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【医療従事者が見落としてがちな痛み】組織的損傷と"驚異的意味合い"とは?

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ユウタ 「痛みの教育かぁ・・・。確かに、僕はあまり痛みについて説明を受けてこなかった気がします。

 

痛みが続いてるのは椎間板ヘルニアと、脚と腰の筋肉が硬くってそれが痛みを引き起こしているぐらいにしか思っていませんでした。」

 

ベン 「筋肉の硬さや関節の硬さというのはもちろん大事な評価の一部だよ。

 

私たちもそれらについて細かく評価を行う必要があるし、それらの評価についてもオーストラリアの大学では詳しく習うからね。

 

ただ、私たちが痛みを有する‘人間’を対象としている場合、どうしても器質的なものだけでは説明仕切れない部分が多いんだよ。」

 

ユウタ 「なんだか、ちょっと難しい話ですね・・・。具体的には器質的なものってどういうことですか・・・?」

 

ベン 「ゴメンゴメン、どうしても私たちは難しい専門用語を使い慣れてるせいで、説明が不十分になってしまうね。

 

器質的なものっていうのは、要は筋肉や関節、神経や靭帯などの解剖学的なものの外傷だったり、機械的なストレスによって起こるものってことだよ。

 

例えば、骨折とは骨細胞の連続性が絶たれるもの。肉離れは筋肉の繊維と繊維が機械的に離れてしまうもの。

 

ユウタの経験した椎間板ヘルニアというのも一般的には器質的なものと考えられている。

 

ヘルニアという突出物が神経を触ることによって痛みが出ている・・・。そう説明されてきたんだよね。」

 

 

ユウタ 「そうですね。腰を曲げると痛いし、それってやっぱり器質的なものってことですよね?

 

ベン ユウタの腰痛も含め、私が今まで診てきた患者らの痛みに関連している要素の一つとして、器質的な部分ってのはもちろんあると思う。

 

おそらくユウタが怪我をした時に、数日間続いていた痛みはもちろん機械的な部分もあるが、炎症性の疼痛によるものも含まれていたと考えられる。

 

本来、炎症というものは私たちの組織の修復過程で必要とされるものなんだ。それらの炎症もしばらく経つと落ち着くし、痛かったはずの切り傷も数週間もすれば治るよね?

 

・・・ただ、私たちは先ほど言ったように、器質的なものだけでは説明できない部分があるんだよ。私たちは、‘感情や心理’を持った人間ってことを忘れてはいけないんだ。

 

ユウタ 感情や心理と僕の痛みにどんな関連があるんですか?

 

もちろん、今まで自分の腰のせいですごく感情的になったし、どうしようもないやるせない思いにもなったし。

 

でも、僕の腰はいっこうによくなりませんでした。

 

ベン そこが多くの医療従事者が見落としているところなんだ。まず、先ほど言ったように器質的なものは痛みを生じる要因の一つとなり得るのは理解できたよね。

 

ユウタ はい。そこは大丈夫です。

 

ベン 私たちが痛みを感じるのには、実はただ単に器質的なものだけではないことがわかってきているんだ。

 

先ほどの海での例みたいに、傷口に気付くまで痛みを感じないってことが、器質的なものだけでは痛みを説明できないってことを示している良い例だよね。

 

私たちの中で、その‘組織的損傷’というものを‘認識’することによって初めて‘痛み’という感覚を認知することができた。

 

ここで大事なことは、痛みという感覚を認知するには、その出来事、例えば怪我や外傷による組織の損傷がどれほどの‘脅威的意味合い’を持っているかということが重要なんだ。

 

ユウタ 脅威的意味合いですか・・・?

 

ベン そう。脅威的意味合い。例えば、自分が怖いって思ってるものは余計怖いし、痛いものだって思ってるものは余計痛いと感じてしまう。

 

注射だって同じこと。全くダメな人は注射の針で気分が悪くなる人もいるし、逆に平気な人は何食わぬ顔で注射を受けることができる。

 

針の挿入という刺激量に違いはないのに、みんな様々な反応を見せるよね。

 

あれも、自分の中でそれがどれほど脅威的かと感じているかということによって私たちの体が違った反応を見せている証拠だよ。

 

ユウタ そう言われてみるとそうですね。

 

僕は注射って全然平気だったんですけど、僕の友達が本気で嫌がっているのを見ながら、何がそんなに怖いんだろう、たいして痛くないのにと不思議に思っていました。

 

ベン はっはっは。ユウタは針は平気なんだね。じゃあ後でドライニードリングでもしてあげようか!

 

 

そういうとベンは治療用に使う鍼を見せてくれた。

 

注射と比較するとすごく細い鍼だったが、ユウタには鍼がどのように有効なのかがよくわからなかった。

 

ベン まぁ、鍼であったり、マッサージや関節のモビライゼーションなどの徒手療法と呼ばれる治療手技に関して、怪我をしたばかりの急性期と呼ばれる時期には非常に有効だが、ユウタのように痛みが慢性的に継続している場合には、その有効性も疑問視しなければいけないね。

 

ユウタ 確か、僕もマッサージをしてもらった時にすごく腰が軽くなったのを覚えています。

 

ただ、その効果も一時的でしばらくするとまた痛みが戻ってきていました。

 

そうするとやっぱり腰を曲げるのが痛くって。

 

・・・というより、腰を曲げるのがずっと怖かったです。

 

ベン そうだね。また後でその辺は詳しく話していくけど、とりあえず痛みのところに話を戻そうか。

 

ユウタは、痛みが器質的なものだけではないってことは理解してもらえたと思うけど、それじゃあ他に何が痛みに関わっているのかってきっと疑問に思っているね?

 

ユウタ はい。僕はさっきの脅威的意味合いということから、あまり自分の怪我に対して恐怖心を持たない方がいいのかなと思いました ・・・。

 

けど、やっぱり腰を曲げると痛いし、ヘルニアが神経に触ってる気がして。

 

ベン 恐怖心を持たないようにすることはとても難しいことだよ。

 

特にユウタの場合にはそういったイメージを最初に持つような形で教育されてしまったからね。

 

ただ、勘違いして欲しくないのは、誰もユウタにずっと痛みを持って欲しくてああいった説明をしているわけではないのだよ。

 

私たち医療者の教育というのはこれまでずっと、生体医学的モデルというものが主に使われてきたんだ。

 

ユウタ ・・・生体医学的モデルですか?

 

ベン そう。またこのおじさんは難しいこと言ってるよ、って今思っただろう?

 

ベンがニヤリと笑いながらそう言うと、ユウタはそそくさと目線を部屋の端っこにそらした。

 

次のページ>>ユウタの腰の痛みの原因は、Nociceptive pain? 

 

オーストラリアの腰痛評価と治療

”PTが鑑別診断をする国”オーストラリア


腰痛治療に対して、日本では様々な治療技術が普及しており、素晴らしいものも数多くあることは事実ですが、その技術をどの患者に使うことがより効果的な結果が得られるのかは、適切な診断のもとに成り立っています。

 

腰痛には、85%の腰痛は解剖・病理学的な原因がわからない非特異性腰痛とされるものと、痛みなどの症状が解剖・病理学的なものに起因している特異性腰痛があるとされています。

 


オーストラリアでは臨床上、これらの患者らが医師の診断を介さずに直接クリニックに訪れるため、フィジオセラピストには鑑別診断能力が求められます。

 

【日時・場所】

2017年7月1日(土)10:00〜16:00 国際医学技術専門学校 理学療法学科 2F

2017年7月8日(土)10:00〜16:00 エバーウォーク両国店

【講師】

江戸 英明先生(Life Ready Physio + Pilates Physiotherapist)

【講義内容】

・問診方法(鑑別診断の際にオーストラリアのPTが行う質問)
・評価
・視診
・触診
・AROM
・Over pressure(オーバープレッシャー)
・Combined movement(複合運動)
・Repeated movement(反復運動)
・PPIVM(脊椎の他動的関節可動域テスト)
・Pain Provocation Test(疼痛誘発テスト)
・Neural Tissue Provocation Test(神経誘発テスト)

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