【作業療法士が教える】食事介助における「望ましいスプーン操作」|佐藤良枝先生

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望ましいスプーン操作とは?

佐藤良枝先生 前回、「してはいけないスプーン操作」についてお話したので、今回は「望ましいスプーン操作」についてご説明いたします。下唇にスプーンの背を当てて軽く下方に向かって圧を加えます。相手の上唇が丸まって食塊をとりこんだらスプーンを水平に引き抜きます。

下唇

基本はこれだけです。
 

長年、不適切なスプーン操作による介助を受けてきた方だと、この方法では食べられない場合もあるので、そのような時には前舌にスプーンの背を当て下方に向かって押してください。


ところが、現実にはスプーンを口の中に突っ込み過ぎていたり、きちんと下方に向かって押していなかったり、スプーンを引き抜く時に斜め上に向かって引き抜いたりしている場合が非常に多いので気をつけていただきたいと思います。


長年かけて積み上げてきた介助者の手続き記憶を修正するのは困難な場合も多いものですが、だからこそ、ポイントを明確に言語化して意識しながら繰り返し実践することが重要です。


修正の過程は時に苦しいものですが、修正ポイントを明確にした上で繰り返し行うことで必ず介助が変わってきますので、あきらめずに根気よく挑戦していただきたいと思います。

 

なぜ、スプーンを口の中に入れてはいけないのか

POST原稿 説明図.001
 

それでは、適切なスプーン操作のポイントを嚥下5相にそってご説明しましょう。なぜ、スプーンを口の中に入れてはいけないのか。口腔期つまり咀嚼の本質的な働きは舌の動きによって食塊を咽頭に送りこみやすくするということにあります。


ところが、スプーンを口の中に突っ込んでしまえば舌が口腔内で動ける空間が少なくなってしまいます。「口の中に入れてあげよう」という善意が結果として、口腔期のはたらきを阻害してしまうことになってしまうのです。スプーンを口の中に入れすぎないようにしてください。


スプーンの背で下唇もしくは前舌を押すと、頚部が前屈しやすくなり上唇でとりこみやすくなります。きちんと押してあげた方がかえって食べやすくなるのです。

 

斜め上ではなく水平に

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私たちは食べる時にただ単に口を閉じているだけではありません。体幹を前傾させながら食塊に向かっていき、頚部を前屈し上唇を丸めて食塊をとりこんでから、体幹を後傾させるという身体全体で食べているのです。


上の歯でこそげ落としてしまうと、このような身体全体のはたらきを阻害してしまいます。言い換えると、上の歯でこそげ落とすという不適切なスプーン操作が食べることに関する身体全体の廃用を促してしまっているのです。


スプーンを引き抜く時には斜め上ではなく、水平に引き抜くようにします。斜め上に向かって引き抜くと頚部が後屈してしまい顎が上がってしまいます。 この肢位はどこかで見かけませんでしたか?


そうです。救命救急のABCのA、気道確保の肢位です。斜め上に引き上げると食事介助をしながら気道確保をする、つまり誤嚥を促すことになってしまいます。
 

決して斜め上に向かってスプーンを引き抜いてはいけないのです。

 

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佐藤良枝先生経歴

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1986年 作業療法士免許取得

肢体不自由児施設、介護老人保健施設等勤務を経て2010年4月より現職


2006年 バリデーションワーカー資格取得



2015年より 一般社団法人神奈川県作業療法士会 財務担当理事

隔月誌「認知症ケア最前線」vol.38〜vol.49に食事介助に関する記事を連載


認知症のある方への対応や高齢者への生活支援に関する講演多数


一般社団法人神奈川県作業療法士会公式ウェブサイト「月刊よっしーワールド」連載中

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