ケアプラン1割負担、まず「住宅型ホーム」から──社会福祉法等改正案、衆院を通過し参院審議へ

92 posts

介護保険のケアプラン作成費は長く全額が公費と保険料で賄われ、利用者負担は導入されてこなかった。その壁が、住宅型有料老人ホーム入居者を入り口にして崩れ始めている。政府は2026年4月3日に「社会福祉法等の一部を改正する法律案」を閣議決定し、新設の登録制度の対象となる有料老人ホームの入居者向けに新類型「登録施設介護支援」を設けて原則1割(所得に応じて1〜3割)の利用者負担を組み込んだ。法案は5月26日の衆議院本会議で賛成多数により可決され、同日、参議院に送付された。

法案の正体──複数の法律を束ねた一括改正

今回の法案は、社会福祉法を中心に、介護保険法、老人福祉法、障害者総合支援法、児童福祉法、社会福祉士及び介護福祉士法、生活困窮者自立支援法、生活保護法などを一括で改める形をとる。「地域共生社会の実現に資する包括的支援体制の拡充」「福祉人材の安定的な確保・定着支援」「質の高い福祉サービス確保と支援基盤の強化」が柱で、介護保険法部分にはケアマネジャー制度の見直し、有料老人ホーム登録制度の創設、人口減少地域向けの「特定地域サービス」の新設、そして本稿で取り上げる「登録施設介護支援」の創設が含まれる。

施行は原則として2027年4月1日。ただし登録施設介護支援に係る規定は「公布日から3年以内に政令で定める日」とされ、本格施行は遅れる可能性がある。

新類型「登録施設介護支援」──登録有料老人ホーム入居者に1割負担

「登録施設介護支援」は、中重度の要介護者を入居させる有料老人ホームのうち新設の登録制度の対象となる「登録有料老人ホーム」の入居者を対象に、登録施設サービス計画の作成、連絡調整、地域活動参加支援、施設入所が必要な場合の紹介などを一体的に提供する新サービスだ。法案要綱では「登録施設介護サービス計画費」を費用額の100分の90と規定し、所得に応じ1〜3割の利用者負担を居宅介護サービス費等に準じて求める設計になっている。単位数や指定基準の詳細は今後の省令・告示で定められる見通しだ。

背景には、住宅型有料老人ホームで「囲い込み」と呼ばれる課題が長く指摘されてきたことがある。施設側が併設のケアマネジャー事業所を通じて、自社系列のサービスにケアプランを偏らせる構造だ。新類型は、登録有料老人ホーム入居者のケアマネジメントを別建ての制度に位置づけ、1割負担を介在させることで利用者の選択意識を高める狙いもにじむ。

厚労省は4論点を提示──「登録有料老人ホーム入居者」に限定して着地

議論の出発点は社会保障審議会介護保険部会の第129回(2025年11月20日)にさかのぼる。厚労省はケアマネジメントへの利用者負担導入について、①幅広い利用者から徴収する案、②所得状況を勘案する案、③給付管理事務の実費相当を徴収する案、④住宅型有料老人ホーム入居者から徴収する案の4論点を整理した。

続く第131回(2025年12月15日)、第132回(2025年12月22日)のとりまとめに向けた議論で、賛否は鮮明に分かれた。

日本介護支援専門員協会副会長の小林広美氏は「ケアマネジメントへの利用者自己負担導入は、介護保険サービス全体の利用控えにつながりかねない」と述べ、居宅ケアマネ全般への拡大に強く反対した。一方で、住宅型ホーム限定で通常の居宅ケアマネジメントには波及しないことを条件に、一定の理解も示している。日本医師会常任理事の江澤和彦氏は、住宅型ホーム入居者向け新類型について「囲い込みを是認しかねない」と懸念を指摘した。

これに対し、日本経済団体連合会の井上隆氏は「現役世代の負担を減らしていく努力も必要」として利用者負担導入の方向を支持し、将来的な全居宅ケアマネへの拡大を進言した。健康保険組合連合会の伊藤悦郎氏も他サービスとの公平性確保の観点から支持を表明している。

結果として、法案は4論点のうち④に絞り、登録有料老人ホーム入居者向けの新類型に限定した形で国会提出された。①の幅広い負担導入は「引き続き幅広く負担の在り方を検討すべき」との意見が部会資料に記載され、2027年度の次期介護保険制度改正に向けた継続論点として持ち越されている。

同時に動く改正──ケアマネ更新制廃止、特定地域サービス、有料老人ホーム登録制

法案には、ケアプラン有料化と並んで現場に直接効く改正が複数組み込まれている。

まずケアマネジャーの資格更新制廃止だ。介護支援専門員証の有効期間と、交付・更新のための研修を廃止する。代わりに都道府県知事が行う研修を受講するものとし、正当な理由なく受講しない場合は受講命令を出し、命令に従わない場合は1年以内の業務従事禁止を可能とする規定が盛り込まれた。

次に「特定地域サービス」の創設。人口減少が進む地域では既存サービスが採算面で維持しにくく、要介護者向けに訪問介護・訪問入浴介護・通所介護・短期入所生活介護、要支援者向けに介護予防訪問入浴介護・介護予防短期入所生活介護を提供できる「特定地域居宅サービス等事業」の新類型が設けられる。ただし法案要綱上、特定地域居宅サービス等事業の列挙に訪問リハ・通所リハは入っていない。リハ職への影響は、中山間・離島地域における介護サービス提供体制全体の再編を通じた間接的なものとして見ておく必要がある。

そして有料老人ホーム登録制度。中重度等の要介護者を入居させる一定の有料老人ホームに、都道府県等への登録制度を新設する。登録施設介護支援はこの登録制度と組みで動く仕掛けで、住宅型ホームの実態把握と適正運営を一括で進める設計だ。

まとめ・今後の展望

ケアプラン作成の1割負担導入は、登録有料老人ホーム入居者という限定された範囲で「最初の一歩」が踏み出されようとしている。法案は5月26日に衆議院を通過し、同日参議院に送付された。原則施行は2027年4月1日だが、登録施設介護支援に係る部分は公布から3年以内に政令で定める日とされ、単位数・指定基準の検討が今後の焦点となる。介護保険部会では幅広い利用者負担導入が継続論点として残されており、今回の改正はその試金石となる。

参考資料

1. 厚生労働省「社会福祉法等の一部を改正する法律案の概要」https://www.mhlw.go.jp/content/001685800.pdf
2. 厚生労働省「社会福祉法等の一部を改正する法律案要綱」https://www.mhlw.go.jp/content/001685801.pdf
3. 内閣法制局「社会福祉法等の一部を改正する法律案」https://www.clb.go.jp/recent-laws/diet_bill/detail/id=5265
4. 上野厚生労働大臣記者会見(令和8年4月3日)https://www.mhlw.go.jp/stf/kaiken/daijin/0000194708_00911.html
5. 第129回社会保障審議会介護保険部会 資料(2025年11月20日)https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_66123.html
6. 第131回社会保障審議会介護保険部会 資料(2025年12月15日)https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67187.html
7. 第132回社会保障審議会介護保険部会 資料(2025年12月22日)https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67690.html

ケアプラン1割負担、まず「住宅型ホーム」から──社会福祉法等改正案、衆院を通過し参院審議へ

最近読まれている記事

企業おすすめ特集

編集部オススメ記事