受けることも可能」とする経過措置です。

健康保険組合連合会会長代理の佐野雅宏氏は「医療機関ごとに対応が異なるのは、地域によっては妊婦の不利益・不公平につながる。あくまで時限的なものとし、できるだけ速やかに新制度へ移行する仕組みにすべき」と明確に主張。林氏、日本病院会副会長の島弘志氏、全国市長会相談役の前葉泰幸氏も同様の立場から、期限を区切った運用を求めました。

一方、城守氏は「地域の周産期医療施設、特に一次分娩施設の運営継続が大前提」と釘を刺し、制度の持続可能性が見通せない現段階では「従来の制度との並行スタートが現場としては安心できる」との見解を示しています。

NPO法人高齢社会をよくする女性の会理事の袖井孝子氏は、出産後の子ども・子育て支援金による10万円給付との関係にも触れ、「複数の役所が絡む場合に矛盾が生じないよう、子ども家庭庁との調整を」と要望しました。

後期高齢者の金融所得を保険料・窓口負担に反映──公布後5年以内に施行

後期高齢者医療制度において、上場株式の配当等の金融所得を、確定申告の有無にかかわらず保険料・窓口負担割合の判定に反映する仕組みが導入されます。金融機関に対し、法定調書の後期高齢者医療広域連合へのオンライン提出を義務づけるのが柱です。

袖井氏は「後期高齢者のみが対象というのは納得がいかない。現役世代にも金融所得の多い人はいる」と繰り返し疑問を呈しました。これに対し厚労省の高齢者医療課長は、後期高齢者の窓口負担が所得に応じた1~3割となっている制度的特性や、国の標準システムを活用できるためシステム面でスムーズに対応可能であることなどを理由に「後期高齢者から導入する」と説明。国保や健保への拡大については「決まったスケジュールはない」としました。

野口氏は「今回整備される所得情報基盤を、医療需要や受診行動の分析に活用し、エビデンスに基づく政策につなげることが重要」と述べ、将来の給付付き税額控除に向けたパイロットケースとしての意義にも言及しました。

施行は公布後5年以内。法定調書データベースの構築、金融機関でのマイナンバー付番の徹底、自治体のシステム改修など、準備に相当の期間を要する見通しです。

医療機関の業務効率化を法定責務に──DX支援の基金新区分を創設

2040年を見据え、医療機関の業務効率化・勤務環境改善を制度的に後押しする枠組みも盛り込まれました。地域医療介護総合確保基金に「業務効率化・勤務環境改善に関する事業」を新区分として設けるほか、業務効率化に積極的・計画的に取り組む病院を厚生労働大臣が認定し、表示できる仕組みを導入します。

医療法上、病院・診療所の管理者の責務として業務効率化を明記。健康保険法上も保険医療機関の責務として位置づけます。都道府県の医療勤務環境改善支援センターの機能強化も図られ、業務効率化に関する助言・指導も行えるようになります。

島氏は基金を活用した支援事業に期待を示す一方、「DX導入にはイニシャルコストへの支援はあるが、ランニングコストへの支援がほぼない」と指摘し、継続的な財政支援の検討を求めました。林氏は「業務効率化が働く方の職場環境改善につながるべき」と述べ、計画の策定段階からの労使の話し合いや、従業員への進捗状況の周知の重要性を強調しています。

国保改革・協会けんぽ関連――子育て世帯の保険料軽減を高校生年代まで拡大

国民健康保険では、未就学児に対する均等割保険料の5割軽減措置を高校生年代まで拡大します。対象は約50万人から約180万人に増加する見込みで、令和9年4月施行です。

国保組合に対する国庫補助では、一定の水準に該当する組合に例外的な補助率(12%・10%)を適用する規定が盛り込まれました。城守氏は「小規模で財政基盤が脆弱な組合も多い。相対的評価で判断する考え方に対し強く再考を求める」と反対の姿勢を改めて示しています。

協会けんぽについては、予防・健康づくりに取り組む保健事業の責務を法律に明記。全国健康保険協会理事長の北川博康氏は、令和8年度から人間ドック補助や若年層検診の開始を計画していることを紹介し、「健保アプリの発展を通じ4,000万人と直接つながる健保DXの実現を進めている」と述べました。

国庫補助に係る特例減額については、令和8~10年度の3年間、控除額を各年度約500億円引き上げる時限措置が講じられます。林氏、藤井氏はいずれも「国庫補助率は少なくとも現行の16.4%を維持すべき」と求めました。

まとめ・今後のスケジュール

今回報告された健康保険法等改正案の主な施行日は以下の通りです。

  • 令和8年8月1日:高額療養費制度の考慮事項の明確化
  • 令和9年1月1日:医療機関の業務効率化支援の一部
  • 令和9年3月(想定):OTC類似薬の一部保険外療養の創設(公布後1年以内)
  • 令和9年4月1日:子育て世帯の保険料負担軽減、国保組合の見直し、協会けんぽ関連等
  • 公布後2年以内:妊娠・出産に対する支援の強化(出産費用の現物給付化)
  • 公布後5年以内:後期高齢者医療制度における金融所得の勘案

法案は今通常国会に提出済みで、今後国会審議に入ります。OTC類似薬の対象成分の詳細、出産費用の基本単価の水準、高額療養費の年間上限額など、具体的な制度設計は告示・政令事項として今後の検討に委ねられています。

▶︎第211回社会保障審議会医療保険部会 

OTC類似薬に「特別の料金」、出産費用の現物給付化へ──健保法等改正案を医療保険部会に報告

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