慢性の痛みに対するリハビリの実践 #1|江原弘之先生【痛み治療から考えるリハビリの可能性】

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江原弘之先生 私は理学療法士で、運動器リハビリテーションをやっていたんですけれども、今は中西先生の西鶴間メディカルクリニックで働いています。その前にNTT東日本関東病院というところで、慢性疼痛、ペインクリニック科のリハビリテーションというものに言葉悪いですけど、"ハマってしまった”理学療法士です。

 

月1回くらい非常に(痛みが)重い患者さんがいらっしゃってですね。神経障害性疼痛のCRPSとか全身痛っていう"全部痛い"(病気)ですね。

 

こうやって(全身が)固まってストレッチャーで運ばれてきた方とか、正直『なんでこんな方がいるんだ?』というような痛みの方を何人も担当してきて、その中で劇的に良くなる人、何にも変わらない方、長い年月をかけて自分のことを理解しながらいい方に向かっていく方、様々な経験をさせて頂いて、本当に(慢性痛のリハビリは)リハビリテーションそのものだなと。

 

痛みを治すといえば運動器理学療法、アライメントや姿勢、関節への治療何というイメージを持っていたんですが、ことごとく覆され、それが今の自分の経験になっている、そんな話をさせて頂ければと思っています。

 

痛みの方は、急性痛、そして繰り返す急性痛、慢性痛の中でも繰り返すものは長引く急性痛と答えます。

 

これは理学療法1回で改善するような慢性痛ですね。スポーツ障害とかに多いと思います。それから神経障害性疼痛、これは神経の治療をしながらリハビリテーションを行う。脳血管障害とか、末梢神経障害に見られます。

 

で、慢性疼痛症候群と呼ばれてしまうような、心理社会的要因がすごく関わった慢性疼痛です。学際的診療とリハビリテーション(が行われます)。正直よくわからない、なんでこんなに痛いんだ、治りにくいというのがよくあります。急性痛以外の部分をひっくるめて広義の慢性痛として、3か月以上続く痛みが慢性疼痛というくくりであります。

 

 その中で、慢性疼痛は左の図、生物心理社会的モデルで考えるといわれていて、我々が今まで陥っていた、医学的モデルですね。ヘルニアがあるから痛い、脊柱管狭窄症があるから痛い。そういった考えですね。

 

この患者さんは何で痛い苦しいんだという原因~治療、病気を中心として考えることから(変わっていって)、なんで患者さんが苦しいのか、生活がままならないのか、QOLが落ちているのか、そのように考えていくのが生物心理社会的モデルです。

 

これはもともと心療内科医のEngelが提唱した心療内科の対応方法なんですけれども、慢性疼痛にも見事に当てはまる考え方です。

 

腰痛におけるものとしては、急性痛や器質的なものが確実にあるものをレッドフラッグと言いまして、圧迫骨折やがんの転移など治療しかなくて、リハビリをしたら治るとかそういった類のものではなく確実に原因があり治療を必要とする腰痛をレッドフラッグ。

 

作業要因、例えば中腰の姿勢でやっている仕事で腰が痛い、だったら座ってしまいましょうとかですね、作業効率を変えることによって腰痛が減る、そういうのを作業要因による腰痛でブルーフラッグって言います。特に下の二つが大事ですよね、まずイエローフラッグ。

 

イエローフラッグはだんだん理学療法学会とかでも、演題に名前が出てきたりとかですけど、これが心理社会的要因がかかわる腰痛ですね。6か月以上長引いてしまう要因となっています。

 

ただイエローフラッグという言葉が先行して、じゃあ(イエローフラッグが)何なのかとか、リハビリ何をやったらいいのか、どんどん希薄になっているような感じがして、今回は具体的に、もちろん患者さんによっては全然違うんですけども、一つ参考になることをお伝えしていきたいと思っています。

 

最後ブラックフラッグというのは、今『ブラック企業』っていいますけど会社組織の体制(による要因が強い腰痛)です。例えば8時間働いて帰れるものを16時間働いていたらそれは苦痛になるじゃないですか。

 

ブラック企業のブラックそのもの、そういったものも腰痛が起こってしまうことがいろいろ示していたりします。イエローフラッグという言葉に踊らされずに、なぜ苦しいのかに踏み込んだ問診や対応をしていくべきだということです。

 

 で、慢性疼痛へのリハビリ、なぜ運動が行われるのかとありますけど、疾患ごとにガイドラインで推奨されていたり、治療ガイドラインで本来治療しなきゃいけないことができない症例、例えば神経ブロックが効果あるものはいくつか提示されましたけど、ワーファリンを服用されている方は、出血傾向があって注射がさせないとかですね。

 

あとは痛み止めを飲ませたいけども、腎機能障害があるとあまり多くは処方できない。そういったガイドライン通りにいかない、そういう場合にリハビリをやってみようか、そういう選択もありえます。

 

あとは長引く急性痛、繰り返す痛みがあるものには、身体機能要因をしっかり評価すると驚くように改善する例もあります。あとは顔面痛、会陰部痛とか特殊な痛みの患者さんがいらっしゃるんですが、そういった方を細かく分析していくと、顔面痛の方は肩こりと頚部痛、会陰部痛の方は腰痛があるなど、併存する運動器疾患を治療していくと、顔面や会陰部の痛みもよくなったりします。

 

あとは、ADL、QOL低下への対応や、運動することによる心理的ストレスの緩和。話をしていく中で、『実は旦那さんと非常にうまくいってなくて…』みたいな話が聞けたりします。

 

それから右の図は愛知医科大学のデータです。論文化はされていないと思うんですが、黒い折れ線グラフはいわゆる繰り返す慢性疼痛ということで、左側のVASも、右側の疼痛生活障害尺度、PDASと呼ばれる測るものですけど、何とか改善してってるんですね。

 

で、安静時痛を主訴とするよくわからない痛みがピンクのラインなんですけど、VASが有意差をもって改善していないんですが、右側の生活を図るPDASは改善しているというデータが得られていて、これは慢性疼痛症候群という原因が不明なものに関しては、例えば海外、フロリダ大学が慢性疼痛に対する研究、リハビリの研究が多いんですけれども同じような成果が得られているので、原因がよくわからない痛みに対してとにかくリハビリで生活を改善することが大事だとデータが出ています。

 

【目次】

第一回:四色のフラッグ

第二回:慢性痛の4つの評価バッテリー

第三回:慢性痛の何を評価すればいいのか 

最終回:慢性痛患者のリハビリを3症例紹介

 

江原弘之先生 プロフィール

NPO法人 ペインヘルスケアネットワーク 代表理事

理学療法士(運動器認定理学療法士)

日本ペインクリニック学会会員・日本運動器疼痛学会会員。

 

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