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【竹林崇|作業療法士】吉備国際大学 准教授 -第2章-

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生活期での脳卒中後の上肢に対するリハビリテーション

 

ーー 生活期での「脳卒中後の上肢に対するリハビリテーション」に関して、竹林さんが大切にしていることを教えてください。

 

竹林 まず、基本的に「患者さん自身に意思決定してもらうこと」を援助しなければならないと思っています。

 

入院中は、どうしても与えられるばかりのリハビリテーション、つまり「受動的なリハビリテーション」を受けてきた方が多いと思いますが、療法士は自宅にはついていけません。

 

患者さんは主体的に、ご自分の問題に気づき、それを解決するために動いていってもらわなければなりません。

 

生活期の脳卒中後の対象者の方が、仮にCI療法を選ばれるのであれば、練習を行うための目標を主体的に意思決定し、アプローチに参加してもらうことを説明します。

 

この点に関しては、特にCI療法だけではなく、こういった説明は理学療法や作業療法でも同じように必要なものです。

 

そういったリハビリテーションにおける意思決定をないがしろにして、機能に対する療法室の中だけの技術的な介入のみを提供してしまうと、「機能を良くするための運動療法がリハビリテーション」、「療法士のおかげでよくなった」、「療法士がいないと練習や生活では使えない」という誤解が患者さんに芽生えてしまうかもしれません。

 

そうすると、患者さんは「療法士が提供する(運動療法をはじめとした)機能的なアプローチで身体が良くなった」という経験をしているので、リハビリテーションは「全人的復権や生活への回帰」という意味をなさず、「機能を上げるための運動」とだけ捉えられてしまう可能性があります。

 

ただ、逆に患者さんが練習の中で達成したい目標を決め、療法士が提供したアプローチの中で患者さん自身がより良い方法を自分で考え、目標を達成するという経験をしっかり作っていく必要があると考えています。

 

これにより、患者さん自身が、「自分で考えて、麻痺手を動かしたら良くなった」という経験をしてもらうことが、生活期で患者さんが生活していく中で、麻痺手を使い続けるために重要なことだと思っています。

 

麻痺手を生活の中で使う

 

ーーすでに入院中で「やってもらう運動療法」をリハビリテーションと誤解してらっしゃる方々には、竹林さんはどのように患者さんに主体的に麻痺手を使ってもらう介入を進めていくのですか?

 

 

竹林 私は、基本的に「印象」や「熱意」だけではなく、研究の内容をベースに客観的に説明を行います。研究のデータを見てもらいながら、どうして麻痺手を生活の中で使用することが大切なのかについて説明します。

 

50時間の集中練習のみを作業療法室で実施し、生活における麻痺手の使用をあえて促さなかった群と50時間の集中練習に加え、生活の中で麻痺手を使ってもらうための手法を追加した群を比較した研究があります。

 

 

集中練習のみを実施した群では、半年後には徐々に上肢機能は低下し、元に戻っていこうとしているのがわかります。

 

 

一方、生活の中で麻痺手を使用した群は、介入前後で麻痺手が改善し、その後私たち療法士が直接介入せずとも、長期的に機能改善を認めているのがわかります。

 

つまり、麻痺手を生活で使用することの重みを患者さんにご理解いただけないのであれば、仮に患者さんの時間を50時間、その分の診療費をいただいて実施しても、機能が元に戻ってしまう可能性があるということです。

 

この重要性を説明すること、もしくは麻痺手の生活における使用を促すためのプログラムを実施しない限り、機能が戻ってしまう可能性は大きいということです。

 

これらをちゃんと説明し意思決定してもらわないならば、最初から時間とお金が勿体無い訳ですから、介入自体をやらないという選択肢もあると思うのです。

 

ただ「生活の中で手を使ってください」と大雑把に伝えても言っても、何をどのようにして良いのか解らない方が大勢を占めます。

 

ですから、麻痺手をいつ、どのように使いたいのか、といった目標が必要となります。そして、目標を達成し、麻痺手を生活で使用できるような体系的なアプローチが必要になります。

 

患者さん(療法士も)はよく「麻痺が良くなったら使う」と考える方が多いのですが、「麻痺手をよくするために使う」んです。使ってもらわないと、短期的に結果が出ても、長期的には元に戻ってしまう可能性が大いにあります。

 

なぜ上手くいかなかったかまで書いてもらう

竹林 麻痺手を生活で使うための体系的なアプローチはTransfer packageという手法を使います。例えば、何も工夫せずに、活動を行っても不可能な患者さんが、自助具や環境を工夫すればできることが多々あります。

 

練習で、それらの自助具の工夫や環境調整について説明し、実際に練習してもらいます。

 

そこで、練習したことを宿題に出して、生活で実際に一度実施してもらいます。ただし、「使ってくださいね」と口頭で伝えるだけではなく、書面に「どこで」、「どのように」といった状況や手段を詳しく記載し、患者さんに提供します。

 

また、その実施状況を教えてもらえるように、日記を記載してもらいます。

 

日記の内容も、ただ「やった」、「やっていない」、「できた」、「できなかった」の報告だけではなく、「実際やってみてどう感じたか」、「上手くいかなった場合はなぜ上手くいかなかったか」まで書いてきてもらいます。

 

そして、それが明らかになれば、より適切な方法を提案し、再び実施してもらいます。これを繰り返します。

 

 

例えば、T字の髭剃りだと難しいなら電導に変えてみたらどうかとか、重くて痙縮が亢進し、異常な共同運動パターンが出現して、母指が握りこみすぎてしまうなら、それを抑制するスプリントを作ったらどうかとか。

 

そういうやり取りを繰り返しているうちに患者さんも麻痺手の使い方を少しずつ学習していきます。

 

CI療法というとスパルタな手の機能訓練と思われがちですが、本来の目的は「手を使うこと」なんです。

 

そして、患者さん自身が考えて、動けるような仕組み作りをしてあげる。これがアプローチの肝だと思っています。

 

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竹林崇さん略歴

学歴

2003年 川崎医療福祉大学 医療技術学部 リハビリテーション学科 卒業

2011年 大阪府立大学大学院 総合リハビリテーション学 入学

2013年 大阪府立大学大学院 総合リハビリテーション学 終了

2013年 兵庫医科大学大学院 医科学先行 高次神経制御系 

     リハビリテーション科学 入学(現在所属)

職歴

2003年 兵庫医科大学病院 リハビリテーション部 入職

2016年 兵庫医科大学病院 リハビリテーション部 退職
2016年 吉備国際大学 保健医療福祉学部 作業療法学科 准教授(現職)

書籍

  1. 齋藤祐樹,友利幸之助,上江洲聖,澤田達徳,編(竹林崇 [分担著者]):作業で語る事例報告:作業療法レジメの書き方・考え方.医学書院,東京,2014年
  2. 道免和久,編(竹林崇 [分担著者]):ニューロリハビリテーション.医学書院,東京,2015
  3. 斉藤秀之,加藤浩,金子文成,編(竹林崇 [分担著者]):感覚障害で挑む 感覚・運動機能回復のための理学療法アプローチ.文光堂,東京,2016

学術論文

  1. Kagawa S, Koyama T, Hosomi M, Takebayashi T, Hanada K, Hashimoto F, Domen K. Effects of constraint-induced movement therapy on spasticity in patients with hemiparesis after stroke. J Stroke Cerebrovasc Dis22: 364-370, 2013
  2. Takebayashi T, Koyama T, Amano S, Hanada K, Tabusadani M, Hosomi M, Marumoto K, Takahashi K, Domen K. A 6-month follow-up after constraint-induced movement therapy with and without transfer package for patients with hemiparesis after stroke: a pilot quasi-randomized controlled trial. Clin Rehabil 27: 418-426, 2013
  3. Marumoto K, Koyama T, Hosomi M, Takebayashi T, Hanada K, Ikeda S, Kodama N, Domen K. Diffusion tensor imaging predicts the outcome of constraint-induced movement therapy in chronic infarction patients with hemiplegia: A pilot study. Restor Neurol Neurosci 31: 387-396, 2013
  4. Takebayashi T, Amano S, Hanada K, Umeji A, Takahashi K, Koyama T, Domen K. Therapeutic synergism in the treatment of post-stroke arm paresis utilizing botulinum toxin, robotic therapy, and constraint-induced movement therapy. PM R6: 1054-1058, 2014
  5. Amano S, Takebayashi T, Hanada K, Umeji A, Marumoto K, Furukawa K, Domen K, et al. Constraint-induced movement theraoy after injection of botulinum toxin type A for a patient with chronic stroke: One-year follow-up case report. Phys Ther, eoub ahead of print, 2015
  6. Takebayashi T, Amano S, Hanada K, Umeji A, Takahashi K, Marumoto K, Kodama N, Koyama T, Domen K. A one-year follow-up after modified constraint-induced movement therapy for chronic stroke patients with paretic arm: a prospective case series study. Top Stroke Rehabil22: 18-25, 2015
  7. Tanaka H, Nagata Y, Uematsu M, Takebayashi T, Hanada K, Inokawa M, Fukuhara K, Ogawa Y, Haga D, Kakegawa Y, Nishikawa T. Development of the Cognitive test for severe dementia. Dement Geriatr Cong Disord 40: 94-106, 2015
  8. Takahashi K, Domen K, Sakamoto T, Toshima M, Otaka Y, Seto M, Irie K, Haga B, Takebayashi T, Hachisuka K. Efficacy of upper extremity robotic therapy in subacute post stroke hemiplegia: An exploratory randomized trial. Stroke 47: 1385-1388, 2016

海外活動

2012年 Alabama university, Birmingham Constraint-induced movement 

     therapy training course 修了

2012年 JICA専門家として現地に短期派遣

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