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【山口光國先生】山嵜先生・入谷先生・福井先生。3人の理学療法士から学んだこと

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自分の理想と理念が将来をつくる

山口光國先生「将来に不安を持っている」ということを直接聞いたことはないですが、「戸惑っている」というのは事実だと思います。


1、2年目は何がなんだかわからないまま過ごし、3年目で周りとの差に気づき、5年目で「自分は一体なにやってるんだろう」という壁にぶつかり始め、7年目で「あきらめる人」と「あがく人」の大きく二つに分かれていく流れになっているように感じます。


最近では給料が少ないなどといわれ、高校でも進学を進めない事があるということを聞いたことがあります。


ただ、それに関してあまり相談を受けたという経験はありません。

 

私がかつていた昭和大学藤が丘病院時代には、世間への裏付けも必要ですが、その前に「自分がやることに対する自分の裏付け」ということをしっかりやらないと揺らいでしまうということを常に頭に入れながら臨床を行ってきました。


いつ頃かはわかりませんが、いまでは学会で発表することがステータスとされる時代になってしまっているのではないかと思います。

 

「自分は何をするヒトぞ?」という部分が見失われていて、本質的な部分である自分たちの目標だとか理念だとかをなくしてしまっているように感じます。


これらが問題となって将来への漠然とした不安というものが脳裏をよぎるのではないでしょうか。

 

そういった意味では、私が全国で講義をする中で、治療技術、知識はすごく大切ですが、その前に考えておかなければいけないことは何なのか、ということをお話ししています

 

国が私たちの評価に困っている現状

 

リハビリ養成校に進学する人たちの中には必ずしも「人のために」ということを目的に進学する人たちだけではないと思います。

 

人によっては、テレビで見たからとかマンガで見たからとか、場合によっては学校の先生にススメられたからという人もいると思います。


その中で、理想と現実を突きつけられたときにがんばれず「あきらめる人」が出てくるのではないかと思います。

 

そのギャップを受け入れ、少しでも理想を追い求め、今日より明日、明日より1年後というように見れる人が「あがく人」だと思います。


その理想と現実という部分において、理想を追い求めづらい原因は「医学」という学問がもつ特徴がそうするのだとおもいます。

 

まず、医療として国からお金をもらうために「根拠」というものが必要になります。

 

医学には2万以上診断名があるもののうち、はっきりと原因結果がわかっているものはそのうちの2割しかないと言われています。


そのうち8割は、「なんで良くなるのかも、なんで悪くなるのかもわからない」という状況です。医学というものはもともと、根拠というものをつくりづらい分野であるということです。


イギリスの生物学者ハックスリは「人間の心の動きも体の動きも、化学的反応と物理的反応と精神的反応が複雑にかかわり合った結果である」といっています。


診断名がわかっただけでも痛みが引いてくるなど、病態は変わってないのに愁訴は変わってしまうということが起こりうるということです。

 

そうすると、すべてのセラピストがそのようなことができるか、というと現実は難しい、だからこそ平均値をとるけれど、なかなかそれも難しい。


そうなると、私たちの仕事が国から評価が下げられているかと言われるとそれだけではなく、国も私たちの評価に迷っているということがあるのではないでしょうか。

 

科学の本質

 かつて臨床は、経験に基づくものでした。ただ、経験というものは10人中2人だけが良くなるとみんな良くなったように錯覚するという思い込みがあります。

 

その思い込みが、本当に思い込みかどうか、見いだすのが統計でした。

 

その統計的事実によって原因と結果というものを根拠あるものにしていこうということが時代の流れの中で行われてきました。


ここまでは、良かったのですが時代の移り変わりにつれ「科学」の本質が失われているように思います。科学は万能ではなく得意、不得意があり、再現性があるものを得意としています。

 

そのため、科学で人間を扱うときは非常に難しくなり、最初から理学というものには宇宙学や地質学などは含まれるが医学は含まれていません。


ですから、この部分に関しては再現性を追い求めることは非常に難しいということから応用科学とした位置づけになりました。

 

統計学が生まれたのは、社会学と心理学から始まり、形のないものを表すとき数学を利用して表してきました。心理学において、1978年春木先生とバンデューラ先生が、「相互決定理論」というのを出しました。


簡単に説明しますと、原因と結果というのはどっちも原因になったり結果になったりし、分けることができない複雑な関係であるというものをうちたててから、心理学というものは単に原因と結果を一方向だけで結びつけてはいけないという考え方です。

 

それがまだ私たち理学療法の中には浸透してきていない考え方です。

 

権利を得るには、義務を果たしなさい

基本的に今ある理学療法士、作業療法士の養成校は国家試験に受かるための勉強をします。そのため、臨床に関する授業がすごく割合的に少ないのが現状です。

 

昔は、社会経験の中で、現場の中で勉強するのが普通でしたが、今では国の援助でも勉強ができるようにした大学院の制度があります。

 

最近では、大学院に進学するセラピストも増えてきてその理由も様々ですが、私はそれでいいと思います。

 

たとえば、臨床の現場で「いいセラピストとは?」と言ったときに、知識、技術があるのは大事ですが、それ以上に沢山の経験、たとえば恥ずかしい想い、悲しい想い、つらい想いをしたという経験が非常に重要だと思います。

 

「ふらふら遊んでばかりいた」というような経験も、対ヒトとなった時には非常に重要だとおもいます。

 

私たちは遊びたい盛りに国家試験の勉強などに費やした人たちもいる中で、一つ大学院の進学がヒトとのつながりをつくる場所という理由だけでもいいように思います。

 

ただし、今の職場にいる患者さんを犠牲にするというのは少し考えなくてはけないと思います。職場に行かせてもらう権利を得るには、その義務を果たさなければいけません。

 

私の7つほど下の後輩ですごい女性がいまして、「私はグッチー(その女性が山口先生をこう呼ぶそうです)みたいに夜も休みもなくプライベートもなく、理学療法ばかりなんってまっぴら!

 

私は、遊びもプライベートも大事!でも患者さんを犠牲にすることはできない。

 

グッチーが勉強して回っているあいだは、私がその患者さんを絶対に悪くはしないから、勉強した最新情報を私に全部教えなさい。」といわれました。

 

これはすごく「素敵だな」と思いました。これが、「権利を得るには、義務を果たしなさい」ということです。

 

お前は偉くなれ

山㟢先生からはとにかく「お前は偉くなれ」といわれてきました。

 

「偉くなればいろんなヒトが自分に耳を傾けてくれる、だからお前は偉くならなくちゃいけないんだ」と。

 

偉くなるためにはそれなりに実績も積まなくてはなりませんし、勉強もしなくてはいけませんでした。

 

そうすることで、自分の理学療法というものを作り上げてきました。その中で私が常に意識していたのが「私は何をするヒトぞ。」ということです。

 

あまりいい表現が浮かばないのですが、私は元々セラピストになりたいために学校に通いました。

 

しかし、学校で教えられるのはリハビリテーションだけでした。でも私はセラピーを勉強したかったため、セラピスト理念というものをつくり、勉強してきました。

 

それは、自分のキャリアアップというためではなく自分の仕事の本質で、他の人たちと話すために必要でした。

 

いろんな理学療法士がいていいと思っている中で、私はセラピストを選びました。

 

そうすると、自分以外のヒトがやっていることを羨ましいなと思うことがあると思いますが、それは思ってもいいと思います。

 

しかし、自分は何をやりたいのか?本当にそうなりたいのか?という自分の理念が必要になってくると思います。

 

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山口光國先生経歴

【資格】

理学療法士 健康心理学修士

【経歴】

 高卒業後、日本サッカーリーグの日立製作所(現 柏レイソルズ)にFWとして入団。故障から21歳で引退し、都立府中リハビリテーション専門学校に入学。卒業後、昭和大学藤が丘リハビリテーション病院に入職し、身体運動を熟知したリハビリテーションの専門家として治療にあたる。

2005年肩の故障で苦しんだ現役時代からの絶大なる信頼関係のある牛島氏の要請を受け、横浜ベイスターズにフィジカルコーチとして就任。05、06年と肩の故障者を出さないという功績を果たす。

2007年からは、多くのプレーヤーからの要望に応え独立。 また、昭和大学在籍中は同大学整形外科特別研究生として、整形外科疾患、特に肩関節を専門に研究活動を行い、セミナー、学術集会で講師を務めるなど幅広く活躍。さらに2009年に桜美林大学大学院健康心理学修士課程を終了し、日本健康心理学会会員となり、心身両面から対応についての研究に携わり、現在も研究を続けながら一般、スポーツはもとより、医療従事者にむけての勉強会、講演・セミナー活動も積極的に行っている。


【所属】
㈲セラ・ラボ http://www.thera-labo.com  2010年12月、「こころとカラダのコンディショニングルーム」を開設。

【著書】
投球障害のリハビリテーションとリコンディショニング―リスクマネジメントに基づいたアプローチ (SkillーUpリハビリテーション&リコンディショニング)
結果の出せる整形外科理学療法−運動連鎖から全身をみる
肩関節運動機能障害―何を考え、どう対処するか (実践MOOK・理学療法プラクティス)
投球障害肩 こう診てこう治せ―整形外科医と理学療法士からのアドバイス
整形外科理学療法の理論と技術
野球人牛島和彦の「偶然を必然に変える」投球術
最新版 本気で治したい人の肩こり・肩の痛み (明解!あなたの処方箋)
セラピストの動きの基本―運動器リハビリテーション新時代

【学会】
日本肩関節学会・アジア肩関節学会 会員
日本理学療法士協会 会員
日本健康心理学会 会員
その他
(株)ワコール技術指導員
群馬パース大学客員教授
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