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第一回:ユニバーシアード男子サッカー日本代表に帯同する理学療法士【国際医療福祉大学|宮森 隆行先生】

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ユニバーシアードとは、「学生のためのオリンピック」と呼ばれ、国際大学スポーツ連盟(略称 FISU)が主催する総合競技大会である。先月29日、ユニバーシアード男子サッカー日本代表は、フランス代表を破り、見事金メダルを獲得した。そこに帯同していた理学療法士 宮森隆行先生にインタビューさせていただいた。

 

― まず、はじめにユニバーシアード男子サッカー、優勝おめでとうございます。

 

宮森先生 金メダルです。やりました!笑 日本は1995年を皮切りに過去5回優勝をしておりますが、前回大会、前々回大会と3位であり、今回の大会は金メダルがある意味至上命令でもあったため大きなプレッシャーの中での活動でありました。

 

しかしながら、これまでの活動において、選手やスタッフが金メダルを獲得するために、日本代表という誇りをもって、自分たちができる細かな配慮を怠らなかったことが、大会を最高の結果で終えられた要因だと思っています。

 

もう優勝した時は、選手もスタッフも大泣きでしたから。笑。

 

それだけ、最高の選手たち、最高のスタッフに囲まれて仕事ができ、日本に金メダルを持ち帰ることができて幸せでした。

 

今後の理学療法士としての人生もサッカーに助けられることが多いのかな、と感じる瞬間でもありました。

 

― そのあたりの話も含め、宮森先生のサッカーとの関わり、理学療法士になろうと思ったキッカケについて教えてください。

 

宮森先生 実はもともと、私自身も大学卒業間際までプロサッカー選手を目指していました。1992年頃、ちょうど私が高校3年生の時は、翌年に発足される日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)の話題で持ち切りでした。

 

参入チームからのスカウトされる選手の人数も多く、私もプロチームから誘いを頂きました。

 

しかしながら、サッカー選手として仕事をした後のセカンドキャリアを考えており、当時プロ引退後は、保健体育の教員になり高校サッカーの指導者になることが私には合っているかも知れないという考えもあり順天堂大学スポーツ健康科学部スポーツ科学科に入学しました。

 

Jリーグで活躍する選手の多くが、順天堂大学や筑波大学など体育系大学の出身だったこともあり、健康や医学を学習しながらサッカーができる環境であるというのも理由の一つになります。

 

大学進学後は、サッカー中心の生活だけではなく、教職課程の履修を行い4年生時には4週間の教育実習にも参加し中学・高等学校保健体育教員免許を取得しました。

 

大学4年時の全日本大学サッカートーナメントで優勝したことをきっかけに、高校時代に誘いを受けたプロチームから再度声をかけて頂き、練習会やトレーニングキャンプに参加するようになりました。

 

しかし、1月中旬の最後のトレーニングキャンプ参加時にゴールキーパーと接触し後十字靭帯(以下PCL)断裂のケガを負い、契約が白紙となりました。約1カ月で卒業式を迎えるタイミングだったためサッカー以外での就職を考えはおらず、また保健体育教員という選択肢も全く頭になく、未来の自分に対して何の希望もなく大学を卒業したのを覚えています。

 

 実は順天堂大学時代、理学療法士を全く知りませんでした。

 

周りに学生トレーナーがいたので、テーピングや、障害部位に対する効果的なストレッチ方法などは教えてもらいましたが、理学療法という言葉は知りませんでした。大学卒業後は、就職先もないため千葉県の一人暮らしのアパートから神奈川の実家に戻りました。

 

例年4/1に世間では多くの企業が入社式を行うと思いますが、私は自宅のリビングの朝刊の求人情報に目を通していました。すると、当日開店のベーカリーレストランがあったため、すぐに連絡を取って面接をして頂き、翌日からパン職人として働くことになりました。

 

ずっとグラウンドでボールを追いかけていた人間がある日突然に密室にてパンを捏ねることで、心を静めて自分と向き合う時間を作ることができました。雇用先には申し訳ありませんが、当時はパンをこねながら「今後の人生」について考えていましたね。

 

3ヵ月くらい勤務した頃に、ある本屋に立ち寄って専門書コーナーをみると「○○になるためには?」といったシリーズ本がいくつかありました。

 

そこで「理学療法士になるには?」という書籍を見つけました。実はその著者が、当時、国際医療福祉大学保健医療学部理学療法学科学科長の丸山先生でした。

 

職種を調べていくと、どうやらリハビリを行う専門職だということで、自分が怪我をした経験から理学療法学に興味を持ち始め養成校のオープンキャンパスへ出向き再度大学への進学を目指し始めました。

 

そこからは、夕方から夜中までパンを捏ね、昼間は自宅で勉強する生活が始まりました。ほとんど寝ていなかったと思います。

 

生活が不規則であったため数カ月後に養成大学に入学した際の健康診断では体重が10kg以上減少していました。サッカー以外のやりたいこと、やるべきことを見つけるまでは、かなり時間がかかりましたね。

(Photo:サッカーに没頭した学生時代)

 

教育者・指導者を味方につける

― どんな学生でしたか?

宮森先生 体育系大学からPT養成校へ進学したため、普通はスポーツ領域の理学療法士を目指していたと思いますよね?

 

でも実は、サッカーで怪我をしてからは燃え尽き症候群のような状況になっていてスポーツをテレビで観るのも億劫な時期がありました。

 

そのため、理学療法の専門領域に関しても運動器に特化するのではなく様々な症例に対しての包括的な理学療法を学びたいという気持ちの方が強くありました。

 

臨床実習では、総合病院や老人保健施設などでお世話になりましたが、4年生の頃に行った総合川崎臨港病院でお世話になった村井貞夫先生(技師長)との出会いにより私の理学療法士としての人生感が大きく変わりました。

 

村井先生はスポーツに特化した理学療法士だったこともあり、私が体育系大学出身ということで実習中は病院内外で面倒を良くみて下さいました。

 

卒業してからもお世話になっていて、様々な助言を頂きました。日本体育協会公認アスレティックトレーナー(以下AT)の資格を取ったほうが良いとか、日本だけではなく海外にも視野を広げたほうが良いなどのアドバイスを頂きました。

 

ロンドンオリンピックやリオパラリンピックの競泳日本代表の理学療法士である小泉圭介先生も同じ実習先に勤務していたので、今でも色々と助けを頂いております。

 

― 現在の実習では教員の立場から見ていかがでしょうか?

 

宮森先生 今の学生たちは興味があることに関して計り知れないほどの成長度を感じます。しかしその反面、厳しさに慣れていないと思います。

 

言い方を変えると言葉に弱いかも知れません。

 

教育や指導方法に関しても教員がちょっと厳しいことを言うと直ぐに萎縮してしまうことも多々あります。勿論、個人差はありますが言葉の掛け方一つ一つを選びながら指導をする必要があります。

 

本学の実習は大田原キャンパス(栃木)、小田原キャンパス(神奈川)では同じ指導要領を共有した実習形態ですが、福岡キャンパスと成田キャンパスではクリニカルクラークシップを導入しています。

 

患者担当制やレポート編重の実習ではなく、実習期間中はより多くの患者さんに対する理学療法を実践できるように配慮した形態となっています。

 

特に、2年時の検査実習と3年時の評価実習では、2対1モデル(学生2:実習指導者1)で実施できるように実習施設と調整を行っています。

 

実習期間中の学習効果について1対1だと解決できない課題も、2対1だと学生が理解できない課題において助け合うことができる可能性があります。それだけ教育や実習にも気を使わなければならないのが現状であります。

 

と言いながらも、実は、私自身も4年生の臨床実習施設で一度不可になっています。

 

― なぜ不可であったのでしょうか?

 

宮森先生 4年生の時の二期目の実習が脳神経外科病院だったのですが、実習開始の1週目に父が入院したことで数日お休みさせていただきました。

 

休み明けに実習先に行くと実習指導者は勿論のこと、周りのスタッフからも距離を置かれるようになりました。

 

臨床実習は大学や実習施設が連携して様々な準備をして学生を受け入れている現状は理解していたものの、その現状に対して私の方からも積極的にコミュニケーションをとることもできず、症例の質問をすることもできない状態になりました。

 

デイリーノートも提出していましたが、「読まない」といって開くことなく返される始末。結局実習は最後までやりましたが実習開始当初の欠席日数も影響し評価は不可となりました。その後、大学の先生方と相談して大学関連施設に再実習へ行きようやく履修を終えることができました。

 

教育の現場は根本的な部分として人と人との関わりにより成立します。そこには謙虚さや感謝の気持ちを持つことによりお互いの距離を縮めることができます。

 

やはり人間ですから、実習指導者と学生との相性が合わないなど複雑な問題もあると思います。ただ、私の経験も踏まえて学生には実習で成果をあげる一番簡単な方法(秘訣)を伝えています。あまり公にすると不味いかも知れませんが…。笑

 

それは、「実習指導者を味方につける」ことです。

 

教育者も指導者も自分に興味を持っている学生がいれば、この子をさらに成長させてあげたいと必ず思います。そこでお互いの人間関係を構築することができれば臨床実習では学習成果を飛躍的に向上させることができると思います。

 

ちなみに、サッカーの現場でも同じです。監督・コーチを味方につけると劇的に選手は成長します。

 

聞く力と受け入れる力の習慣が身につき、自分に求められていることは何かを常に考えトレーニングや試合にそれらを落とし込んでいくため、技術や戦術理解度が成熟しチーム力が向上していきます。

 

そして、そこには謙虚さや感謝の気持ちが必ず存在するため、これらの相乗効果で指導者と学生の信頼関係を気付くことができると思います。

 

【目次】

第一回:PCL損傷を負いJリーグチームとの契約が白紙に

第二回:オーストラリアとニュージーランドの大学院に留学

第三回:安易に勧められない海外留学

第四回:ユニバーシアードサッカー 3大会ぶりの金メダルの裏で

 

宮森 隆行先生オススメ書籍

 

Orthopedic Manual Therapy
Posted with Amakuri at 2017.9.5
Chad Cook
Prentice Hall
Mobilisation with Movement: The Art and the Science, 1e
Posted with Amakuri at 2017.9.5
Bill Vicenzino PhD MSc Grad Dip Sports Phty BPhty, Wayne Hing PhD MSc(Hons) ADP(OMT) DipMT Dip Phys FNZCP, Darren A Rivett BAppSc((Phty) GradDipManipTher MAppSc(ManipPhty) PhD MAICD APAM MMCTA(Hon), Toby Hall PhD MSc Post Grad Dip Manip Ther
Churchill Livingstone
Brukner & Khan's Clinical Sports Medicine
Posted with Amakuri at 2017.9.5
Peter Brukner, Karim Khan
McGraw-Hill Education / Australia

 

宮森 隆行先生のプロフィール

 

・学位・学歴

順天堂大学スポーツ健康科学部スポーツ科学科(1997) 大学卒業

国際医療福祉大学保健医療学部理学療法学科(2002) 大学卒業

国際医療福祉大学大学院医療福祉学研究科(2009) 大学院修士(保健医療学)

The University of Otago(2014) 大学院修士(Physiotherapy in OMT )

順天堂大学大学院医学研究科博士後期課程在学中

 

・職歴

順天堂大学医学部附属静岡病院リハビリテーション室(2002)

順天堂大学スポーツ健康科学部 助手(2006)

かんリウマチ整形外科クリニック 理学療法士(2012)

国際医療福祉大学小田原保健医療学部理学療法学科 講師(2014)

国際医療福祉大学成田保健医療学部理学療法学科  講師(2016)

 

・学会

日本理学療法士学会

理学療法科学学会

日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会

日本整形外科スポーツ医学会

日本フットボール学会  など

 

・資格

中学・高等学校保健体育科教諭一種免許(1997)

理学療法士(2002)

JFA公認C級コーチ(2006)

日本体育協会公認アスレティックトレーナー(2008)

IFOMPT認定整形徒手療法士(オタゴ大学2014)

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