FCバルセロナで働くようになったきっかけ
ーー理学療法士になろうと思ったきっかけを教えてください。
ジョナタン:たくさんの要素があると思います。人々のために貢献するこの職業がまず好きでしたし、スポーツの世界・サッカーの現場が常に好きでした
いろいろな人と仕事をするのが好きなのも一つの要素ですね。病院で2年間働いた際にプロフェッショナルとしてさらに成長したいと感じ、バルサで働くことを決意しました。
なりより多くの人と関わり感謝されるこの職業が私の内面・外面を満たしてくれるものなのです。
ーースペインでは一般的に理学療法という職業は認知されている職業なのか?人気のあるものなのか?
ジョナタン:物凄く広く知られていますよ。
ここ数年で大きく発展した分野のひとつでもありますし、大学内での知識は勿論、理学療法を学べる大学もバルセロナだけでなくスペイン全土で毎年増えています。
出口のたくさんあるキャリアですし、かなり多く利用されています。今日では一般レベルでの身体に対する知識の水準が高まり、より身体をケアする意識が高まっています。
ーー理学療法士になりたい方もたくさんいらっしゃいますか?
ジョナタン:はい、ここ数年で大きく増えました。スポーツチームのレベルで話をするならば、以前は理学療法士というものは少なくマッサージ士が非常に多かったです。しかし多くのチーム・クラブは大学などでの経験やより専門性の高い知識を持った理学療法士を導入するために、マッサージ士を外したのです。
ーー FCバルセロナで働くようになったきっかけを教えてください。
ジョナタン:おそらくキーポイントとなったのは常にプロフェッショナルとして動き続けたこと。きっちりと仕事を行うこと。
バルサのような、入るのに大きなステップを要するクラブに入るのをサポートしてくれる友人関係を持つこと。そして犠牲を払うこと。
家族と離れる時間も多いですし、現にこうして日本にいる間は私も子供達と離れ離れの時間になりますからね。
ただこういったものに対してプロフェッショナルとしての報酬があることも忘れてはなりません。
同じくかつて私の勤めていた病院がバルサの選手達がメディカルテストなどを行う場であったということも大きな要因でしょう。
幸運にもその際の同僚が一人バルサに入り、私にバルサのサッカー部門の下部組織で仕事をするきっかけを与えてくれました。
これが何よりバルサのような巨大なクラブに入るベースになる部分だと思います。
ーーバルサにおける理学療法士の立ち位置とは
ジョナタン:基本的には全てのスタッフと綿密なコミュニケーションが取れていなければいけませんよね。
全員がチームを構成する一員ですから、監督、フィジカルトレーナー、主務(スペインにおけるマネージャー)、全てとフィードバックが相互的になくてはいけません。
ロッカールームにも上手く溶け込む必要があります。
コミュニケーションやロッカールームへの適応が上手くいかないと理学療法士としても結果を残すのが難しくなります。
それ故ロッカールームをどのように管理するかということを知っておくのは非常に大事です。
選手というのは各々性格があり考え方を持っていますし、選手・監督・フィジカルコーチが何を知りたがっているのか何を必要としているのかを理解するというのは簡単なことではありません。
全員が一致団結したチームを作る必要があります。
0−3で負けている時のある事件
ーーチーム内にヒエラルキー(階層制)などはありませんか?
ジョナタン:基本的には各々が自分の仕事をしっかりと行い、コミュニケーションを取ることに努めれば問題ありません。
全員がやるべきことを各々理解しているのでヒエラルキーといったものは存在しませんし、自分のやるべきことに集中し他の人の仕事に介入していく必要はありません。
チームを円滑に動かしていくためには他の人間がやることに嫉妬を抱くようなことは役に立ちませんよね。
仕事をきっちりと分類し、敬意を持って仲間と接する必要があります。自分のポジションを知るということです。
理学療法士というのは常に二列目に控えるようなポジションですし、前に出るようなことは必要ありません。
唯一前に出る必要があるのは監督であり、仮にヒエラルキーがあるのであればチームを率い責任を負うポジションである監督のみが上に立つことになります。
監督とは十分なコミュニケーションを取り、誰がどこのフィールドを管理するのか、良い仕事が出来ているのかを確認を行います。
なので、もしヒエラルキーというものが存在するとすれば、常にチームに対する決定を行う監督が前に立ち、我々はその後ろに位置します。
ーーバルサで働いていて印象的なエピソードなどはありますか?
ジョナタン:監督が常に繰り返し話して私に思い出させる話がありますよ。私も理学療法士だとしても監督の話を聞くのがすごく好きで、彼の言葉からいつも学ぼうと思っています。
監督がいる時でも、いない時でも選手をサポートするのは必要ですからね。私もロッカールームを構成する一員ですから、選手を励ますのがすごく好きです。
ある時スペインのカップ戦をプレーしていて0−3で負けている時、監督とフィジカルコーチはロッカールームの外に残り、私はチームをいつものようにロッカールームに連れて行かなければいけませんでした。
休憩時は何かあった際に備え、私は常に選手のグループといなければいけません。
そこで私は選手に対し大声で声をかけ始めました。
どのようにプレーしなければいけないのか、何が足りないのか…それは以前監督が選手たちに声をかける際に用いていた言葉でした。
それをロッカールームの扉で聞いていた監督は石のように固まりドアを閉め、外で何を言っていたのか反芻していたそうです(笑)
こういったことは一般的には理学療法士は行いませんが、このタイミングで私のキャラクターはこうさせてしまったのです。
勿論皆驚いていましたが。そしてそれが終わると、丁度監督が扉を開けて入ってきたので選手をケアするための自分のベッドの方に向き直りいつものようにテーピングをしているフリをしました。
後になってから監督は私のミーティングを聞いていたことを明かし、素晴らしい言葉とサポートだったと褒めてくれましたよ。
この話は私の監督が他の監督などに「こいつのミーティングを聞いてみろよ」などと悪フザケし、いつも思い出させてくれますよ。私は何も言いませんけどね。(笑)
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JONATHAN ALMIRALL GALBETE/ジョナタン・アルミラル・ガルベテ先生経歴
【所属】
・FCバルセロナ理学療法士兼フットサル理学療法部門総括責任者
通訳
奈良坂周(ならさか・しゅう) 株式会社GRANT CAREER
スポーツエージェント。スペイン、バルセロナにて選手・チームのマネージメントや通訳、選手の生活をサポート。