PTとATのダブルライセンス
ー 富永先生の簡単な経歴を教えていただけますか?
富永先生 理学療法士(以下PT)になって25年経ち、最初は鹿児島県鹿屋市の病院で11年ほど勤務し、その後、国立スポーツ科学センターに4年間勤務していました。
PTになる前から教育に興味がありましたので、教員として2年間勤務しながら、サッカーのユースでトレーナー活動をしていました。
そのチームのトップリーグで働いているトレーナーが辞めるきっかけで、J1(J1部リーグ)でお仕事をさせていただきました。Jリーグには3年間在籍し、今の学校からの要請があり、現在に至ります。
PTの他に、アスレチックトレーナー(以下AT)の資格も保持しています。きっかけは、国立スポーツ科学センターに勤務している頃、推薦状をいただく事ができたので、必死に勉強し、合格する事ができました。
高齢者とスポーツ選手、診るべきポイントは・・・
— 理学療法士になろうと思ったきっかけもスポーツ分野に進むことが目的だったのですか?
富永先生 それが全く違うんです。私は流れのままに、スポーツ分野へ進んでいきました。
そもそも、PTを目指したきっかけは、祖母のお見舞いでPTの能力を垣間見たからです。私が話しかけても何も言わないのに、PTの方が話しかけると答えていたんです。
それをみて「人と接する仕事がしたいな」と思ってPTになりました。それまでは教員になろうと思っていたんですよ。
— 10年以上の病院経験がスポーツ分野で生かされることはありますか?
富永先生 高齢者を担当する機会が多かったので、全体をみる能力が身についていたことですね。
また、内科のリハビリもやっていましたので、総合的に幅広い知識があったということが生かされています。 PTの得意分野は動作分析ですが、高齢者とスポーツ選手で、診るべき動作のポイントは、実は同じなのです。
私も気付くまでには時間がかかりましたが、基本的にどのような方に対しても診るべきポイントは「基本動作(立つ、座る、歩くなど)」なのです。
スポーツ選手でも、ケガをする選手の多くは、この基本動作ができていない場合が、圧倒的に多いです。
そのポイントが分かったことで、スポーツ選手に対して特別、難しいという感覚を持たなくなったきっかけでもありましたね。
スポーツ現場とPTの現状
— 国立スポーツ科学センターのような施設と、チームに帯同する理学療法士(以下PT)の関わり方の違いはありますか?
富永先生 リハビリテーション(以下リハ)施設では、選手が施設に来てリハを行いますが、帯同の場合、能動的に働きかけないといけないという点が最も違います。
帯同の場合ですと、チーム内のスタッフと連携を取っていく必要があります。また、帯同する場合、選手の健康管理等も含んだ幅広い活動が求められます。
どちらにも求められる能力は、やはり治療です。
もちろん他職種も関わりますが、リハという認識が他職種から多いためPTの対応が多いと感じます。J1(J1部リーグ)では、「各チームにフィジオ(PT)を帯同させたほうが良い」という提言もあります。
ただ、J1では金銭的にも問題はないですが、J2(J2部リーグ)、J3(J3部リーグ)になるとチームによっては、AT(アスレチックトレーナー)や鍼灸師に頼ることが多いようです。
スポーツ業界を知っているからこそ伝えられること
——やはり、学生さんたちはスポーツ分野に進むために入学してくることが多いですか?
富永先生 そうですね。基本的には、高校生から現役で入学してきますが、ごくわずか社会人入学の方もいます。
ただ、PTに関していいますと、スポーツ業界への就職者があまりいないというのが現状です。クリニックから派遣され、スポーツに関わるというケースはあります。
スポーツの世界にどっぷり浸かるためには、ある程度コネといいますか、つながりが重要になります。その点、本校はスポーツ分野で活躍された方、現役で帯同している先生方も多く在籍しているので、つながりは十分あります。
ただ、私たちもその厳しさを知っているが故、卒後すぐに紹介するということはできないというのも本音です。 学生には、スポーツ業界のことを包み隠さず話しています。例えば、契約は個人契約で社会保障も入れないなど、厳しい話もすると尻込みしてしまうのだと思います。
また、PTの苦手な部分で、自分を売り込むことができないのです。それを、学生の頃から身につけさせるのも、なかなかうまくいきませんね。
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富永先生 経歴
1968年 福岡県生まれ
1988年 国立療養所福岡東病院付属リハビリテーション学院入学
1991年 同校 卒業 1991年 医療法人恒心会 小倉記念病院(おぐらきねんびょういん)入職
現 恒心会おぐら病院
同年 理学療法士免許取得
2002年 同病院退職
同年 国立スポーツ科学センターへ、契約研究員として入職
2006年 任期満了につき退職
2006年 学校法人 滋慶学園グループ 東京スポーツレクリエーション専門学校入職
同年 東京フットボール株式会社(FC東京)U-15メディカルアドバイザー就任
2007年 FC東京U-15、U-18メディカルアドバイザー就任
2008年 FC東京 トップチームトレーナーに就任
2010年 同チーム退社
2011年 現東京メディカル・スポーツ専門学校 講師として勤務
2013年 理学療法士科 学科長
現在に至る
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